※追記・書き直しをしたので再度UPします。
近年の陸自装備コスプレは“リアルさの追求”がよりいっそう進み、隊員さんが必ずといっていいほど携行している「防護マスクケース」のレプリカも、もはや「必携」といっても過言ではないほどの存在になってきています。
(こちら で紹介しています)
ただ、これで満足というワケではないというのが実際の所。
現行防護マスクケースのレプリカは、PXサイトーから「00式防護マスクケース」として製品化されています。
が、このレプリカは、迷彩柄になった極初期版の「フタはホック留め・文字印刷有り」のもの。
もちろんそれだけでも陸自装備勢としては有難いものですが、実物はこの後に何度も小変更されているのです。
①極初期版はホックがあり文字が印刷され、色味も戦闘服とはちょっと違うごわごわな帆布っぽい素材。
②それが途中で、戦闘服のような風合い・色味の素材に変更(帆布ではなくなったかもしれない)。フタの形状も3種類くらいある?最後はフタの角が丸くなってる。
③フタがホック留め→ベルクロ留めに変更+文字がなくなったものに更新。
④上記のものから、ストラップが迷彩化。
このケースはマスクともども興研というメーカーが出しているのですが、自衛隊側の出す大まかな仕様には当然倣うとしても、細かい部分は自社でいろいろ工夫してるんじゃないかなと。
そして、いま各所で見かける現行の陸自装備では、もはやホック留めのマスクケースはほとんど見かけません。
皆、と言っても過言ではないほど、隊員さんはベルクロ留めのケースを携行しているのです。
というわけで、最新装備のコスプレをしようにも、この防護マスクケースが弱点だったのでした。
自分も
「まあ、まだ古いマスクケースを使っている隊員さんもいるし」
と自分を納得させてはいたのですが、問題はそれだけではありません。
PXサイトーのは、色味が濃くくっきりしすぎているのです。
さらに、ちょっと生地が強(固)すぎる。
うーん、なんかしっくりこない!
…そんなことを思ったのが、2014年でした。
「そのうち“改”が出るだろう」
と踏んではみたものの、一向にその気配はありません。
んじゃあ作るか…とも思ったものの、陸自迷彩の素材はそう簡単に少量入手することはできず、入手できたとしても布ものの縫製は経験がなく、かなりハードルが高い。
しかしワシの性格…というか性癖的に、一度気にしてしまうと居ても立ってもいられません。
それに欲しいものは欲しい!
・・・と言うわけで、茨の道を進むことになったのでした。
*外部発注未遂
まずは手っ取り早く「金で解決」とばかりに、とある業者サンに“改”のケース製作を依頼してみたりしました。
それが2015年のことです。
が、打ち合わせを重ねていよいよ発注か…という段で、
「やっぱ無理。すんません」
となって、そのうちメールしても返信もくれなくなってしまったのでした。
まあ事情はいろいろあって、その業者さんが多忙でこちらまで手が回せなくなったり・・・というか“多忙を理由に断られただけ”というのが正解かもしれません。
まあこちらはどこの馬の骨とも分からない一市民ですし。
というわけで仕方なく・・・・・・諦めるワケないよね!!ヘ(゚∀゚*)ノ
むしろそれで心のどこかに火がついてしまい、素材を全部自分で集めて自作することにしたのです。
そもそもワシは自作にこだわっていたはず。
外部発注だなんて、本道にもとります。
・・・というわけで、試作を重ねることになりました。
*生地
生地は当初
「やっぱ帆布(はんぷ)かね」
と思っていたのですが、そもそも陸自迷彩柄の帆布なんて市場に存在しません。
しかし検討していくうち、むしろ現行のは帆布より普通の布地のほうがそれっぽく見えるのではないか、と思い至りました。
そこでいくつも迷彩服の生地を入手し、決定したのは、テトロン+コットン(TC)の混紡生地。
本当はビニロンコットン(VC)生地がいいのですが、ちょっとお高いうえにビニロンは縮む特性があるため防水加工に難があり、断念。
(左がTC生地、右がビニロン帆布生地)
