■ JAMAICA INN
メアリーは叔母ペイシェンスを訪ねてジャマイカ・インまできた。
しかしそこは盗賊の巣窟であった。盗賊のリーダーはペイシェンスの夫である。
メアリーは捜査のために一味に忍び込んでいたジェームスが首吊りにされるところを助けた。
さらに一味が狙っている船に対して炎を上げて知らせた。
しかし一味の真の黒幕のペンガランに捕らえられて、フランスに向かう船に乗せられた。


製作年:1939、監督:Alfred Hitchcock、脚本:Sidney Gilliat、Joan Harrison、Alma Reville、J. B. Priestley、原作:Daphne du Maurier


■ はじめに

登場人物(キャスト)

ハンフリー・ペンガラン卿(チャールズ・ロートン)
メアリー・イェーレン(モーリン・オハラ)
ジョス・マーリン(レスリー・バンクス)
ペイシェンス・マーリン(マリー・ネイ) メアリーの叔母
ジェームス・トレハーン(ロバート・ニュートン)
 


■ あらすじ

◆ 難破船は略奪された

イングランドの南海岸、コーンウォール。海が荒れている。船が座礁し難破した。

嵐にも拘わらず男たちが船に乗り込み、船員たちに襲いかかり殺す。荷物を運び出す。荷物は後ほど秘密のルートで売却される。

ジャマイカ・インは表向きは宿泊施設だが、彼ら盗賊の巣窟である。盗賊を仕切っているのはジョス・マーリン。

さらにジョスの後ろには黒幕がいる。当地の領主で治安判事のハンフリー・ペンガラン。これが本当の悪人である。

◆ メアリーは叔母を訪ねていく

メアリー・イェーレンは、母親が死亡し身寄りがなくなったので、叔母のペイシェンスを訪ねていく。

叔母のいる場所はジャマイカ・インである。御者に「ジャマイカ・インで止めて」と言うが、御者は恐怖を交えた顔をして、ジャマイカ・インの前をむしろスピードを増して走っていく。

メアリーが激しく抗議し、ジャマイカ・インをかなり過ぎたところで馬車は停止した。メアリーの荷物は投げ落とされた。

◆ メアリーはジャマイカ・インに到着した

メアリーはトボトボと歩いてペンガランの屋敷に到着した。ペンガランに「ジャマイカ・インに行きたい」と言うと反対される。

メアリーが強く要求すると、しばらく休憩した後、ペンガラン自身がジャマイカ・インに送ってくれた。

叔母のペイシェンスはジョスの妻であった。しかしジャマイカ・インは宿とは言いながら、荒れており、またかなり怪しい雰囲気である。

ペイシェンスと会って、割り当てられた部屋に入った。

◆ ジェームス・トレハーンは捕らえられた

この事態に慌てたのはジョスである。なぜ慌てたかと言えば、ペンガランは、ジャマイカ・インには来ないからである。

それと一味の間には争いが起こっている。それは新入りのジェームス・トレハーンが「分け前が少ない」と文句を言っているからである。

先にばらしておけば、ジェームスは実は海軍の大尉であって、今回は難破事件の捜査のために一味に潜入している。

賭け前が少ないのは、実はペンガランに上納される分が多いからである。手下たちはジョスの上にペンガランがいるとは知らない。ペンガランから船の運行情報がジョスに伝えられて、それが襲撃情報となる。

一味は沿岸の灯台の灯を消したりして、船の難破を誘ったりもしている。

◆ メアリーはジェームスを助けた

ジェームスはジョスの命令で手下たちに捕らえられた。首にローブがかけられて、ロープが上の梁に結ばれた。

ジャマイカ・インは、増築を重ねた複雑怪奇な建物である。また古くなって壁に穴が開いていたりする。

メアリーの床の穴からジェームスが殴られて縛られた様子が見えた。

首のローブが掛かっている梁がすぐ下に見える。

メアリーはナイフでロープを切った。ジェームスは下に落ちた。

メアリーは階段を駆け下りてジェームスを助けた。二人は、建物の中を隠れて逃げ回り、外に出て海岸の洞穴に隠れた。

ここでも危うい事態となるが、二人は泳いで逃げることができた。

◆ ジェームスとペンガランは捕らわれた

ジェームスとメアリーはペンガランの屋敷に行った。ペンガランを真の黒幕とは知らないジェームスは身分を明かして、ジョスの逮捕に協力を求めた。

メアリーはジェームスの正体を知って、ペイシェンス(とジョス)を助けるためにジャマイカ・インに走った。

ペンガランは次の船の荷物を奪って最後にしようと考える。

二人は「ジョスを逮捕する」ためにジャマイカ・インに向かった。ジョスにその旨を伝える。

ジョスの一味が二人を取り囲んだ。二人は縛られた。しかしジョスはペンガランの言っていることが冗談だと知っているので、自らペンガランを縛るのだが実は縛ってない。ロープはかけられているだけで縛ってはいない。

