■ How Green Was My Valley
ヒューは山間にある炭鉱の町に生まれた。父や5人の兄は炭鉱で働いていた。長兄イヴォールが結婚し妻としてブローウィンが家族に加わった。 一方姉のアンハードはグリュフィード牧師が好きだったが、炭鉱主の息子と結婚した。ヒューも炭鉱で働き始めた。
イヴォールが事故で死亡し、アンハードが夫と別居状態となった。ヒューはブローウィンに結婚を申し込んだ。
しかし父のギリアムが事故にあったとの知らせが届いた。


製作:1941年、原作:リチャード・レウェリン、脚本:フィリップ・ダン、監督:ジョン・フォード


■ はじめに

登場人物(キャスト)
モーガン家
 ギリアム(ドナルド・クリスプ) 父
 ベス(サラ・オールグッド) 母
 アンハード(モーリン・オハラ) 姉
 イヴォール(パトリック・ノウルズ) 長兄
 ブローウィン(アンナ・リー) イヴォールの妻
 イアント(ジョン・ローダー) 次兄
 デビー(リチャード・フレイザー) 三兄
 オーウェン(ジェームズ・モンクス) 四兄
 ギリアム Jr.(エヴァン・S・エヴァンス) 五兄
 ヒュー(ロディ・マクドウォール) 末っ子、主人公
その他
 グリュフィード牧師(ウォルター・ピジョン)
 ダイ・バンド(リス・ウィリアムズ)
 リチャーズ医師(フレデリック・ワーロック)
 ジョナス教諭(モートン・ローリー)
 エヴァンス(?)炭鉱主
 イエスティン・エヴァンス(?) 炭鉱主の息子、アンハードの夫

本作は後年になってヒューが昔のことを騙るという形式で展開する。
 


■ あらすじ

◆ ロンダ谷

19世紀末、イギリス、ウェールズ。

ロンダ谷に広がる炭鉱の町。斜面全体に炭鉱の従業員用の粗末な住居がいっぱいに並んでいる。

谷の底に会社のオフィス、小さな店がいくつかという配置になっている。その他には教会。

谷の高いところに坑道の入り口。縦坑になっており、地下で横方向に坑道が掘られている。

高い煙突がいくつかあり、真っ黒な煙が立ち上っている。

◆ モーガン家

ヒューはこの地で生まれた。最初の頃は、この谷は緑で覆われていた。

炭鉱ができた。この地の者は炭鉱で働くようになった。谷のすべては黒いススで覆われた。

父親のギリアムや兄たちも炭鉱で働いた。

食事の前には、父親の主導で神に祈りをささげた。

◆ イヴォールが結婚した

ある日ヒューはブローウィンに会った。隣の村からやってきたらしい。イヴォールと結婚するためである。

ブローウィンには会ったことはなかったが、ヒューのことを認識しており、笑顔で話しかけた。

教会でささやかな結婚式が行われた。アンハードは式を執り行ったグリュフィード牧師を見つめた。

式は簡素なものであったが、その後は炭鉱夫や家族たちが二人を祝福して大騒ぎとなった。

結婚した二人は別の住宅に移り住んだ。

ヒューはブローウィンが好きになった。彼女の方がいくつも年上ではあったが、その感情には男性として女性を愛するという気持ちが含まれていた。

◆ 炭鉱の経営が悪化

突然張り紙が出された。給与切り下げの知らせ。石炭が値下がりしたらしい。ギリアムは「(切り下げは)少しだ、問題ない」と言った。

みんな大騒ぎとなった。ギリアムは自分の息子たちだけではなく、他の従業員に対しても「働け!」と命令した。

他の人の情報では、大きな鉄工所が倒産し、そこの従業員が流れてきているらしい。

組合を作るという動きが出てきた。モーガン家でもギリアムと息子たちが対立した。息子たちは「炭鉱を止めて出て行く」と食事の席を立った。

◆ ストが行われる

イアント以外の四人が出て行った。注、ブローウィンは残った。

他の従業員たちも不穏な雰囲気である。ストライキが行われた。ストに参加しない者もいたが、参加者からは敵視された。ギリアムも参加しなかった。

ストは22週間続いて冬になった。

スト参加者の集会が夜に開かれる。ベスが「女の意地にかけて集会にでる」と言っている。

ベスは雪が降っている中で演説した。興奮して喋っているので、他の人が理解できたかはどうかは怪しいが、その要点は「夫は経営者側に立っているわけではない。絶対的にストに反対しているわけではない」。そして「夫に何かあれば、殺す」と付け加えた。

演説の後、一緒に行っていたヒューとベスは自宅に戻ってくる途中で凍っている川に落ちた。

◆ ヒューが寝たきりになる

リチャーズ医師は「信じられない回復力」と言ったものの「歩けるようになるかは分からない」と付け加えた。注、ベスとヒューは二人ともベッドに寝ている。リチャード医師のセリフが曖昧で、どちらに対してのものかは不明。