それを20m程度購入し、まるごと裏面防水コート加工にぶちこんで、ようやく生地が完成しました。
(左がワシ製のほうの裏面コート。右はPXサイトー製)
内貼りのコーティングの風合いはサイトー製のほうが実物に近いです。
ちなみに試作品を数か月にわたり通勤で(幼児の保育園用の荷物入れとして)使ってみましたが、雨に降られたくらいでは水の侵入はありませんでした。
ただし袋の中に水を張ると縫い目から水が出てくるので、完全防水というわけではないです。
というわけで、完璧とは言えないものの、既製品よりも陸自装備に馴染むものとなりました。
*寸法・構造など
当初は、サイズや構造はPXサイトー製のレプリカを元にして試作しました。
が、ベルクロ方式になったために若干の違いもあり、あとは雑誌やネットの画像を見たり、駐屯地祭での展示品を撮ってもらったり、普段から現物を触っている中の人から詳細な画像を送ってもらったりして構造・寸法を決定。
既製品との大きな違いは、マチ。
雑誌に、たまたまマスクケースを携行し89式小銃を持った隊員の画像が載っていて、そこから解析するとかなりマチが広いことが判明。
(左がワシ製。フタの角は丸まっています)
ちなみに内装は最初から作る気はなく、省略。
当然というかなんというか、これはコスプレ道具にすぎず、また陸自のガスマスク本体のレプリカなどは存在しないためです。
また、内装とはちょっと違いますが、面ファスナー(マジックテープ・ベルクロ)。
フタの部分は5cm程度の幅のものが使われていますが、本体側は8cmくらいの幅広のもの。
しかしそんな半端な幅の面ファスがなかか売られていないので、5cmのもので代用。
*負い紐
そして防護マスクケースのメインは本体であり、紐(ストラップ)はあくまでオマケ。
だから紐は最大限、妥協をしています。
最新の型はストラップも迷彩柄になっていますが、迷彩柄のストラップ素材は入手できないので、ODのもので代用することを前提に素材集めに着手。
当初は
「なんたってワシは紐が専門だし、こんなの簡単だよね~」
などとタカをくくっていたのですが、それは誤りで、かなり振り回されることになったのでした。
まずは肩紐。
PXサイトー製のものは38mm幅・2mm厚のODのアクリル。
実物はおそらくビニロンの紐でしょう。
ちなみにサイズは、実物も38mm幅かと思っていたのですが、画像解析をしたところ、どうも32mmというハンパなサイズ。
で、さらに細かいところで言うと、実物は肩紐を吊るす本体側の台座の部分が32mm幅なのに、Dカン金具と角カン金具が38mmのものが使われてるっぽい。
というわけで、肩紐は30mm幅で決定。
(紐とカン金具の幅が違うのが実物風!たぶん)
コキ金具は、実物は普通の薄っぺらい四角いものですが、どうにも目指すサイズのものがありません。
なのでPXサイトー製のものと似たコキで妥協。
(左がワシ製。実物は普通の四角い平べったいコキ金具。できればもう少し細長いものが欲しかった)
ちなみにコキ金具を覆うカバーは、面倒なので省略。
どのみちカバーはPXサイトー製も実物もすぐズレちゃうし、長さ調整の時は邪魔だし。
そんで腰紐。
肩紐が30mmと確定したので、そこから比較すると腰紐は20mmと判断しました。
(しかし後でいろいろ調べてみると、どうも腰紐は20mmと25mmがあるような・・・)
で、アクリルはすぐヘロヘロになってしまうため、既製品のあったビニロンに。
コキ金具は、平べったく細長い実物のようなものがないため、PXサイトー製と同じもので妥協。
(左がワシ製のビニロン紐。右がPXサイトー製のアクリル紐)
ちなみに実物の防護マスクケースに使われている金具は全て塗装っぽいグレーなのですが、あまり手間と費用をかけられないので、一般的な黒メッキで済ませました。
*続く試作
最初の試作の後、とりあえず大急ぎで7~8個製作し、情報提供してくださった方へお譲りしたり、Vショーで格安で出したりしましたが、改めて検証してみると、自分の縫製はわざわざ手間がかかり、かつ仕上がりがイマイチなものになってしまうやり方なのではないか…と気づくことになります(なんせ、ミシンはまだ初心者なのです)。
