いよいよワールドカップのブラジル大会が始まりました。スタジアムは盛り上がっていましたが、街中では、今ひとつ盛り上がりに欠けているようです。ブラジルでは、公共料金が上がる一方で公共サービスが低下している状況で、ワールドカップ開催にかかる膨大な費用が「国費の無駄遣い」と国民の目に映っていることが影響しているようです。

 

サッカーは他のスポーツに比べてルール上の制約が少なく(手が使えないというのは大きな制約ですが)、戦い方もチームによって様々です。そして、各国の代表チームの戦い方には、それぞれの国民性のようなものが現れます。今回は、欧州の強豪国である、ドイツ、イタリア、オランダの代表チームの特徴を紹介します。

 

 

【ドイツ】

ドイツといえば、内容はともかく勝負強いというのが特徴です。テクニックよりも強さや速さを重視して、精神的な強さを武器に「ゲルマン魂」と呼ばれる勝利への執念は物凄いものがあります。細かいパス回しをするのではなく空いているスペースを利用していくので、精度の高いパスやトラップよりも、スペースへ走り込むスピードと、それを何回も繰り返す持久力が求められます。

 

このようなスタイルは、勝つことを考えれば合理的ですが、見ている側にとってはそれほど楽しいものではありません。しかし、勝負強さは際立っており、前回まで17回ワールドカップに出場して、ベスト4に進出できなかったのは僅か5回だけです。最多優勝のブラジルが、19回出場してベスト4に入れなかったのが9回ですから、それと比べても常に安定して上位に進出していることが分かると思います。また、過去3回あったPK戦ではいずれも勝っており、このようなところでも精神的な強さを発揮しています。

 

しかし、ドイツが優勝したのは、必ずテクニックや創造性を持った選手がいたときです。1974年のオランダ大会では、テクニックを持った選手が大勢いましたし、1990年のイタリア大会でも小柄でテクニックのある選手がアクセントになっていました。

 

前回大会から、ドイツ代表はテクニックを持った選手を多く選んで、内容的にも見ていて面白いサッカーを展開するようになってきており、今回のチームも同じ趣向のチームとなっています。その一方で、ドイツらしい勝負強さが薄れてきているとも言われています。

 

 

【イタリア】

イタリアといえば「カテナチオ」というゴール前に厚い守備網を敷き、相手の攻撃を無得点に抑え、カウンターを仕掛けて最少得点で勝つという戦術が有名です。得点することよりも、失点しないことを優先します。内容よりもとにかく結果を重視し、イタリアのサッカーには「レアレスモ(現実主義)」が深く浸透しています。

 

どんなに押し込まれた内容の試合でも、一瞬の隙をついてカウンターで点を奪い、その後はまた守備を固めて逃げ切るというのは、勝負どころを見極めた上手い試合運びをするイタリアらしいスタイルです。また、ワールドカップでも、一次リーグは引き分けが多く苦戦しながらなんとか突破し、その後は徐々に調子を上げていくというのもイタリアらしい勝ちあがり方です。一方で、勝てないと感じると、あっさりと敗れることもあります。

 

ダメだと思うとあっさりと敗れ、勝てると思ったときは粘り強く戦うというのは、レアレスモから来ていると言われています。

 

イタリアの選手は、プレー面では非常に几帳面で、特に守備においてはそれが顕著に現れます。相手をマークする、危ないスペースを消す、危険な場面ではファウルをしてでも止めるということを、手を抜くことなくやり続けます。また、チームでの決まりごとはきめ細かく、非常に戦術的なサッカーをします。

 

イタリア人というとラテン系でいい加減というイメージがありますが、実は几帳面でもあり細かいことにも拘るようです。ヨーロッパではドイツと並んで職人の国というのも、イタリア人が几帳面で細かいことを現しているような気がします。

 

 

【オランダ】

オランダのサッカーの特徴といえば、積極的で攻撃的な戦いをし、失点をしないことよりも得点を取ることに重きを置いていることです。消極的なサッカーをして10で勝つよりは、34で負けても美しく攻撃的なサッカーをすることを好みます。イタリアとは対極的な考え方です。

 

オランダ人は大柄な選手が多く、しかもテクニックや戦術能力を兼ね備えていることが特徴です。ディフェンダーやゴールキーパーであっても、足元の技術が求められます。ボールを正確につなぎ、サイドにはドリブルが得意でスピードのある選手を配置し、フィールドを広く使うことも特徴になっています。

 

オランダはワールドカップでは優勝候補に挙げられることも多く、過去のワールドカップでは3回準優勝しています。戦術的にも優れていて、優勝してもおかしくない好選手を揃えていますが、勝負強さに欠ける面があります。

 

そして、オランダでは代表チームの内紛によって期待はずれに終わることが少なくありません。オランダは欧州の中でも個人主義的であり自己主張が強く、それが代表チームで悪い形で現れるようです。選手同士の対立だけでなく、監督と選手との衝突もしばしば起こり、主力選手がチーム入りを拒否してワールドカップに出場しないこともありました。

 

また、柔軟性に欠ける面があり、自分達の思い通りにいかない状況で踏ん張ることができないこともあります。前回の決勝では、スペインを相手にして、自分が標榜するサッカーを捨ててまで勝つサッカーをしたのですが、延長の末敗れました。慣れないことをして、それが裏目に出てしまい内容も乏しいものでした。

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