Against All Flags

イギリス海軍大尉のブライアンは海賊国家リバタリア攻撃のために脱走兵を偽装して侵入した。
襲撃されたムガール帝国の船に乗っていたムガールの王女を助け、また砲台にある大砲を細工して使えないようにした。
一方海賊船長の一人、女船長のスピットファイアを好きになる。


製作:1952年、監督:ジョージ・シャーマン ■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ブライアン・ホーク(エロール・フリン) イギリス海軍大尉
 プルーデンス・スティーヴンス(モーリン・オハラ) シャーク号船長、通称スピットファイア
 ロック・ブラジリアーノ(アンソニー・クイン) スコーピオン号船長
 キッド(?) 船長
 ロバーツ(?) 船長
 パトマ(アリス・ケリー) ムガール帝国王女
 モルヴィナ・マクレガー(ミルドレッド・ナトウィック) パトマの教師

ロックはスピットファイアが好きだがスピットファイアは嫌っている。

本作には「わざとらしい表現」が多々ある。しかしこれは意図的に(わざと)やっているものなので、これを理解して、笑い飛ばすのが本作の正しい鑑賞法である。パトマは火の中からブライアンに助け出される。この時パトマの気持ちを和らげるためにブライアンはキスをする。これに感激してブライアンに会うたびに「もう一度(again)」と言う。これが一番わざとらしい。最後にスピットファイアが、パトマのマネしてブライアンに「もう一度(again)」と言ってキスをする。これが本作のオチになっている。

リバタリアはヨーロッパ人によりマダガスカルに建設された実在した海賊国家。本作は名前を借りているだけ。
 


■ あらすじ

◆ リバタリア潜入

イギリス海軍大尉のブライアンは部下二人とともにマガがスカルの海賊国家リバタリアに潜入することになった。リバタリア攻撃のために、あらかじめ砲台を破壊するためである。

ブライアンは鞭で打たれて脱走兵を偽装して、部下二人とリバタリアに向かった。

上陸して捕らえられた。「海賊になりたい」と言うがスパイと疑われ、船長会議にかけられることになる。

「スパイとして処刑する」という結論になりそうだったがスピットファイアが弁護した。スワインという収奪品を盗んだ男と槍で勝負することになった。

二人の戦いはほぼ互角であったが、スワインがワインの瓶を掴んで殴ろうとしたため、スピットファイアが「それはルール違反」と制止した。

ブライアンたちは、一応仲間として認められた。

スピットファイアはブライアンを自分のシャーク号に乗せてもいいようなことを言ったが、ロックのスコーピオン号に乗ることになった。

◆ 武器店

スピットファイアの家は武器店。その二階にスピットファイアが住んでいる。父親が船長をしていて武器店も経営していた。それを引き継いだもの。

ブライアンは、その店を訪れて剣と拳銃を買った。その様子をみていたスピットファイアがブライアンを二階に呼んだ。

その部屋には砲台の位置を示した地図があった。父親の功績とのこと。ブライアンはスピットファイアと話しながら、その地図をチラチラ見て記憶した。

スピットファイアとの話が弾んで調子に乗って、ブライアンがスピットファイアにキスしようとしたところ、スピットファイアは拳銃を突き付けて拒否した。「私がキスしたいときだけ」。

部屋を出る時に「ロックには気をつけて」と忠告された。

◆ ムガール帝国の船を襲撃

ブライアンは、スコーピオン号に乗って出撃した。船を発見した。ムガール帝国のメッカ巡礼の船らしいのでブライアンは制止したが、ロックは襲撃を命令した。

その船には、少女たちと一緒に王女パトマも乗っていた。彼女たちを引率しているのはイギリス人のマクレガー。

マクレガーはパトマを奥の発見されにくい部屋に行かせた。

ムガール船は占領され、少女たちや宝物がスコーピオン号に移された。マクレガーはムガール船が放火されたのを見て絶叫した。

それを聞いたブライアンはムガール船に飛び移り、猛火の中からパトマを救い出した。

◆ スピットファイアとの攻防

スコーピオン号はリバタリアに戻ってきた。

ロックは収奪品の中から宝石を選んでスピットファイアにプレゼントして「二人でどこかに行こう」と言ったがスピットファイアはあまり嬉しくなさそう。

スコーピオン号ではロックの命令でブライアンは収奪品の目録を作成する作業をしている。注、ここで部下が砲台の位置の地図というものをもってくる。しかしブライアンはスピットファイアの部屋で、砲台の位置を確認しているはず。ここは論理がおかしい。

スピットファイアはスコーピオン号にでかけた。

スピットファイアがブライアンにいろいろ話しかけてくるが、ブライアンは「忙しい」と言って無視する。スピットファイアはだんだん目が血走ってくる。

「二週間後に仕事がある。私も乗るから興味があるでしょ」と意味ありげに誘うが「ロックに次の仕事を指示されている」と断る。

スピットファイアはソファに座って「キスしてもいいわよ」とポーズを作ったが「ロックに仕事を最優先にしろと言われた」と断ると、スピットファイアは怒って出ていった。

◆ 「パトマを助け出そう」

さてムガール船の少女たちを妻にする入札が行われた。最初の少女はクロップイヤーが落札したが「結婚したら、何をするんだ?」聞いてみんなから笑われた。ともあれクロップイヤーは幸せそうな顔をして少女の腕を取って出ていった。