ペイシェンスは、ジョスに拳銃を持たされて「ちゃんと見張れ」と言われる。

ジョス一味は、船を襲うために、メアリーを連れて海岸に向かった。

◆ メアリーは船を助けた

ペンガランは拳銃を持って見張っているペイシェンスに対して「拳銃の撃ち方を知っているのか?」「弾が入っていない」と牽制する。注、もともとジェスが渡した拳銃なので、本当に弾が入っていなかったかも。

牽制されてペイシェンスは拳銃を下げる。実は縛られていなかったペンガランは、ロープを投げ捨てて立ち上がった。自分が真の黒幕であることを明かして、自分の屋敷に向かった。

ジェームスは「ジェスを有罪にしない」と約束してペイシェンスにロープを外してもらい立ち去った。

海は大荒れで、船が今にも座礁しそうである。一味はそれを持ち構えている。

メアリーはスキを見て逃げ出して、岩の上にのぼり、そこにあった大きな布に火をつけて振り回した。

船はメアリーの火を見て方向を変えた。座礁は免れた。

一味はメアリーを見つけて撃ち殺そうとするが、改心したジェスがメアリーを庇って撃たれた。

◆ メアリーは誘拐された

ペンガランは自分の屋敷に戻って「しばらくフランスに行く」と言って部下に必要な指示をした。本当はもう戻らないつもり。またジャマイカ・インに向かった。

一味はメアリーとケガをしているジェスをジャマイカ・インに連れてきた。そこにはペイシェンスもいる。

ペイシェンスは真の黒幕の名前を一味に言おうとする。その名前を口にしようとした時にペンガランが現れて、ペイシェンスとジェスを射殺した。

一味が去った後、ペンガランはメアリーを後ろ手に縛り、猿轡をかました。メアリーの頭にフード付きのコートを着せてメアリーを連れ出した。一見では猿轡も後ろ手も分からない。港に向かう。

◆ メアリーは助けられペンガランは死んだ

港についたペンガランは、メアリーを連れて船に乗り込んだ。船は出港しようとする。

メアリーは後ろ手に縛られたまま、こっそりとドアのカギを開ける。

ジェームスが指揮する部隊が現れて出港を阻止した。メアリーはドアを開けて逃げた。部隊が船に乗り込んできた。

これを見たペンガランはロープを伝って帆を張る横木によじ登った。大声で叫んで飛び降りた。
 


■ 補足

この時代の多くの映画はモノクロで、暗い場所などでは、人物などが不鮮明だが、本作では暗い場所でも人物が浮き上がって撮影されており、非常に見やすい。

本作はダフニ・デュ・モーリエの原作がある。これが本作を規定している。彼女の小説は多く映画化されている。私が見た範囲では。

(1944)レベッカ/Rebecca
(1944)情炎の海/Frenchman's Creek
(1952)謎の佳人レイチェル/My Cousin Rachel

ちなみに「レベッカ」と「情炎の海」の主演はジョーン・フォンテイン。そして「謎の佳人レイチェル」の主演はジョーンの姉のオリヴィア・デ・ハヴィランド。

そして場所はいずれも、イギリス南部の海岸となっている。

他には「(1963)鳥/The Birds」もダフニの原作。
 


■ 出演作

◆ チャールズ・ロートン
(1939)ノートルダムのせむし男/The Hunchback of Notre Dame
(1944)容疑者/The Suspect
(1948)凱旋門/Arch of triumph
(1943)自由への闘い/This Land Is Mine
(1945)海賊キッド/Captain Kidd
(1947)パラダイン夫人の恋/The Paradine Case
(1952)人生模様-警官と賛美歌/The Cop and the Anthem
(1960)スパルタカス/Spartacus
(1939)巌窟の野獣/JAMAICA INN

モーリン・オハラ
(1941)わが谷は緑なりき/How Green Was My Valley
(1942)海の征服者/THE BLACK SWAN
(1950)大城塞/Tripoli(1950)
(1963)マクリントック/McLintock!
(1952)すべての旗に背いて/Against All Flags
(1945)海賊バラクーダ/THE SPANISH MAIN(1945)
(1946)船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor(1946)
(1947)三十四丁目の奇跡(奇蹟)/Miracle on 34th Street
(1939)ノートルダムのせむし男/The Hunchback of Notre Dame
(1949)恋に踊る/Dance, Girl, Dance
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1954)マラガ/Malaga
(1952)剣豪ダルタニアン/Sons of the Musketeers
(1950)コマンチ族の怒り/COMANCHE TERRITORY
(1939)巌窟の野獣/Jamaica Inn
(1946)センチメンタル・ジャーニー/Sentimental Journey

◆ ロバート・ニュートン
(1952)海賊黒ひげ/Blackbeard the Pirate
(1950)宝島/Treasure Island