日本代表の新しい監督がメキシコ人のアギーレ監督に決まりました。ブラジル大会の総括をしないで監督を選んでいいのかなど、様々な意見が出ているようです。しかし、ワールドカップを見る限り、代表監督が変わっても、根本的な解決にはならないような気がします。

 

ワールドカップを見ていて気になったのは、グループリーグを突破した国とは基本的な部分でまだ差があるということです。例えば、メキシコやチリなどは、日本とも身長は変わらないというか平均身長は日本より低いくらいです。アフリカのように飛びぬけた身体能力を持った選手もほとんどいませんでした。

 

それなのに、守備では粘り強い対応をして中々得点を許さないようにし、攻撃面では細かいパス回しなどのコンビネーションによって、チャンスを作り出して得点していました。メキシコは平均身長で約6cm高いクロアチアからコーナーキックで得点を入れています。

 

試合を見たり様々な論評を読んだりすると、これらの国と比べて日本は戦術と基本技術が十分身に付いていないのではないかと感じました。

 

実はこの2つは代表レベルで何とかなる問題ではなく、育成から見直さないといけない問題です。日本の育成段階では、戦術が疎かにされており、基本技術も徹底されていないようです。

 

 

戦術については、日本では小中学生に戦術を教えるべきかどうかということが議論になっています。しかし、海外ではその頃から戦術を身に付けさせるようにしています。

 

よく戦術と戦略を混同してしまうことがありますが、日本のサッカー界でも戦術と戦略の区別が明確になっていないことが多いようです。サッカーでは、戦術は「問題を解決する行為」であって、戦略とは「プランニングされた計画的なもの」と定義されています。

 

さらに、戦術には「個人戦術」と「グループ戦術」があります。育成段階では、主に「個人戦術」についてしっかりと教える必要があるようです。

 

日本では、小学生のときのような育成の早い段階ではボール扱いなどの技術を優先して身に付けさせ、戦術について身に付けさせる指導はあまりしていないようです。中学生になると、チーム戦術は身に付けさせるように指導しているようですが、個人戦術についてはあまり重視されていないようです。

 

その結果、日本では代表レベルであっても戦術が身に付いていないことが少なくないようです。こちらのブログ で説明していますので、興味がある方はご覧になってください。

 

ブラジルワールドカップの日本代表は、守備をゾーンディフェンスで行っていました。ゾーンディフェンスとは、特定の選手をマークするのではなく、自陣の守備エリアを各ゾーンに分けて、それぞれのディフェンスの選手が各ゾーンを受け持ち、自分のゾーンに入ってきた相手選手に対して守備を行います。

 

ゾーンディフェンスをするためには、ゾーンディフェンスをするために必要な守備戦術を備えていないといけないのですが、日本では代表レベルの選手でも十分に身に付いていたとは言えなかったようです。

 

 

一方、技術についてですが、日本の選手のボール扱いの技術は劣っているというよりもむしろ優れているようです。しかし、技術と言ってもボールを扱うだけではなく、ボールを持っていないときや、守備などの技術などもあります。

 

基礎技術については、イタリアなどでは12歳くらいまでに身に付ける基本的なことが、高校生でも身に付いていないことがあるようです。

 

・ボールを受けるときに軸足で軽くジャンプしてショックをやわらげると共に体の向きをコントロールすること。

 

・ヘディングの時に両肘を高く張って飛び上がり頭を強く振り下げること。

 

・どんなときにも常に細かく足踏みをして、決して両足を揃えて立ち止まらないこと。

 

・スタートを切る一歩目を後ろに踏まず、細かいステップで走り出すこと。

 

・後ろから相手をマークするときに両腕を広げて胸で相手に密着すること。

 

・マークを背負うときには相手に前に回られないよう両肘を強く張ってブロックすること。

 

・ボールの位置とゴールの位置に合わせて正しい体の向きでボールを受けること。

 

・次に走り出す一歩目と逆の足でボールを止めること。

 

・足でボールを撫でるようにしながら一歩毎にボールにタッチしてドリブルすること。

 

特に日本の選手はヘディングの技術が未熟で、ロングボールをヘディングで競り合ってマイボールにすることが少ないようです。

 

一方で、日本人の長所として、ディフェンスラインの上下動やプレッシングのポジショニングなどは、同じ育成年代のイタリアの選手よりも上手くできるようです。また、イタリアの選手であれば56回やらせないとできないことが、日本人選手は1回で行えるという吸収力があるようです。ですから、基礎技術が身に付けば、日本の選手は非常に可能性があるということです。

 

 

日本サッカー協会が優先してやるべきことは、育成段階での戦術と基礎技術をしっかり身に付けるような取り組みを少しでも早く開始することではないでしょうか。


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