先日のテレビ番組で張本勲氏がなでしこジャパンについて言ったことが議論の的になっているようです。
取材をしないことで有名な張本氏ですが、特に野球以外のスポーツについては知識がない上に最新の動向もほとんど知らないので、いつも的外れなことばかり言っています。
カナダで開催されていた女子ワールドカップで準優勝したなでしこジャパンに対して、張本氏が「ベテランばかり使わないで若手をもっと使って欲しい。」と言っていたようです。
なでしこジャパンは、グループリーグでは23選手全員を出場させるという驚くべき選手起用をしましたが、グループリーグ突破後は先発メンバーを固定しました。そのメンバーの年齢別人数は以下の通りでした。
31歳:1人
30歳:1人
29歳:1人
28歳:3人
27歳:3人
26歳:1人
24歳:1人
サッカーでは25歳くらいから30歳くらいまでの年齢の選手が、心技体のバランスが取れて最も力を発揮すると言われています。30歳を超えてからベテランと言われることが多いので、なでしこじゃぱんの先発メンバーでベテランと言われるような選手は実は少ないと思います。
また、張本氏は若手を積極起用するよう進言していたようです。ロンドンオリンピック後に若手選手を起用しましたが、力不足であったために先発に起用されるような選手が若手の中にはいませんでした。よくマスコミでもベテランではなく若手を使えと言うことが多いですが、若いからと言って力の劣る選手を起用すれば戦力ダウンになってしまうことが全く考慮されていません。
張本氏はロンドンオリンピック後のなでしこジャパンの強化過程をほとんど見ることなく、選手の年齢構成も知らないので、あのようないい加減なことが言えるのだと思います。
スポーツは2番では意味がないということには、ある意味では正しいと思います。チームとしては優勝を目指していたでしょうし、それを逃したのであれば何かが不足していたことがあるのだと思います。
スポーツでは結果は非常に重要なものですが、結果だけを見て批判するのは間違えていると思います。批判するのであれば、なでしこジャパンに何が足りなかったのかをしっかり指摘するべきです。
また、若手起用について1998年のフランスワールドカップのことを引き合いに出して、以下のことを言っていました。
「98年に岡田(武史)監督があの名選手のカズ(三浦知良)と北澤(豪)を外したことがあるんですよ。中田(英寿)が20歳のころです。みなさん物凄く反論しました。だけど(岡田武史監督は)信念を貫いたんですよ。佐々木監督も自分の思っているチームを作ってもらいたい。世間の需要とかね、マスコミに後押しされないとかね、負けた後の理由を考えないで、やっぱり自分のできるだけのチームを作ってもらいたい。そうしないと勝てないよ。5点はコールドゲームと一緒ですよ。」
当時の中田は予選の時からレギュラーで、カズや北沢を外して中田をメンバーに入れたわけではありません。そもそも中田はカズと北沢とはポジションが異なりますので、中田を入れたためにカズや北沢がメンバーから外れたのではありません。
カズは前年の予選の試合で体を傷めてから動きに精彩がなく、純粋に戦力で見たときにフォワードの選手として使いどころがないと考えて、岡田監督はカズをメンバーから外しました。
しかし、カズをメンバーから外してしまったことで、他のメンバーに大きなプレッシャーがのしかかりました。それまでチームのプレッシャーの多くを背負っていたカズがいなくなってしまったのですから当然のことです。特にフォワードでレギュラーに起用された城(彰二)は大きなプレッシャーを感じて、試合では持っている力を十分発揮することができませんでした。
岡田監督は、再び代表監督となって出場した2010年の南アフリカワールドカップでは、怪我から復帰したばかりのGKの川口(能活)を大会のメンバーに選びました。
おそらく、岡田監督は川口は本大会で起用することはほとんどないだろうと考えていたと思います。しかし、ベテランの川口をメンバーに入れることで、控え選手を含めたチーム全体に良い影響を及ぼすことが狙いだったと思います。
代表に入る選手というのは、自分が所属するチームではエース級の選手ですので自尊心が高い選手が集まっています。そのため、試合に出られない状況になるとやる気を失くしてしまい、チームに悪い影響を及ぼすことがあります。
しかし、試合に出られない年上のベテランの選手が、不平や不満を言わずに率先して練習に取り組む姿を見せられると、自分だけ不貞腐れたような態度を取ることはできなくなります。
また、中村(俊輔)は予選から大会直前まではエースとしてチームの中心選手でしたが、ワールドカップが行われる年はJリーグ開幕時から怪我やコンディション不足などで不調が続き、結局本大会では控えに回りました。そんな状況になってしまえば、やる気を失くしてしまっても仕方ないのですが、自分ができることを考えて、ベンチで大きな声を出してチームを盛り上げ、出場する選手に水を渡すなど、チームに少しでも貢献をしようとしていました。
岡田監督は、代表チームというのは単純に戦力だけを基準にして選手を選ばない方がいいこともあるということをフランスワールドカップで学び、それを南アフリカワールドカップに活かしたのではないでしょうか。
しかし、上っ面しか知らない張本氏には、そんなことは全く気付けなかったようですね。
張本氏は最後に「日本はベテランが7人くらいいる。持続できない。爆発力がないから。過去の実績とかなんのプラスにもならない。今のプレーが大事。今、力あるかないかそれが大事。」と言っていたようです。
日本にベテランが7人いると言うのであれば、28歳の選手もベテランということになります。サッカー選手で28歳と言えば、最も脂の乗っている時期です。更に、上述のように現在力のある選手が試合で起用されており、若手には力がなかったということです。
また、年齢が上の選手が多いとスタミナに心配があると言われることあがります。なでしこジャパンは、ワールドカップに出場したチームの中では決して平均年齢が低い方ではありませんでしたが、スタミナ面での不安はほとんどありませんでした。なでしこジャパンが準々決勝で対戦したオーストラリアは平均年齢で3.8歳若いチームでしたが、先に疲れて足が止まったのはオーストラリアでした。
また、若い選手には爆発力があることは確かですが、安定して力を発揮できないことが多く、経験が不足して精神的にも未熟なため大きな舞台では思うようにプレーできないことが少なくありません。
張本氏はお金を貰ってテレビ番組に出演しているのですから、いい加減なことばかり言わずに、もっと様々なことを取材や勉強するべきではないでしょうか。まあ無理でしょうか・・・
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