■ THE BLACK SWAN


製作:1942年、脚本:ベン・ヘクトシートン・I・ミラー監督:ヘンリー・キング


■ あらすじのあらすじ

海賊のヘンリー・モーガンが恩赦を受けて出獄し、さらにジャマイカ総督に就任した。

モーガンは海賊を取り締まる立場となり、かって部下のジェイミー・ワーリングとビリー・リーチに協力を求めたが、リーチは拒否した。

その後も海賊行為が続けられた。リーチの仕業。しかしこちらの情報が漏れているようで捕えることができない。

モーガンとジェイミーが情報を漏らしていると疑われる状況となった。ジェイミーは「モーガンを裏切った」と見せかけてリーチに接触した。

しかしリーチに見破られて捕らえられた。

本筋ストーリーと並行してジェイミーは前ジャマイカ総督の娘マーガレットを好きになるが、マーガレットはなかなか手ごわい。
 


■ はじめに
登場人物(キャスト)
 ヘンリー・モーガン(レアード・クリーガー) 海賊→ジャマイカ総督
 ジェイミー・ウェアリング(タイロン・パワー) ヘンリー・モーガンの部下
 トム・ブルー(トーマス・ミッチェル) ジェイミー・ワーリングの部下
 デンビー卿(ジョージ・ズッコ) 前ジャマイカ総督
 マーガレット・デンビー(モーリン・オハラ) デンビーの娘、ロジャーと結婚予定
 ビリー・リーチ(ジョージ・サンダース) ヘンリー・モーガンの元部下
 ウォーガン(アンソニー・クイン) リーチの部下
 ロジャー・イングラム卿(エドワード・アシュリー) デンビーの部下、マーガレットと結婚予定
 ドン・ミゲル(フォーチュニオ・ボナノヴァ) デンビーの部下

原題の「ブラック・スワン」はリーチの船の名前。ジェイミーの船は「リヴェンジ号」。
 


■ あらすじ

◆ イングランドとスペインが和平

17世紀、カリブ海。海賊のジェイミー・ワーリングはスペイン軍のドン・ミゲルに捕らえられた。自分のボスの海賊ヘンリー・モーガンの居場所を白状するようにと拷問を受けた。

もちろんジェイミーは白状しないが、しかしそれもだんだん限界に近づいてくる。補足。ジェイミーはモーガンがイングランドに捕らえられているとの認識。

しかしトム・ブルーが現れて形勢が逆転し、ドン・ミゲルが拷問にかけられようという事態になった。

ここでジャマイカ総督のデンビー卿が現れた。ジェイミーの宿敵のはずだが、イングランドとスペインの和平が成立したと言われる。

ジェイミーはこれを信用せずデンビーを捕らえた。

ここでデンビーの娘マーガレットが拳銃を構えて登場する。ジェイミーは拳銃を剣で叩き落す。

さらにマーガレットに一目惚れしてマーガレットにキスをするが、唇を噛まれる。

マーガレットをマラカイボに連れて行こうとする。

◆ モーガンはジャマイカ総督になった

しかしさらにヘンリー・モーガンが現れた。国王チャールズ二世の恩赦で釈放されたとのこと。そしてなんとジャマイカ総督に任命されたと話をする。にわかには信じがたい話である。

モーガンは話があると配下の海賊を集めた。ビリー・リーチもいた。

モーガンは自分に従えば恩赦と土地が与えられると話した。それをジェイミーは信じるが、リーチは信じない。

リーチは部下を率いてブラックスワン号でマラカイボに向かおうとする。ジェイミーはいったんリーチと同行しようとしたが、モーガンが引き留めてジェイミーは残った。

両国の和平が成立したので、今後は私掠船は禁止となる。

モーガンとジェイミーはポートロイヤルに向かう。

モーガンはポートロイヤルに到着し、前総督の部下ロジャーに迎えられた。

モーガンやジェイミーは総督邸に入った。今まではデンビーが使っていたところである。ジェイミーは「どの部屋を使ってもいい」と言われたので、マーガレットの部屋を見つけて使うことにした。

その部屋にあったペンダントには、ロジャーの絵が入っていた。

◆ ジェイミーはマーガレットに振られる

モーガンは議会で正式に総督に任命された。

マーガレットに会ったジェイミーはペンダントを渡した。しかしマーガレットはジェイミーを殴り、そこに来たロジャーに駆け寄った。ジェイミーはロジャーを殴って立ち去った。