次はパトマ。まずブライアンが手を挙げる。パトマはニコニコ。しかしスピットファイアもブライアンを睨みつけながら、手を挙げた。二人は競り合って、結局スピットファイアが勝った。

スピットファイアは、その後パトマをマクレガーのところへ連れて行った。ブライアンもそうするつもりだったので、どちらにしても結果は同じであった。

ブライアンはマクレガーのところへ行って「パトマを助け出そう」と言う話をする。ブライアンはスパイとして潜入しているので、詳しいことは話せないが、イギリスの海軍に引き渡して連れて行ってもらうつもりである。

そこにスピットファイアが来た。まだブライアンをパトマのことで疑っているので「なんの魂胆があるの?」とつっかかる。

その後スピットファイアは「ここには私の未来はない。ここを出たい」と言う。「合法的にイギリスに行くにはどうするの?」と相談し、ブライアンが「ブラジルあたりに行けば..」と答えると「ブラジルでシャーク号をあげる」と言う。ここで二人は二回目のキス。

◆ 砲台を破壊する

さてブライアンと部下の二人は潜入の目的である砲台の破壊を行う。注、本作はここのポイントが明確ではなく「砲台の位置をイギリス軍に知らせる」ことが目的であるかのようにも描かれる。

部下の二人は把握している砲台を順番に回って、大砲の穴を詰めて発射したら大砲自体が壊れるように細工する。

ブライアンは、見張りをしているクロップイヤーのところに行って「新婚だろ。妻と一緒にいてやれ」と声をかける。クロップイヤーは喜んで家に帰った。

だがしかし、ここにもう一人が現れた。それで大砲に細工している音を聞いて「何か音がする。見てくる」と言うのでブライアンは止めようとする。そして「やっぱりスパイだったのかっ!」と格闘になり、その男をやっつける。

◆ パトマをイギリス船に

ブライアンはマクレガーのところにいく。そして「イギリス海軍が来るので、(パトマを含めて)少女たちを引き取る」という話をする。パトマは行きたくないようなそぶりを見せるが「ブライアンも一緒」と言うとニコニコ。

ここにはスピットファイアも来ていて、なぜか彼女にしては珍しくドレスを着ている。ここでスピットファイアがブライアンがパトマを買おうとした目的を知って、二人は三回目のキス。

◆ 捕らえられる

ブライアンは浜辺に戻って、イギリス船に砲台破壊作業完了の合図のロケットを打ち上げた。イギリス船からも了解のロケットが打ち上げられた。

しかしロックたちが来た。取り囲まれて捕らえられる。砲台の地図をもっていたこともばれる。スピットファイアも来てブライアンがイギリスのスパイと知って怒る。

ブライアンたち三人は、砂浜に立てられた棒に縛り付けられる。潮が満ちてくれば海に沈む。

ロックやスピットファイア馬車で去ろうとする。そこでスピットファイアはロックに「ナイフを貸して」と言って、ナイフを持って三人に近づいていく。

スピットファイアはナイフをブライアンに突き刺す。ブライアンは首を垂れる。いやしかしそれは芝居で、スピットファイアは、ロックには分からないように手を縛っているロープを切った。

馬車は港に向かった。パトマや少女たちはスコーピオン号に乗せられた。ただしマクレガーは乗せられない。その後マクレガーは自らボートを漕いでイギリス船に行く。そしてパトマが捕らえられていることを知らせる。

◆ パトマを人質にする

さてイギリス船が接近してくる。いろいろなところにある砲台の大砲から弾が発射される。しかし細工してあるので、大砲自体が爆弾で破壊される。

ここでロックはスコーピオン号を出航させる。スピットファイアも乗っている。そして出航直前にブライアンたちが忍び込む。

ロックはパトマを帆柱に縛り付ける。それを見たイギリス船は砲撃することができない。

スコーピオン号は、イギリス船のそばをゆっくりと通り過ぎていく。ロックは「もうすぐ地獄か天国かが決まる」と緊張している。

けっきょくイギリス船は砲撃できずに、スコーピオン号は通り過ぎた。ロックは「勝ったぜ」と言ってスピットファイアの肩を抱いた。「これで二人で好きなところに行ける」と言うが、スピットファイアは嬉しくなさそう。

ロックはスピットファイアを船室に連れ込んで強引にキスをする。

さて先ほどローブを切ってもらったブライアンら三人がスコーピオン号に潜入している。甲板で一人一人やっつけていく。そして剣を振り回して戦った。

ロックがスピットファイアをソファに押し倒したところで、ブライアンがドアを開けて入ってきた。ロックはスピットファイアがブライアンを助けたことを知ってスピットファイアを殴り倒した。

