欧州では、日本のJリーグを見習おうという声が実は少なくありません。技術や戦術、リーグ運営などではなく、スタジアムのことです。スタジアムといっても物理的な施設のことではなく、スタジアムの安全性のことです。

 

Jリーグのスタジアムは、子供や女性でも安心して観戦をすることができ、身の危険を感じることはありません。しかし、サッカーの世界では、これは常識ではありません。

 

欧州や南米のサッカーのスタジアムは、国によっても異なりますが安全ではないことが少なくありません。発煙筒、爆竹、打ち上げ花火を上げるなどはよくあることであり(日本では消防法によりスタジアム内での使用は禁止されています)、時には相手サポーターに向けて投げたり、ピッチ内に投げたりすることもあります。

 

サポーター同士の暴力沙汰も起こり、特に立見席は非常に危険と言われています。サポーターの中には、酒を大量に飲んで観戦している人もいて、トラブルが絶えないスタジアムもあります(スタジアムに行く前にお酒を飲んでから行くことが多いようです)。

 

日本人が海外でサッカー観戦する場合は、以下のことに注意しなければならないようです。

 

・アウェーチームの応援はしない

・アウェーチームのチームカラーに似た色の服は着ない

・時計やアクセサリーなどの貴金属は身に付けて行かない

・現金は最小限だけしか持って行かず更に分割しておく

・一番高いシートで観戦する

 

欧州でもドイツは比較的安全で、イングランドも以前と比べて安全になってきました。かつてイングランドはフーリガンに悩まされていましたが、リーグ・クラブ・警察が連携して安全対策をするようになり、危険な試合では事前にアルコールを飲ませないようにしたり、早めに時間に試合を設定するようにしています。

 

イングランドでは、観戦チケットが高くなったこともスタジアムの安全性に影響を与えたようです。イングランドでは、サッカーは労働者階級のスポーツであり、観戦者の多くも比較的収入が高くない労働者がメインです。特に、観戦料が安い立見席は若い人や労働者階級の人が多く、乱闘や小競り合いが絶えませんでした。

 

しかし、立見席を廃止し、チケット価格が高くなったことで、労働者階級の多くの人はテレビ観戦するようになり、お金がある人がスタジアム観戦者の多くを占めるようになりました。そういったこともスタジアムが安全になった大きな要因の一つとなっています。

 

 

スペインやイタリアは、危険なために子供や女性がスタジアムに行けないようなところもあります。スペインはスタジアムによって危険度がかなり異なるようです。

 

スペインでは「英国や日本のスタジアムを見習え」という声が出ているようです。11月には、サポーター同士が衝突して大規模な暴動が起こり、頭部に重傷を負ったサポーターが死亡するという事件がありました。

 

過激なサポーターグループが存在しており、ネオナチ思想など特定の政治思想を持ったサポーターグループが多くあります。そのような過激サポーターグループはクラブと緊密な関係を持っていることもあり、クラブ側もスタジアムから排除できない状況にあります。

 

イタリアはスペインよりも更に危険で、スタジアムでの暴力事件は少なくありません。発煙筒や爆竹は当たり前のように使われ、色んな物がスタンドやピッチに投げ込まれています。スクーターが客席から投げ込まれたこともあります。

 

安全性に問題があるため、子供や女性がスタジアムに行くことはかなり減っているようです。イタリアでは観戦客数が減っており、空席が目立つ試合が多くなっています。

 

 

今年の3月に、浦和レッズのサポーターがJAPANESE ONLYという横断幕を掲げたことで、チームは1試合無観客試合をする処分を受けました。欧州でも、この一件は報じられ驚かれたようです。どう驚かれたかというと、そんなことぐらいで無観客試合になってしまうのかということで驚いたようです。

 

欧州では、スタジアムで人種差別行為が頻繁に起こっており、あれくらいのことで無観客試合をしていたら無観客試合だらけになってしまいます。欧州では人種差別的な横断幕が掲げられることが少なくなく、人種差別的な野次が度々問題になっています。

 

かつてガンバ大阪などでプレーしたカメルーンのエムボマは「外人であることで好奇の目で見られることはあっても、黒人であることで差別されてると感じなかったのは、日本が初めてだった。」と語っています。

 

 

Jリーグのスタジアムは、安全で誰でも安心してサッカー観戦ができるというのは、世界に誇れるものです。日本社会自体が安全で安心でき、人種差別が欧米に比べて非常に少ないということが背景にあると思います。


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