翌日、乗馬を楽しんでいると、マーガレットに出会った。マーガレットが落馬したので助けた。マーガレットは少しばかりジェイミーと話すが「意外といい人ね」と言った後、ジェイミーを石で殴って、通りがかったロジャーの馬車に乗った。

◆ 依然として海賊が跋扈している

和平が成立したというものの、依然としてイングランドの船が海賊船(私掠船)に襲われている。

ジェレミーたちには秘密だが、ロジャーはイングランドの船の動向をリーチに伝えている。このことはマーガレットには秘密にしている。リーチはその情報をもとにイングランドの船を襲っている。

前総督のデンビーは、情報が漏れたのはモーガンとジェイミーの裏切りだと考える。

モーガンは調査のためにジェイミーを(リーチがいると思われた)トルトゥーガ島に向かわせる。

ロジャーはこの情報もリーチに伝える。注、当時は電信がないので、どうして伝えたかは疑問だが、カリブ海の内部なので急いで連絡すれば、さほど時間はかからないか?

ジェイミーはトルトゥーガ島に近づいた、しかしリーチはいないようである。ジェイミーはトムを上陸させて情報収集するが特に成果はない。

この間モーガンに対して総督弾劾動議が出されている。ちょうど戻ってきたジェイミーは議会で「誰かが情報を漏らした」と証言した。しかしモーガンは議会から攻撃を受ける。

◆ ジェイミーはリーチと会う

ジェイミーはリヴェンジ号でリーチを探しに出かける。その時にマーガレットを強引に連れていく。

海上でブラックスワン号を発見した。合図を送った。武装では勝てないので、味方がいるマラカイボまで誘導するつもり。

リーチに会ったジェイミーはモーガンを裏切ったと偽装する。「ではなぜ(総督府がある)ポートロイヤルに戻ったのか?」と言われたので、とっさに「妻(マーガレット)を連れてくるためだ」と言い逃れた。