ブライアンとロックが戦う。そしてスピットファイアも剣を取って他の敵と戦った。ロックがついにブライアンに刺殺された。

◆ ラスト

スコーピオン号を制圧した四人は、少女たちを連れてイギリス船に移った。スピットファイアが海賊であったことの罪は許された。

スピットファイアがパトマをマネして「もう一度」と言ってブライアンとキスをした。パチパチパチ。
 


■ 補足

◆ パトマ

パトマのキャラクタが面白い。というかわざとらしい。これはもちろん意図的にそのように作っている。

スコーピオン号に襲撃されたとき、マクレガーがパトマを発見されにくい部屋に移動させる。

しかし船は火をつけられて猛火に包まれる。マクレガーは狂ったように叫ぶので、ブライアンがムガール船に飛び乗って救い出す。

パトマを発見するが、パトマが怖がっているのでキスをして落ち着かせる。

その後、パトマはブライアンに「もう一度(again)」と繰り返す。

パトマはブライアンに「マクレガーから王女とは絶対に言うなと口止めされている」と言う。

◆ ブライアンとスピットファイアのキス

二人は計五回キスをしようとする。

一回目。ブライアンは上陸して捕らえられて船長会議にかけられることになる。「髭面はイヤ」とブライアンが言うので、スピットファイアは、ブライアンを後ろ手に縛ったまま散髪屋に連れていく。髭を剃り終わったところで、スピットファイアがブライアンにキスする。

二回目→失敗。ブライアンが拳銃と剣を買った後、スピットファイアの部屋で話す。この時スピットファイアは、ドレスを来ている。スピットファイアはマダガスカルで生まれ育ったので、イギリスのことをブライアンにいろいろと聞く。ブライアンは得意になって説明していく。そして調子に乗ってキスをしようとするが、スピットファイアは拳銃を突き付けて拒否する。「私がしたいときだけするのよ。撃たれなくて幸運ね」。

三回目→しない。スコーピオン号でブライアンが収奪品の目録を作成しているときに、スピットファイアが訪ねてきて、ソファに座って「キスしてもいいわよ」と言うが、ブライアンは「ロックに仕事を最優先にしろ」と言われたと拒否する。

四回目。パトマをイギリスに渡して助けようとマクレガー、ブライアン、スピットファイアが合意した後に二人はキスする。

五回目。最後は、イギリス船に乗った時、スピットファイアはパトマのマネをして「もう一度(again)」と言ってキスをする。

 


■ 出演作

◆ アンソニー・クイン
(1941)壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On
(1952)革命児サパタ/Viva Zapata!
(1947)船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor
(1952)すべての旗に背いて/Against All Flags
(1942)海の征服者/THE BLACK SWAN
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1957)舞い散った札束/断崖の河/The River's Edge
(1941)血と砂、闘牛士の最後/Blood and Sand
(1939)大平原/Union Pacific
(1953)吹き荒ぶ風/Blowing Wild

エロール・フリン
(1950)海賊ブラッドの逆襲/FORTUNES OF CAPTAIN BLOOD
(1936)進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade
(1938)ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood
(1938)結婚スクラム/Four's a Crowd
(1939)無法者の群/Dodge City
(1939)女王エリザベス/The Private Lives of Elizabeth and Essex
(1940)カンザス騎兵隊/Santa Fe Trail
(1941)壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On
(1940)シー・ホーク/The Sea Hawk
(1946)愛をもう一度/Never say good bye
(1952)すべての旗に背いて/Against All Flags
(1947)恐怖の叫び/Cry Wolf
(1947)逃げちゃ嫌よ:二人の作曲家と二人の女性/Escape Me Never

モーリン・オハラ
(1941)わが谷は緑なりき/How Green Was My Valley
(1942)海の征服者/THE BLACK SWAN
(1963)/マクリントック/McLintock
(1952)すべての旗に背いて/Against All Flags
(1945)海賊バラクーダ/THE SPANISH MAIN
(1947)船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor
(1947)三十四丁目の奇跡(奇蹟)/Miracle on 34th Street
(1939)ノートルダムのせむし男/The Hunchback of Notre Dame
(1949)恋に踊る/Dance, Girl, Dance
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1954)マラガ/Malaga
(1939)巌窟の野獣/Jamaica Inn
(1946)センチメンタル・ジャーニー/Sentimental Journey
(1955)ゴダイヴァ夫人/Lady Godiva of Coventry
(1952)カンガルー/Kangaroo
(1949)禁じられた街/Forbidden Street/Britannia Mews
(1961)荒野のガンマン/The Deadly Companions
(1956)陰謀のリスボン/Lisbon
(1998)タクシーでカナダへ/Cab to Canada
(1949)女の秘密/A WOMAN'S SECRET
(1947)ホームストレッチ、美女の迷いと競馬/The Homestretch
(1951)激闘の大砂漠:野生の黒馬/FLAME OF ARABY
(1948)愉快な家族/Sitting Pretty