(1)最初のスパイス
5月3日。いよいよ出発の日がやってきました。
出国するのは5月4日17時55分の便です。でも今日は、アスリートの風の招待選手になっています。たまたまバンクーバーマラソン招待に当選の通知が来る前に、ラジオのゲストが決まっていました。そこで今日は札幌で泊まり、明日、新千歳空港から成田空港へ行くという計画をたてていました。
しかし「平穏無事」という言葉には縁のない私の旅。のっけから心配事が現れます。
5月3日から4日にかけて、北海道は大荒れの予報。さて、成田までの飛行機は無事に飛ぶのでしょうか。しかも成田空港の集合時刻は旅行会社のカウンターに15時55分と指定されているのに、私の成田到着予定時刻は14時40分です。大幅な遅延が生じても間に合わなくなります。
飛行機を乗り継ぐときは十分に時間の余裕をみるように、と、以前Ogakunが大学入試で広島に向かうときは指示したというのに・・・。
でもジタバタしても仕方がありません。もしも飛行機に遅延が発生しそうならば、便数の多い羽田経由で成田入りすることも視野に入れて、早めに空港入りをしておくことにしました。
アスリートの風の放送も無事に終え、打ち上げで気持ちよく酔ってホテルに帰りました。そしてぐっすり寝ることができました。
5月4日。やはり気が高ぶっているのでしょうか。午前5時に目が覚めて、2度寝をしようとしましたがなかなか眠れませんでした。そのまま布団の中で過ごします。
気になる天気ですが、JALのサイトを見ても、特に注意は出ていません。テレビで気象情報を見ても石狩南部に警報は出ていません。どうやら心配はなさそうです。のんびり10時頃に出発することとします。
朝食会場の1階ロビーは、ゴールデンウイークのためか混雑していました。それでもどうにか食べ終えて部屋に戻ります。テレビではちょうどカーネーションの総集編をやっていたので、これをじっくり見ました。ところが次々と道南地方や太平洋側で高速道路通行止めのテロップが流れます。だんだん心配になってきますが、私の乗る飛行機の運航予定を確認すると、定刻予定となっています。大丈夫・・・だよね?
落ち着かないのでチェックアウトをして、雨の中を札幌駅に向かいます。それから新千歳空港行きの快速エアポートに乗り込みました。
新千歳空港には11時前に着きましたが、ゴールデンウイークということもあってでしょう、空港内は混雑しています。飛行機に乗る前に昼食をとらなきゃならないと思い空港内をブラブラしますが、まだ11時だというのに、回転寿司の店には長蛇の列ができています。
ラーメン屋がたくさん集まっている一角にも行きましたが、こちらは明暗がくっきりと現れていました。店内満席でさらに行列ができている店があるかと思うと、1人のお客さんもいない店もあります。こうした営業形態だと人気不人気が一目瞭然なので、不人気店には非常に厳しいですね。
そんな中、結局フードコートで旭川井泉のカツ丼を食べました。フードコートですからさすがに空港内でもリーズナブルで、しかもこの味ならば満足できました。
でもこれから海外旅行に行くという緊張感からでしょうか。食欲はあまりありませんでした。
それよりも眠い!朝の5時に目が覚めてそのあとは眠れませんでしたから、今頃になって睡魔が襲ってきます。でも成田からバンクーバーに飛ぶ飛行機の中で眠りたいから、それまでは寝るのは我慢しようと思っています。
心配していた成田行きの便も定時に飛びました。途中も順調なフライトで、予定通りに成田空港に到着します。これでひと安心です。
成田空港には、しぶままさんが迎えに来てくれていました。新千歳からの便が到着したのは第2ターミナル。そしてバンクーバーに向かうエアカナダが飛ぶのは第1ターミナル。その間は無料バスで移動しなければなりません。
ところが海外旅行が不慣れな私は、そんな空港内の移動はまったく頭にありませんでした。しかも第1ターミナルに着いてからも、その広さは私の想像以上のものでした。集合場所のカウンターに行くにも、携帯電話のレンタルを申し込んでいるauのカウンターに行くにも、迷いそうです。しぶままさんに案内してもらえて助かりました。
さて集合場所に到着すると、もうひとりの当選者のでこちゃんがいました。すでに成田空港に来ているはずのOgakunに電話をします。呼び出し音1回で出るのですが、何を話しかけても返事は返ってきません。おかしいと思い再度かけても同じです。それを何度か繰り返しているうちに、Ogakunがやってきました。
「どうして何も言わないんだよ」
「お父さんこそどうして返事しないのさ」
どうやらお互いに電話が通じないことにいらだっていたようです。とりあえず私は、荷物をOgakunに見ていてもらい、auのカウンターに行き携帯電話を借りてきました。そしてその電話を使ってOgakunのiPhoneに電話をしますが、症状は同じです。私の側からの声はOgakunのiPhoneから聞こえますが、Ogakunの側の声は私の携帯から聞こえません。問題はOgakunのiPhoneにあるようです。
「あれか・・・」
Ogakunはポケットの中にiPhoneと一緒に塗り薬を入れていたそうです。するとその薬が漏れてしまい、iPhoneのマイクに入り込んでいたとか。爪楊枝などを使ってその薬を取り除いたということですが、どうやらマイクは壊れてしまったようです。ハプニングは旅のスパイスといいますが、出国前からこんなハプニングがあるとは予定外でした。
おいおい・・・これで現地で連絡を取り合うことができなくなったじゃないか・・・。Ogakunらしいといえばらしいのですが、早速やらかしてくれました。まったく頼りない奴だ。先が思いやられるよ・・・なんてこのときは思っていたのですが・・・。(つづく)
バックナンバー
第1部 感激記(当選に 喜びよりも 狼狽し)
第2部 観光記(ハプニング 旅のスパイスと 言うけれど)
第3部 完走記(バンクーバー 自分の足で 観光ラン)