(11)Eye of the Tiger
40km地点を通過して、最後のエイドが見えてきます。
このエイドには、ブログを通じて知り合ったOshoさんがいるはず。そう思って近づくと、いきなり水をかけられて驚きました。後で聞いたところでは、どうやらこれはこのエイドでは毎年恒例となっているようです。
日本人のスタッフを探せばOshoさんと会えるかと思っていたのですが、このエイド、みんな日本語を喋っています。これも後で聞いたところでは、水をかけていたリーダーが日本人で、そのためこのエイドのスタッフも日本人が多いとか。でもこのときはそんなことを知らなかったので、ただ驚くばかりでした。
このエイドの最後の方で、
「Ogamanさんですか?」
と声をかけられました。Oshoさんでした。しっかりと握手をしましたが、後から考えるとどうして一緒に写真を撮らなかったのかと悔やまれます。タイムを狙って急いでいるわけではなかったのに・・・。一緒に写真を撮るために、もう一度行かなければなりませんね。
やがてStanley Parkを後にして、Coal Harbourに入ります。
残りあとわずか・・・そう思うと、この景色を目に焼き付けるとともに、しっかりと写真にも記録しておきたい。そう思うとあちこち撮る枚数が増えてしまいます。するとまたまた写真を撮ると申し出てくれる人がいます。
もう残りはわずかです。しかしCoal Harborに入ってからは、延々と上り坂が続く、最後の試練となっています。
このあたりだったでしょうか、海側を見ると頭の白い猛禽類が飛んでいます。まっ、まさか、ハクトウワシか?かつてバードウォッチングに夢中になっていた私としては、とても嬉しい応援です。さすがにコンパクトデジカメでは写真を撮れませんでしたが・・・。
相変わらず賑やかな応援はここでも待ち受けていました。
様々な応援に力づけられてきましたが、驚かされたのはこの応援です。
車道からいきなりEye of the Tigerが大音量で聞こえてきました。横を走る車から流されているようです。その車の車体には、大きくPoliceと書かれていました。パトカーから応援されるなんて、長いこと走っていますが、利尻島一周悠遊覧人G以外には経験がありません。なんとも嬉しい応援でした。もう少し進むと、交差点で交通整理にあたっていた制服姿の婦人警官も、絶叫しながら応援してくれていました。
すべての人が私たちランナーを歓迎してくれている。そんな思いに包まれ、バンクーバーの人々の温かさをしっかりと感じることができました。
ゴールがどんどん近づいてきます。コースの両側にはフェンスが設けられ、その外側に詰める人の数はどんどん増えてきます。そんな中、私はこの街をしっかり目に焼き付けようと、写真を撮ることも忘れて走ります。
気持ちがどんどんハイになり、まだまだ走り続けることができそうな錯覚にもとらわれます。
左右に詰めかけた大観衆から、さまざまな声がかけられます。言葉のひとつひとつを理解できないのがなんとももったいないのですが、それでもそうした声に「サンキュー」と応えて手を振ります。するとまたその先から声がかかります。右に左にと、手を振りながら「サンキュー」と応え続けました。
大観衆の間を、コースは左に曲がります。そしてまたすぐに左に曲がります。すると旅の終りを告げるゴールゲイトが見えてきました。それとともに、左右の大観衆からはより大きな声がかかります。
あまりにも多すぎて、その声ひとつひとつに応えることはできません。私は握りこぶしの両手を挙げて、右に左に応えながら走りました。言葉にはならない雄叫びを上げながら。
そのままの姿勢で、私はゴールゲイトを駆け抜けました。初めての海外マラソンを、最初から最後まで笑顔のままで走りきりました。
走ってきたコースを振り返り、深々とお辞儀をします。こんな素晴らしいチャンスを与えてくれたBC州観光局、そして温かく迎え応援してくれたバンクーバー市民の皆さん、右も左もわからない私たちをサポートしてくれたRunning Smile Vancouverの皆さん、そして1人で海外遠征をするという私のわがままを許してくれた妻に対して感謝の気持ちを込めて。(つづく)
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バックナンバー
第1部 感激記(当選に 喜びよりも 狼狽し)
第2部 観光記(ハプニング 旅のスパイスと 言うけれど)
Coming Soon
第3部 完走記(バンクーバー 自分の足で 観光ラン)