グリュフィード牧師がヒューを見舞いに来た。強めの口調でヒューを励ました。「自分を信じれば医者が言っていることは関係がない」。

アンハードはグリュフィード牧師に礼を言って「近いうちに夕食でも」と誘った。

春になった。ベスはベッドから出て、ゆっくりながら歩けるようになった。

家の前に従業員たちが集まった。ベスは玄関にでて、みんなに微笑んだ。みんなは歌を歌った。

◆ 四人が戻ってきた

この場面で、外に出て行っていた四人が戻ってきた。

ギリアムとグリュフィード牧師の尽力でストが解決され、みんなは仕事に戻った。しかし従業員の数が多く、当地を離れる者もでてくる。

戻ってきた四人も「アメリカに行こう」などと話している。

このあたりでグリュフィード牧師はアンハードに自分の気持ちを告白しようとするが、結局躊躇する。

ここでイヴォールにウィンザー城から手紙が届いた。女王の前で歌う合唱に加わってくれとの手紙。

家の前で従業員たちが集まる中で、ギリアムは聖書を読み上げる。そしてみんなで合唱。ストでのわだかまりが取れた。

◆ 歩行訓練

グリュフィード牧師は、ややムリヤリではあるが、ヒューを外に連れ出し歩行訓練をさせた。

丘の上まで背負って行って、森の中で訓練する。最初はダメだが、歩ける距離が少しずつ伸びていく。

「ベッドに寝ていた時間は、神が君に考える時間を与えたのだ」。

ヒューはリチャーズ医師からもマッサージを受けた。次第に回復していく。

◆ アンハードは結婚した

炭鉱主のエヴァンスが訪ねてきた。ギリアムに言いにくそうに話し出す。「息子のイエスティンとアンハードが話をする許可が欲しい」。

ギリアムは承諾したので、エヴァンスは出て行った。アンハードが二階からみている。悩ましい顔。

グリュフィード牧師の家にアンハードが訪ねてきた。アンハードは思い切って話す。

「彼はいや、あなたが好き」「聖職者となった今、この道をすべてを捧げる覚悟をした」。

「あなたは男なの?、聖人なの?」と粘るが、グリュフィード牧師は考えを変えない。

アンハードは出て行った。

補足。グリュフィード牧師はプロテスタントなので、ルール上は結婚に対する制限はないが、自分の使命とアンハードの幸せを考えて断っている。

その後、アンハードはイエスティンと結婚した。みんなが見送る中で新婚旅行に出発した。

アンハードは、メイド付きの豪邸に引っ越した。

◆ 学校にいく

ヒューは学校に行くことになった。モーガン家では初めてのことである。

初日、山を越えて学校に行った。

中に入るとみんなに注目された。教師は最初から「汚い格好だな。ロンダの谷か?、厩育ちか?」とひどい言葉を浴びせかけた。

教師だけではない、一部を除いて、みんながバカにした。いじめた。怒ったヒューは体の大きな同級生に殴りかかった。めちゃくちゃにやられた。

学校から戻ってきた。ケガをして血が流れている。理由を聞かれると「転んでけがをした」と言ったが、原因は誰にも分かった。

ギリアムは「明日も行くか?。男は戦うものだ。次はやり返せ」とけしかけた。

今は盲目だが、昔はボクシングをやっていたというダイ・バンドが来た。ヒューは喧嘩の練習をした。

ヒューは学校に行った。先日の生徒が殴りかかる。ヒューはうまく相手の拳をかわして、相手を殴り倒した。教師はヒューを鞭で殴りつけた。

今度はタイともう一人が出かけた。もう一人が教師を抑えてタイが殴った。教師は気絶した。

以降はヒューは一目置かれるようになった。

◆ イヴォールが死亡した

緊急事態を知らせる汽笛が鳴り響いた。事故。みんなが坑道の入り口に走った。

縦坑から上がってきた人が「イヴォールがトロッコの下敷きになった」。イヴォールが上げられてきたが、死亡していた。ブローウィンが泣き崩れた。

その後ブローウィンは出産した。

◆ ヒューは炭鉱で働き始めた

ヒューは学校を首席で卒業した。ギリアムは「さらに進学するか?」と聞いた。もちろん進学することを期待している。ヒューは考えている。

一方で、ブローウィンは「(イヴォールが死んでしまったので)毎日、(作業用の)靴と服を用意してもしようがない」という話をしている。

しばらく考えたヒューは「炭鉱で働く」と宣言した。

ギリアムはさらに「もっとましな仕事がある。俺たちとは時代が違う」と説得するが、ヒューの決意は変わらなかった。

◆ ヒューはブローウィンと結婚した

ヒューはブローウィンの家に行った。

「炭鉱で働く」「それはいいわね」「ここに住んでも構わないか?」「あなたには家があるでしょ?」「靴と服の準備は僕のために」

さらに応答を繰り返したが、ブローウィンはヒューがプロポーズしているとは気がつかない。

しかしさらに「返事はどっちなの?」と聞かれて、ブローウィンは状況を理解して「いいわ」と受け入れた。

だが結婚式は行われない。

◆ イアントとデビーが解雇された

ヒューは炭鉱の中に入る。ブローウィンが見送る。

坑道の中で真っ黒になって働いた。仕事が終わって給料をもらった。注、はっきりとは示されないが、この会社は日給で毎日給料を貰うようである。

しかし解雇される者もいた。イアントとデビーが解雇された。

二人は出て行いった。

しばらくたって、ギリアムとベスは「イアントはカナダ、デビーはニュージーランド」と話している。そしてアンハードはイエスティンと一緒にケープタウンにいる。

◆ アンハードが帰ってきた

