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~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

2月はベートーヴェンの弦楽四重奏曲 ④

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲。4回目、最後です。今回は中期の代表作、ラズモフスキー四重奏曲からの2曲となりました。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の代表作の一つと思いますが、しばらく聴いていませんでした。かなり久しぶりです。

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ㉓

【CDについて】

作曲:ベートーヴェン

曲名:弦楽四重奏曲第7番ヘ長調 op59-1 (40:51)

   弦楽四重奏曲第9番ハ長調 op59-3 (31:27)

演奏:上海クァルテット

録音:2008年10月8日-10日 群馬 草津音楽の森国際コンサートホール

CD:CMCD-28169(レーベル:Camerata、発売:カメラータ・トウキョウ)

 

【曲に関して】

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、初期・中期・後期の3つに分けられますが、初期はop18の6曲。中期がラズモフスキーの3曲と、第10番、第11番。後期が第12番~第16番ということになります。その中期を代表するのが、ラズモフスキー四重奏曲と呼ばれる3曲で、ロシアのウィーン大使であった、ラズモフスキー伯爵の依頼で作曲されました。当時としては斬新なベートーヴェンらしい構築感の曲で、なかなか一般的な理解を得られなかったとのことです。

 

【演奏についての感想】

上海クァルテットは、一度実演を聴きに行ったことがありました。ハイドンとショスタコーヴィチに、長富彩さんとの共演のシューマンの五重奏曲でした。なかなかパワフルな演奏にすっかり魅了されたという記憶があります。そんな上海クァルテットの演奏をCDで聴くのも久しぶりですし、この曲を聴くこと自体が相当久しぶりなのです。

 

さて、ラズモフスキー第1番。四楽章全部がソナタ形式となっている曲で、がっちりした印象の曲なのですが、第二楽章のスケルツォとか面白い曲ですし、第三楽章は大変美しい曲です。上海クァルテットの演奏は予想通り力強いはっきりした演奏で、グイグイと進んでいきます。そして、第三楽章はとても良く歌って素晴らしい演奏でした。このCDの白眉ですね、これは…。第四楽章は安定した雰囲気で締めくくられました。

 

ラズモフスキー第3番は、ゆったりと序奏で入って、主部に入るとスピードアップして展開していくスタイルです。この大曲のような雰囲気がなかなかのもの。第二楽章はチェロのピツィカートにのって歌われる憂鬱なヴァイオリンが美しい曲でした。第三楽章も含めてですが、第1番よりは古風な印象があります。聴きどころはテクニックが炸裂する第四楽章で、上海クァルテットも全開で走っています。ここはライヴで聴くともっと迫力があるんだろうなと思いながら、白熱のコーダへと向かうのでした。

 

上海クァルテットの演奏は久しぶりなのですが、思っていたより尖っていなくて、よくまとまっている印象を受けました。セッション録音ということもあるかもしれません。今年はアメリカツアーみたいですが、また来日したら聴いてみたいですね。

 

【録音に関して】

文句なく素晴らしい録音です。明晰であり、暖かくもあり、いい音で鳴っています。

 

【まとめ】

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を4枚聴きました。ありあわせのCDで聴いていたので、節操のない選曲になってしまいましたが、スメタナ・クリーヴランド・ベルリン・上海と特徴のある音が聴かれたので、なかなか良い体験でした。スズケのカルテットの音が好きかなぁ…。あと、予想以上に上海クァルテットの音も良かったと思います。上海とニューヨークが拠点ですね。今回聴けなかった曲はたくさんありますので、また気に留めて聴いていきたいと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2024/02/14

 

今回のシリーズのリンクです。

 

 

 

 

【CDについて】
作曲:ブルックナー
曲名:交響曲第5番変ロ長調 (70:03)

演奏:マタチッチ指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1970年11月2-6日 プラハ 芸術家の家
CD:COCO-78123(レーベル:SUPRAPHON、販売:日本コロムビア)

 

【曲について】

ブルックナーの交響曲第5番は、ブルックナー本人による改訂は行われていませんが、ブルックナーが立ち会うこの出来なかった初演時に、弟子のシャルクによって大きく改変された版で演奏されました。原典版の初演はそれから41年後のことで、これは作曲より既に57年が経過した、1935年のことでした。シャルク改訂版はクナッパーツブッシュが用いていたことで有名ですが、近年再び演奏機会が増えているようです。

 