そんなわけで縫製を変えながら試作を続けてみたりしました。
ちなみにベルクロのメス側は、10cm幅のベルクロを1巻き購入し、それをカットしてもらうことで、8cm幅のベルクロが実現しました。
本来グレーなのですが幅広のものがなく、仕方なくODに変更。
それに合わせてオス側もODに替えました。
そんなわけで新たに3~4個試作し、2個ばかり某オクに流して、以降の材料費となりました(ありがとうございます)。
それでもまだ納得のいくものにならず、スランプを感じてしばらく試作は中断。
自宅には大量の材料が場所を取るばかり・・・
*ついに実物採寸
ここで大きく事態が動きました。
縁あって、00式の実物ケースを触りまくり、採寸しまくる機会に恵まれたのです。
ここで、ただサイズを知るというだけではない、縫製や造りについてもいろいろ知ることができました。
ちなみに自分もなかなかやるなと思ったのは、すでに述べたように雑誌の画像解析で割り出したマチが、実物のサイズと全く同じだったこと。
ここで新たな縫製を試すことにしたわけですが、貴重な裏面防水コート済み迷彩生地を使用して失敗するのももったいないので、以前に入手して放置中だったグレーの帆布を使って試作してみました。
海自版の00式改がこんな感じですね。
本当はこの生地は、絶版となった4形ケースのレプリカを作ろうとして素材集めをしていたもの。
しかし幸か不幸か本家の4形レプが再販されたため、グレー帆布はお蔵入りに(個人でのレプリカ製作の怖いのは、こういうところ。自分で「やるぞ!」と決めて素材集めをしたら、本物の業者さんが同じレプを出したりしたら完全にアウトのため)。
その素材を引っ張りだしたわけです。
そして次には、ただの帆布を使って、サイズだけ実物と同じにして、冬期装備用のマスクケースを製作してみました。
もっともただの帆布なので防水機能はないし、中に入れたものがかすかに透けて見えます(笑)
とはいえ、単なるコスプレ用途なので強度も必要なく、サイズの確認としては有効でした。
ただまだいろいろと試行錯誤しながらのため、ここでも何度か試作を重ねることになりました。
通算で言うともうすでに10個以上も試作を続けているのですが、そもそもたいした縫製技術もなく、そして他の負い紐製作や本業多忙などで一気に試作ができなかったため、なかなか安定したものになりませんでした。
でもそれでよかったのです。
なぜなら、時間がかかったおかげで、実物採寸をすることができたから。
もし数年前になまじ時間があったら、実物採寸のできないままのレプリカで素材を全部使い切ってしまっていたでしょうから・・・
(2020.8.13追記)
*ここで今さら大御所が…
これまでは防護マスクケースはPXサイトー製のみだったのですが、なんと大御所エスグラが、00式のマスクケースを出してきたのです。
一部界隈が騒がしいので見に行ってみると・・・
紐が迷彩!
なのに初期型のホック留めバージョン!
しかも色味もちょっと・・・!
なんでエスグラっていつもこうかな・・・。
しかもこれPXサイトー版のコピーだろ・・・。
わしが量産化をためらっている理由の一つが現実となりました。
もしわしがベルクロ留め版を作っても、次にエスグラにぶつけられる可能性もあるのです。
しかも安く・・・
はあ、どうすっかなあ。
*まとめ
・・・とまあ、こんな具合で着想から試作品の完成まで3年もの時間がかかってしまいましたが、自分も勉強になりました。
もしあの時、あの業者さんが製作を受諾していたとしたら、自分の技術は進歩せず、さらに色味は微妙、形状も現行版とは似ても似つかない微妙な防護マスクケースが量産されていたことでしょう。
いやホント、断ってくれてありがとう某業者さん!
あとはさらにパーツを見直して、いよいよ量産に移るかどうか・・・
【装備自作量産記事】
※思えばレプ作りすぎでは・・・?