療法士の実習では、比較的担当させていただくことの多い脳血管障害の患者さんの評価。今日はその検査・測定についてのアドバイスです
1.Brunnstrom stageとは
ブルンストローム先生のお馴染みの検査法だね。でも、このstage、いったい何を調べているのかな?上下肢の麻痺の回復?随意性の回復?分離性の回復?
これは障害された中枢神経が、より高次の脳機能に再統合されていく回復過程を調べています...ふくざつ 全ての神経機能が停止した弛緩期(stage1)から、原始的中枢の脊髄レベル(stage2,3)→延髄・橋レベル(stage3)→中脳レベル(stage4)→基底核レベル(stage4)→皮質レベル(stage5,6)と、統合が上位中枢へ進むってこと!ただし運動stageと中枢レベルとが厳密に対応してるわけじゃないし(stageは私が当てはめたもの)、この検査法はstage3,4の患者さんが多くなるという傾向も...
この段階付は当時の神経生理学をベースにして、片麻痺の回復が人類の進化の過程や生後の発達段階と同じ経過をたどるという理論で生まれたものなんです。
どちらかというと反射や筋緊張といった錐体外路系の影響をみているものなので、麻痺の程度(錘体路系)の検査ではないのです。もちろん動作レベルとも全く関係ない!ん~「脳機能(錐体外路系)の再統合による随意的分離運動の検査」ってとこかな。
2.筋力検査(MMT)はできる?
上の1.にも関係するけど、じゃあ麻痺はどう検査する?片麻痺患者さんの多くが「痙性麻痺」だけど、これは痙縮と麻痺の2つの神経障害が合わさったものだから(→詳しくはここ)別々に調べるんだよ!痙縮は...そう、筋緊張検査だね。じゃあ麻痺は?...そう、筋力検査(MMT)なんだよ!...片麻痺なのにMMTしていいのかって?そうだね、本来、麻痺はMMTで調べるんだけど、中枢神経麻痺の場合は痙縮や共同運動が邪魔するから、少なくともstage4以上の分離性がないと検査の精度や信頼性がないってことだね!
確かに精度は落ちるけど、それでもstage4以上ならぜひ筋力検査を試そう!定期的に特定の部位の筋力検査をしていけば、個別の筋収縮が段々できるようになってゆく過程がわかるでしょ~(記録には共同運動のため測定不可と書いとく)。
ちなみにMMTを他の検査の前にやると疲労するので、検査の順番も大事だ!
3.筋緊張・腱反射
筋緊張検査って、ちゃんと教えられてない学生さん多いんだ... どうしてかな?
筋緊張は、①被動性、②伸展性、③触診が基本で、④腱反射や動作分析がそれを補完(ほかん)します。①は速い伸張刺激の反応、②は筋肉の伸びやすさ、③は筋肉を触った時の軟らかさだね!
例えば痙縮は①↓②↑③軟④↑、弛緩は①↑②↑③軟④↓、固縮は①↓②→③硬④→となります(↑は増加、↓は低下、→は不変)。このように①~④を全部調べて初めて状態がわかるのだ!1つも抜かすなよ~
ちなみにMAS(modified Ashworth scale)は段階づけでよく使われるけど、これは色んな筋緊張の亢進(→こちらを参照)が混ざった状態を見ていることに注意ね!あと、上肢の腱反射は背臥位で、下肢の腱反射は座位でみるのが基本ね
4.感覚検査
表在と深部感覚だね。静かな環境で丁寧にやりましょう。結構テクニックも必要!位置覚は静的バランスと、運動覚は動的バランスとの関連性を考えても興味深いよ!また感覚障害は歩行分析からも情報あり!立脚期に膝が前後に動揺したり、足元をずっと見てたり、遊脚期に下肢が大きく振り上げられたり、接地時に足底を床にたたきつけるように歩くのは感覚障害の患者さんに多い特徴だよ
5.高次脳機能検査
私はPTなので、(恥ずかしながら)ちゃんとした検査法はOTやSTの学生さんのほうが詳しいかも ただ、多くの患者さんでは紙面の検査上は失行や失認の症状を認めないのに、普段のADL上では高次脳機能障害の影響がみられるってことがほとんどです(→失行症、失認症)。いずれにしても、高次脳機能障害は日差変動(日による症状の差)が大きいので、検査をするタイミングも重要!
以上です。次回は「整形外科系の患者さんの検査」について書きます!
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