【演奏について】

マタチッチのブルックナーと言えば、第7番や第9番を聴いたことがあって、恰幅のいいゆったりした演奏のイメージを持っていましたが、これはどうかな?と期待を込めて聴き始めます。まず、第一楽章。静かな序奏で始まり、クライマックスで爆発的な音になりました。随分、音の強弱の落差が大きいです。そして、緩急の差もかなり大きいと思いました。速い部分はより速くという感じでした。ちょっとイメージと違いました。

 

第一楽章は、そういった感じで緩急強弱の差の大変大きい演奏で、メロディを追うより部分部分を積み上げた雰囲気がします。流れの良さはさほど感じないかなと思いました。そして、コーダがまた迫力がありました。これが、第二楽章、第三楽章と続いていくと、ガラッと様子が一転します。緩急や強弱のニュアンスはかなりついていますが、それでも流れるような美しいメロディでサクサク進んでいく感じです。ちょっと意表を突かれました。そして第四楽章も同様に、スムーズに流れながらも、表情の幅は大きく、ラストは豪快に盛り上がりました。

 

マタチッチは原典版を基本としながらも、部分的にシャルク改訂版を採用しているようです。いつも聴かない音が時々聴かれます。全体的には豪快な演奏であるという事だと思います。むしろ強烈な演奏と言ってもいいかもしれません。スピードもあって、強弱がしっかりしていて、意外と聴きやすい感じでした。ちょっとこの曲のイメージとは違う感じもしましたが、なかなか面白く楽しめる演奏だったと思いました。チェコ・フィルの音も素晴らしいです。

 

【録音について】

1970年当時のチェコ・フィルの音がしっかりと捉えられた素晴らしい録音だと思いました。

 

【まとめ】

ブルックナーの第5番を聴くのは、ちょっと久しぶりですが、いつもとちょっと違う感じで楽しめました。これもマタチッチの芸風なのか?と思いました。

 

関連リンクです。第5番とマタチッチに関する過去記事です。

 

 

 

 

購入:2024/01/21、鑑賞:2024/02/14

ショスタコーヴィチの時代 ㉛

ショスタコーヴィチが、交響曲第9番の次の純音楽的作品として作曲したのが、弦楽四重奏曲第3番になります。まだ戦後間もない1946年のことでした。一方、弦楽四重奏曲第4番は,間をおいて1949年に作曲されましたが,周囲の助言もあり、スターリンの死後初演されることとなりました。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:弦楽四重奏曲第3番ヘ長調 op73 (31:39)

   弦楽四重奏曲第4番ニ長調 op83 (25:48)

演奏:フィッツウィリアム弦楽四重奏団

録音:1975-77年 サリー All Saints Church, Petersham

CD:433 078-2(レーベル:DECCA) 2/6CD

 

【曲と演奏について】

ショスタコーヴィチの1945年における交響曲第9番の発表は、当局の困惑と反発を招き、スターリンは怒りをあらわにしたもと言われています。その後ショスタコーヴィチは、1945年内には、映画音楽1作と歌曲「勝利の春」を作曲するにとどまり、翌1946年に作曲されたのが弦楽四重奏曲第3番になります。この曲は、戦争中の交響曲と相似性を持った曲になっています。

1948年になって、ショスタコーヴィチは自身の作品にも起因するジダーノフ批判を受け、ショスタコーヴィチは要職を解雇されるとともに、多くの曲が演奏禁止となり、活動を大きく制限されることになります。そして、オラトリオ「森の歌」の発表によって再びスターリンを満足させることに成功し、その後引き続き作曲されたのが弦楽四重奏曲第4番になります。しかし、「森の歌」で復活を果たしたとはいえ、ジダーノフ批判の効力は継続している中で、ユダヤの旋律を主体としたこの曲は周囲の意見もあり、初演は見送られることとなったのでした。

 

弦楽四重奏曲第3番ヘ長調

交響曲第9番の翌年に作曲された弦楽四重奏曲第3番は、戦争中から戦後にかけて作曲された、交響曲第8番、第9番と類似性のある曲となりました。そして、そろそろ交響曲第10番も着想されつつあったのではないかと思われます。そんな時代の弦楽四重奏曲は、戦争の間に生まれた作品を締めくくる、より直接的な音楽になっています。

 

