(6)海沿いの道へ
爆音が聞こえて空を見上げると、小型飛行機が旗のようなものを引っ張って飛んでいます。そこに書かれている文字を読めなかったのは残念ですが、やはりこれもマラソンを応援してくれているのでしょうか。
青い空と緑の木々。どこを走っても緑や色とりどりの花が目につきます。空気もとても美味しく感じます。そんな空気を胸一杯に吸い込みながら、軽快に足を進めました。
突然、左脇の木からキツツキのドラミングの音と、アカゲラに似た鳴き声が聞こえます。立ち止まって目をこらしてみると、アカゲラに似たキツツキが樹上に見えました。でもさすがにコンパクトデジカメでは、写真をうまく撮れません。野鳥観察は諦めて、先を目指しました。
16kmのラップは6分59秒です。ちょっとサボりすぎたようで、時間がかかってしまいました。
もうちょっと進むと、面白い人が立っていました。
書かれている文字がどういう意味なのかよくわかりませんでしたが、もちろん私もハイタッチを交わして進みました。
17km地点付近には、「NITOBE」と書かれた大きな看板があります。
札幌農学校の二期生であった新渡戸稲造博士は、1933年にカナダのバンフで開かれた太平洋調査会会議に出席した後、BC州のヴィクトリアで倒れて永眠しました。その新渡戸博士を記念してUBCのキャンパス内につくられた日本庭園が、Nitobe Memorial Gardenとのことです。さすがに中に入る余裕はありませんでしたが、北米を代表する日本庭園のひとつだそうです。
17kmのラップは6分31秒。この間の1kmは、あまりサボらなかったようです(笑)。
それからまたしばらくの間、豊富な緑の中を走ります。
そろそろ空腹を感じ始めてきました。国内のマラソン大会では、エイドでバナナなどの食べ物が補給できる大会が多いのですが、バンクーバーマラソンで用意されている給食はエネルギーバーとジェルだけだと聞きました。そこでバナナなどの固形物を持って走ることも考えたのですが、今回はバーとジェルだけの給食を体験してみようということにしました。
ただ中間点付近までは給食がないようですので、背中のポケットにジェルを2つ入れてました。11マイルのエイドが近づいてきましたので、私はジェルを1つ補給しました。そしてエイドの水で流し込みます。たいして腹のたしにはなりませんが、気持ちの上では大きく違います。
18km地点は6分41秒で通過します。そのあたりから少しずつ景色が変わってきました。海が見え、その向こうには白く雪を頂いた山も見えてきます。そんな景色の変化が嬉しくて、写真を撮っていました。
すると、さきほどシャッターを押してくれた女性がまた近づいてきます。私はまた写真を撮ってもらいました。
コースはどんどん下っていきます。ついついペースが上がりそうになりますが、足は小幅にしてピッチ走法を心がけます。下りでブレーキをかけると足への負担が大きくなりますから、ブレーキをかけないように自然体で駆け下ります。19km地点のラップは6分06秒と上がってしまいました。
ここからは左手に海を眺めながら走るコースが多くなります。入り江には大きな船が何隻も浮かび、その向こうには雪を頂いたドーム型の山が見えます。こうした景色も、今まで見たことがないような景色です。見るもの聞くもの、新たな経験の連続です。
右手には林。そして左手には海を見ながら走ります。
あまりの気持ちよさに、無の境地で走っていました。無になりすぎてしまったのか、20km地点の表示を見落としてしまいました。(つづく)
バックナンバー
第1部 感激記(当選に 喜びよりも 狼狽し)
第2部 観光記(ハプニング 旅のスパイスと 言うけれど)
Coming Soon
第3部 完走記(バンクーバー 自分の足で 観光ラン)