アンハードが帰ってきた。ただし離婚したわけではなく、元の豪邸にいる。

ヒューはアンハードを訪ねて行った。大きな屋敷。メイドが出てきて案内された。

アンハードは「変わったわね、見違えるわ」と言った。そしていろいろなことをヒューに聞いた。

ヒューは知人のことを一通り報告した後、グリュフィード牧師のことに触れた。「夜遅く朝早い生活をしている。しかし心の病気、目の輝きがなくなった」。

ヒューが帰った後、10人ほどもいるメイドたちがイエスティンとアンハードの噂をしている。

「夫を置いて帰ってきたのはなぜ?」「牧師が愛人だからよ」「離婚するだろう」などなど。

ヒューは仕事仲間からもアンバードのことを邪推され喧嘩した。

教会でもいざいざが起こっている。

◆ また事故が発生した

グリュフィード牧師の家。グリュフィードは当地を出て行こうとしている。アンハードへの手紙を書いている。

ヒューが訪ねてきた。グリュフィードは懐中時計を記念としてヒューに譲った。

「姉さんには会わないの?」「もし一目見たら別れられない」。

さてここで、事故発生を知らせる汽笛が鳴り響いた。坑道から巨大な火柱が吹き上げている。

みんなが駆けつけた。ヒューとグリュフィードも駆けつけた。

ギリアムが中に閉じ込められたとのこと。ベス、アンハード、ブローウィンも駆けつけた。

中から人が挙げられてきた。ケガをしている。ギリアムはいない。

救助隊が編成される。ヒュー、グリュフィード、タイなど。

中に入った。出水している。水をかき分けて進んだ。坑道を支えている木材が倒れている。坑道が崩れて先に進めない。

ギリアムが半身埋もれて動けなくなっている。ヒューを見て「立派な男になった」と言ったが、息が絶えた。

外でベス、アンハード、ブローウィンが待っている。エレヴェーターが上がってきた。

ギリアムを見て抱き着いて泣いた。

◆ ラスト

谷を歩きながらヒューが過去を思い出している。
 


■ 蛇足

ヒューを演じたロディ・マクドウォールは1928年生まれで、本作当時13歳くらい。最初は小学校高学年くらいで、それから20歳少し前(?)まで演技している。

映画の本質には関係ないとも言えるが、体が大きく成長する時であり、最後の方では大きな違和感を感じる。鑑賞意欲をくじく。途中で俳優を切り替えて欲しかった。
 


■ 出演作

◆ ドナルド・クリスプ
「嵐が丘 Wuthering Heights (1939)」
「女王エリザベス The Private Lives of Elizabeth and Essex (1939)」
「ジキル博士とハイド氏 Dr. Jekyll and Mr. Hyde (1941)」
「名犬ラッシー 家路 Lassie Come Home (1943)」

◆ サラ・オールグッド
「美女ありき/Lady Hamilton(1940)」
「ジェーン・エア/Jane Eyre(1940)」
「ジキル博士とハイド氏/Dr.Jekyll and Mr.Hyde(1941)」

モーリン・オハラ
(1941)わが谷は緑なりき/How Green Was My Valley
(1942)海の征服者/THE BLACK SWAN
(1950)大城塞/Tripoli(1950)
(1963)マクリントック/McLintock!
(1952)すべての旗に背いて/Against All Flags
(1945)海賊バラクーダ/THE SPANISH MAIN(1945)
(1946)船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor(1946)
(1947)三十四丁目の奇跡(奇蹟)/Miracle on 34th Street
(1939)ノートルダムのせむし男/The Hunchback of Notre Dame
(1949)恋に踊る/Dance, Girl, Dance
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1954)マラガ/Malaga
(1952)剣豪ダルタニアン/Sons of the Musketeers
(1950)コマンチ族の怒り/COMANCHE TERRITORY
(1939)巌窟の野獣/Jamaica Inn
(1946)センチメンタル・ジャーニー/Sentimental Journey

◆ パトリック・ノウルズ
「結婚スクラム/Four's A Crow(1938)」
「進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade(1936)」
「恋愛合戦/It's Love I'm After(1937)」
「ロビンフッドの冒険/The Adventures of Robin Hood(1938)」

◆ ウォルター・ピジョン
「キュリー夫人/Madame Curie(1943)」
「雨の朝巴里に死す/The Last Time I Saw Paris(1954)」
「地球の危機/Voyage to The Bottom of The Sea(1961)」

◆ リス・ウィリアムズ
「心の旅路/Random Harvest(1942)」

◆ フレデリック・ワーロック
「戦慄の調べ/戦慄の調べ(1945)」
「ジキル博士とハイド氏/Dr.Jekyll and Mr.Hyde(1941)」