2つの交響曲と同じ5楽章構成になっています。第一楽章は、交響曲第9番と似たフレーズも持った、明るく諧謔的な曲。第二楽章はそんな明るい曲を不安が覆いつくします。ここまでは、第9番と同じ進行です。第三楽章は戦争と独裁者の出現を思わせる音楽で、スターリンを描いたとも言われている交響曲第10番の第二楽章と同じ雰囲気で開始されます。そして、第四楽章は戦争あるいは圧政の犠牲者を悼むパッサカリア。これは交響曲第8番と同じですね。

 

最終楽章は、それぞれ微妙に違っていて、交響曲第8番は戦争に勝利するも、まだまだ続く暗雲あるいは圧政を表現する暗い音楽、第9番は勝利の凱歌ではありますが、勝ったのは軍隊や政府であって犠牲となった民衆はどうなのか?ということを、一部空々しさで含みを残しているように思います。この弦楽四重奏曲は、圧政や戦争に虐げられた人生を穏やかに見つめるような、ちょっと投げやりにも見えるが、生きていく手段としてのシニカルな明るさが見える気がします。「世の中こういうものさ…」というような。

 

そういった事は別にして、聴くべきはこの音楽ですね。弦楽四重奏で表現した、厚みのある色彩感豊かな響きは素晴らしいものがあります。そんな変幻自在の表現で、それぞれの性格付けが異なる5つの楽章が展開していきます。大変シンフォニックでもあり、暗い哀感を切々と響かせるパッサカリアもあり、とても内容の濃い名作だと思います。このあたりは、ショスタコーヴィチ中期の充実した作品群だと思います。

 

2018年にジュリアードで結成されたAbeo Quartetの演奏。アメリカの若き団体です。パッサカリアの情緒たっぷりな演奏など、解釈の変遷を感じます。

 

弦楽四重奏曲第4番二長調

 

1948年のジダーノフ批判以後、活動が制約される中で、この曲は作曲されています。批判以後は愛国的な曲や映画音楽の作曲によって生計を立てざるを得なかったのですが、その中では公開されずとも、創造的な作曲は続けられていました。この四重奏曲も幾度かの試演により公開を目指した節はあるようですが、結局スターリンの死後まで一般公開はされませんでした。

 

内容としては、東欧ユダヤ人の音楽から多くのテーマを取り入れており、人間の儚さに加え、迫害の象徴なども織り込んだとも考えられます。また、そのことが公開を難しくしたとも考えられます。ショスタコーヴィチはこの時、アメリカに使節として訪問し、バルトークの弦楽四重奏曲を聴いて触発されたと言われています。民族音楽的要素を多く取り入れているというところに共通点があるのでしょうか。全体的に舞曲風のメロディが多く、叙情的かつ繊細な響きを持った、憂鬱な雰囲気にも支配された曲で、暴力性的な要素は影を潜めた形です。また、ユダヤ旋律やその物語を取り入れた作風は、ピアノ三重奏曲第2番で登場していましたが、この頃から多くなっていきます。

 

モリナーリ四重奏団による演奏です。1997年に結成された四重奏団で、20世紀以降の音楽から現代曲を中心に活動されているようです。響きに透明感があって、先鋭的な音も感じられるのではないかと思いました。

 

 

さて、今回は再びフィッツウィリアム弦楽四重奏団の全集から聴いてみました。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、せっかくなので最後までこの全集で通していこうかな…と思っています。輪郭がはっきりした迫力もある演奏で、豊かな音も大変聴きやすく、通して聴くにも1970年代の標準的な演奏で、非常にいい全集だと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2023/02/13(再聴)

 

関連リンクです

 

 

 

 

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:交響曲第9番ハ長調 D944 (63:41)

演奏:テイト指揮、ドレスデン・シュターツカペレ

録音:1986年 ドレスデン Studio Lukaskirche

CD:3 29 177(レーベル:ETERNA)

 

【曲に関して】

この交響曲は、通称「グレイト」なのですが、この呼び方は、シューベルトの交響曲のうちハ長調の作品が第6番と第9番の2曲があり、第6番の方が小規模であるため「小ハ長調」と呼ばれ、第9番が「大ハ長調」と呼ばれることに由来します。つまりは、大きい方のハ長調という意味合いなのですが、シューベルトのこの曲への意気込みから考えると、グレイト(偉大)な交響曲というニュアンスでも充分通用する作品です。

 

