埼玉県川越市にあるコンディショニングジムBlueFit(ブルーフィット)の代表で、
理学療法士の粟生田です。
筋力トレーニングにより、筋肥大すること自体は日常生活を長く健康に過ごす為にも有効です。
また、スポーツのパフォーマンスアップにもつながります。
しかし、脳梗塞・脳出血による片麻痺を呈している方は気をつけないと、
筋力をつけようとリハビリを頑張ったことにより、
逆に良くないクセを強めてしまったりすることが多いです。
例えばスクワットなどのトレーニングで、
太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛え、膝を伸ばすという機能が向上したとしても、
最大筋力を鍛えようとすると、強化したい神経路だけでなく他の神経路も興奮してしまうため、
選択的な神経路の形成・強化にはマイナスの効果が生じてしまうことがあります。
いわゆる伸展パターンを強め、足・膝・股関節が協調し合って
それぞれが適切なタイミング、スピードで動けていない状態になってしまいます。
また、足の裏の荷重や身体の重心、バランスも混乱させてしまい、
転倒のリスクを高めてしまいます。
これらは屋外での不整地歩行や段差などでも生じます。
損傷をうけた脳・神経には可塑性といわれる性質があり、
適切にリハビリを行うことで、脳から手足への神経の伝達が新しく形成されていきます。
ポイントは、働かせたい筋肉を選択的に活性化する。
(周りの筋肉と一緒になって動くのではなく)
そして動作の中で、関節の動き・スピード・タイミングを協調的にコントロールする。
さらに足底の感覚をしっかりと感じ取り、全身の重心・バランスもコントロールします。
例えば、立ち上がり動作の時に、
骨盤をしっかり前傾させてから体幹を前方傾斜させ、
足底に荷重していきます。
そして足底に重心がしっかりのったタイミングでお尻を持ち上げ、
太ももの筋肉を働かせ、重心を上方に移動していきます。
次に、股関節、膝関節、足関節が協調的に伸展していき、
足底にしっかり重心がのり、安定した立ち上がり動作を行うことができます。
過剰な筋肥大をねらって重りを持ってスクワットをしたり、
適切でないタイミング、スピードでの動作の場合には、
働かせたくない筋肉も巻き込んだ、
下肢の伸展パターンの動作になってしまいます。
こうなってしまうと太ももの筋肉が選択的に適切に働かず、
足全体が突っ張りやすい動作になってしまったり、
足底の感覚や重心位置がうまく感じ取れず、
バランスの悪い動きになってしまいます。
こういった不適切な足の使い方がクセになると
歩行など他の動作の際にも影響が出てきてしまいます。
特に歩行時の膝の過伸展でのつっぱりながらの動作が生じやすくなります。
そのため、神経疾患の方は、
筋肥大だけを目的とした筋力トレーニングは行わず、
適切な姿勢、動作をすること、
過剰な負荷にならない回数、重さ、膝の曲げる角度などに
かなりの注意をしながら行うようにして下さい。
そして、選択的な神経路の形成・強化を行っているんだという意識をもって、
上記の注意点に気をつけながら、
適切な回数、頻度で反復トレーニングを行うようにして下さい。
大事なのは、
「筋肉の量だけでなく、質を高める!」です。
次回は上記のことをふまえ、
より応用的、ステップアップにつながるリハビリの方法をご紹介できればと考えています。