マーガレットはなぜか、これに反論しない。

リーチは二人をブラックスワンに乗ることを要求する。リヴェンジ号はブラックスワンと並走する。

二人は同一の船室に入るが、本当の夫婦ではないので、マーガレットはベッド、ジェイミーはハンモックで寝る。

ジェイミーがマーガレットに「マラカイボに味方の船がいる」と漏らしたところ、それを聞かれて捕らえられてしまう。

◆ モーガンはジェイミーが裏切ったと判断

この時点にいたってモーガンはジェイミーが裏切ったと判断する。注、ジェイミーが「モーガンを裏切ったと偽装した」ことを知らないモーガンがそのように判断するのは当然。

モーガンはジェイミーとリーチを捕らえてマーガレットを助け出そうとする。マラカイボに向かう。

◆ リーチが港を攻撃

リーチはトムたちが乗っているリヴェンジ号を襲撃してトムたちを捕らえる。

リーチはリヴェンジ号からマラカイボを攻撃する。注、ブラックスワンを使わないのはのは、相手がリヴェンジ号を味方と思っているからから。

「ジェイミーの野郎、悪魔に魂を売ったな」とモーガンは反撃の指令をだす。

その間にジェイミーはなんとか逃げ出して海に飛び込んだ。リヴェンジ号に乗り込み、舵輪と舵を結ぶロープを切断して操作不能にする。

船はそのまま岸に突っ込む。ジェイミーはトムたちを解放する。

リーチの一味とジェイミーたちの戦いになる。ジェイミーは一騎打ちでなんとかリーチを倒す。モーガンの兵士も乗り込んできた。一味は制圧された。

モーガンはジェイミーが裏切ったのではないことを掴んだ。しかしマーガレットを連れ出したことをマーガレットに謝る。

マーガレットはジェイミーに連れ出されたのではなく、自分の意思であると宣言する。本当は違っているけど。

マーガレットは自分のスカートを破ってジェイミーの傷を手当てする。

◆ ラスト

モーガンは「総督は自分には向かない」と悟る。そして「自分ならカリブ海を手に入れられる」と言う。

ジェイミーとマーガレットはキスしてハッピーエンド。ジェイミーは海賊を止める/辞める。
 


■ 補足

◆ 私掠船

海賊船と同じようなものだが、戦争状態の相手の国の船を襲う船。自分の国の許可を得ているので、自国政府からは追及されない。

◆ キスとモーリン

モーリンはいくつも海賊映画に出ているが、本作でも強気の女性を演じておりグッド。しかし本作ではストーリーを主導するような役はしていない。ここが残念。

モーリン自身が海賊役になるものでは「すべての旗に背いて」。これはエロール・フリン主演。本作のアンソニー・クインもでている。これはなかなかグッド。

海賊映画だが、海賊役ではないものでは「海賊バラクーダ」や「船乗りシンバットの冒険」。前者では女性の海賊としてアン・ボニー(ビニー・バーンズ)が登場する。

本作ではマーガレットはジェイミーのキスを噛みついて拒否する。「すべての旗に背いて」では拳銃、「海賊バラクーダ」ではナイフ、「マラガ」ではタバコの火で拒否する。すごいな。

「ワインは味見しやきゃ」。ジェイミーは最初にマーガレットに会った時に、この言葉を言ってキスしようとする。結果は噛みつかれた。ラストでは、マーガレットの方が「ワインは味見しやきゃ」と言ってジェイミーにキスを要求する。これが落ちになっている。
 


■ 出演作

◆ レアード・クリーガー
「海の征服者/The Black Swan(1942)」
「美人モデル殺人事件/I Wake Up Screaming(1941)」
「戦慄の調べ/Hangover Square(1945)」
「ハロー、フリスコ、ハロー/Hello Frisco, Hello(1943)」
「拳銃貸します/THIS GUN FOR HIRE(1942)」

◆ トーマス・ミッチェル
「駅馬車/Stagecoach(1939)」
「風と共に去りぬ/Gone with the Wind(1939)」
「ノートルダムの傴僂男/The Hunchback of Notre Dame(1939)」
「暗い鏡/The Dark Mirror(1946)」
「真昼の決闘/High Noon(1952)」
「コンドル/Only Angels Have Wings(1939)」

◆ ジョージ・ズッコ
「征服への道/Captain from Casile(1948)」

タイロン・パワー
(1939)地獄への道/Jesse James
(1941)血と砂/Blood and Sand
(1947)悪魔の往く町/Nightmare alley
(1953)ミシシッピーの賭博師/The Mississippi Gambler
(1948)征服への道/Captain from Casile
(1951)狙われた駅馬車/Rawhide
(1942)海の征服者/THE BLACK SWAN
(1946)剃刀の刃/THE RAZOR'S EDGE
(1940)約束の地を目指せ/Brigham Young
(1942)激闘/ベンジャミン・ブレイクの復讐/Son of Fury:The Story of Benjamin Blake

モーリン・オハラ
(1941)わが谷は緑なりき/How Green Was My Valley
(1942)海の征服者/THE BLACK SWAN
(1950)大城塞/Tripoli(1950)
(1963)マクリントック/McLintock!
(1952)すべての旗に背いて/Against All Flags
(1945)海賊バラクーダ/THE SPANISH MAIN(1945)
(1946)船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor(1946)
(1947)三十四丁目の奇跡(奇蹟)/Miracle on 34th Street
(1939)ノートルダムのせむし男/The Hunchback of Notre Dame
(1949)恋に踊る/Dance, Girl, Dance
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1954)マラガ/Malaga
(1952)剣豪ダルタニアン/Sons of the Musketeers
(1950)コマンチ族の怒り/COMANCHE TERRITORY
(1939)巌窟の野獣/Jamaica Inn
(1946)センチメンタル・ジャーニー/Sentimental Journey

◆ ジョージ・サンダース
「レベッカ/Rebecca(1940)」
「永遠のアンバー/Forever Amber(1947)」
「サムソンとデリラ/Samson and Delilah(1950)」
「ハリーおじさんの悪夢 The Strange Affair of Uncle Harry (1945)」
「イヴのすべて/All About Eve(1950)」
「戦慄の調べ/Hangover Square(1945)」

◆ アンソニー・クイン
「壮烈第七騎兵隊/They Died with Their Boots On(1941)」
「革命児サパタ - Viva Zapata! (1952)」
「船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor(1946)」
「すべての旗に背いて/Against All Flags(1952)」

◆ フォーチュニオ・ボナノヴァ
「月蒼くして/THE MOON IS BLUE(1953)」
「めぐり逢い/An Affair to Remember(1957)」
「誰が為に鐘は鳴る/For Whom the Bell Tolls(1943)」
「旅愁/September Affair(1950)」
「深夜の告白/Double Indemnity(1944)」