【演奏についての感想】

何だか最近月に一回くらい新しいグレイトを聴いているような気がしてきましたが、今日はジェフリー・テイトさんの演奏です。当時のいろいろなCDのジャケットを見る限り、ステディな感じの印象で、真面目な?音楽が流れてきそうです。逆に、そこのところが面白みがなさげな気がして、私は今まで積極的に聴いていなかったのですが…。録音はEMIとドイツ・シャルプラッテンとの共同制作ということで、このCDは東独で発売されたものの方です。Made in DDRですね。ジャケットが地味ではあります。EMIでも同時期に発売されているので、そちらの方が一般的と思います。

 

さて、序奏が始まります。あまり溜めてニュアンスをつけるような感じは無く、あっさりめで進んでいきました。あれあれと思っているうちに、同じテンポでどんどん進んでいきます。それは、全く一定で、きっちりした感じがします。そして見事に加速して盛り上がり、主部に入っていきました。当たり前ですが、オーケストラがすごく揃っています。揃っていると意識してしまうくらい揃ってます。レガートとかは無しのようで、インテンポで歯切れよく進むからでしょうか。楽譜をパソコンに入れたらこうなるのでは?と思ったくらいです。

 

こう書くと、つまらない演奏か?という印象を与えてしまうかもしれませんが,それがそれがとんでもないのです。誇張して歌わせなくても、これがこの曲本来の魅力だというくらいに、自然に歌が溢れてきます。これはある意味聴いたことなくて、ちょっと驚きました。グレイトの根本的な美しさを示してくれる演奏ではないかと思いました。最後まで繰り返しもしっかり行い、天国的な長さの中に浸ることができました。ドレスデン・シュターツカペレの演奏も、そして録音も最高クラスのものだと思います。かなりテイトさん見直しました。

 

【録音に関して】

適度なと申しますか、見事にハマったルカ教会の残響と、ドレスデン・シュターツカペレの音を聴くことのできる録音だと思います。このCDのリマスターが出ていれば聴いてみたいと思います。

 

【まとめ】

いろいろ聴いたと思うグレイトなのですが、演奏は尽きないと思いました。それぞれのCDにそれぞれの感動があります。一方で、この演奏はドレスデンの音という要素も大きいでしょうね…。いいものを聴いたという感じです。

 

購入:2023/12/08、鑑賞:2024/02/06

 

このブログから、グレイトの記事をリンク。前回選ばなかったもの優先で(笑)。

 

 

 

 

 

 

【CDについて】
作曲:ベートーヴェン

曲名:ピアノ・ソナタ第12番変イ長調 op26 (19:51)

   ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 op27-1 (15:48)

   ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 op27-2 (15:32)

   ピアノ・ソナタ第19番ト短調 op49-1 (8:05)

演奏:ブレンデル(p)
録音:1994年4月 ノイマルクト(ドイツ)No.12-14

   1994年2月 スネイプ・モルティングス(イギリス)No.19

CD:438 663-2(レーベル:PHILIPS)

 

【曲について】

ピアノソナタ第12番は、第三楽章に葬送行進曲を配していることから、葬送ソナタとも通称されています。第三楽章は、「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」と題されていますが、この英雄が誰であるのかは、定かではありません。ショパンはこのソナタを好んでおり、同様に第三楽章に有名な葬送行進曲を持つピアノソナタ第2番の作曲当たっては、このソナタの影響があるのではないかと考えられています。

 

【演奏について】

べートーヴェンのピアノソナタ。このCDに収められている曲は中期のソナタを中心としたものですが、月光以外はそれほど聴く機会が多くないので、新鮮な気持ちで聴いてみます。まず、第12番から。この曲は葬送ソナタとしても知られていますね。その葬送行進曲以外にも、第一楽章が変奏曲で始まり、このCDでも一番長い楽章になっています。変奏曲は、いろいろな感情表現が移り変わっていくので、面白い形式です。ここでも侘しい曲から闊達な曲への移り変わりなど、楽しく体験できました。

 

第三楽章が葬送行進曲で、第四楽章が早いパッセージが続く曲という事で、ショパンのピアノソナタにも影響を及ぼしている構成となっています。第13番は第14番とともに、幻想曲風ソナタということで、ソナタ形式の曲がありません。これは、第12番も同様なんですが…。そして、第14番も幻想曲風ということで、月光の幻想的なメロディで始まります。そして、第14番の第三楽章がこのCDで初めて出てくるソナタ形式となります。この第三楽章はベートーヴェンを代表する中期の傑作ですね。いつ聴いても圧倒される曲です。

 

最後の第19番は若干おまけ的についている感じがしないでもないですが、この曲は最初からソナタ形式でスタートしますので、シンプルな曲ですので、構築を追って聴いていくのも面白いと思いました。という訳で、安定のブレンデルの演奏で鑑賞しました。ベートーヴェンのソナタと言えば、一つ前の世代のバックハウスやケンプといったところが定番ですが、ブレンデルは、この世代ではベートーヴェンの曲を最もベートーヴェンらしく弾いてくれたピアニストで、独墺系のピアノ曲、特にベートーヴェンとシューベルトはブレンデル無くして同時代の演奏は語れないと言いたいくらいの定番のピアニスト。その頃の巨匠たちがショパンの演奏を多く残しているのに対し、そのイメージが無い(録音はゼロではない…)というのも潔くで、わたくし的には、ベートーヴェンの演奏の信頼感が気分的に増しています(笑)。

 

【録音について】

美しい録音です。ブレンデルの重量感のあるピアノの音がよく解ります。

 

【まとめ】

最近よく聴いてみるブレンデルですが、改めていろいろな演奏を聴いてみたいと思っています。私にとってもピアノ曲の鑑賞経験値のルーツとなっていると思います。

 

購入:2023/12/27、鑑賞:2024/02/03

 

このブログからのブレンデル演奏のリンクです

 

 

 

 

 

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:八重奏曲ヘ長調 D803 op166 (61:01)

演奏:フィルハーモニック・アンサンブル・ベルリン

録音:2023年6月16-19日 ベルリン-ノイケルン Nikodemuskirche

CD:IC027(レーベル:Indesens Calliope Records)

 

【曲について】

シューベルトの八重奏曲D803は、ベートーヴェンの七重奏曲を意識して作曲された作品で、6楽章構成で、内容も近いものがありますし、編成は七重奏曲+第2ヴァイオリンですね。クラリネット、ファゴット、ホルンに、弦楽四重奏とコントラバスという形です。ディヴェルティメントなどの流れをくむ合奏曲という位置づけでしょうか。

 

【演奏について】

フィルハーモニック・アンサンブル・ベルリンという演奏者名になっているCDで、日本語だと「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のソリストたち」と書かれているので、常設団体という事では無さそうですが、どうなんでしょうか?10人前後のこういった曲の録音と言えば、ウィーン・フィル母体の団体と、ベルリン・フィル母体の団体の主戦場?という感じですが、双方特色が出て面白いと思います。モーツァルトのK334とか比べると性格がでますね。ウィーンの方が旋律がはっきりして歌うような演奏で、ベルリンの方はシンフォニックな感じと言ったところでしょうか。この曲は、昔のウィーンの録音は聴いたことがありますが、ベルリンで聴くのは初めてです。

 

聴いた感じも、全体的にパワフルな感じがします。ウィーンの方はどの楽章もメロディが浮き立つような所が強調されている印象ですが、こちらはここにはそれほど目立たず、全体で音楽が進んでいく感じと申しましょうか…一概に言えないかもしれず、難しいですが。ただし、第四楽章の変奏曲とかは、楽器ごとにいろいろな変奏が移り変わっていく感じがあるので、ソリストの素晴らしいパフォーマンスが目だって、興味深く感じました。

 

あとは、時代と共にスタイルも技術も変わって行っていると思いますので、今のベルリンの録音と、古いウィーンの録音を比較してもどうか…というところはあるかも知れません。ただ、伝統の音は確かに存在して、そもそもホルンが違いますね。それほど聴き込んだ曲ではないので、細かいことは言えないのですが、きっとこれが今様の八重奏曲なんだろうな…と思いながら、シューベルトの音楽に浸っていたのでした。シューベルトの充実した時期の作品でした。

 

【録音について】

まとまりのいい録音という感じでしょうか。尖ったところが無いですね。いい録音と思います。

 

【まとめ】

こういった曲の新譜は、独墺系の音楽の伝統と現代が交錯するようで、ちょっと面白く感じました。例えば60年代の演奏と、2023年の演奏では、もしかしたらスタンスも違ってくるのかもしれないなと思ったりで、そうこう考えるのも面白かったです。

 

購入:2024/01/14、鑑賞:2023/02/08

 

八重奏曲の過去記事です。

 

 

【CDについて】

作曲:リース

曲名:クラリネット三重奏曲変ロ長調 op28 (23:53)

   クラリネット・ソナタト短調 op29 (24:59)

   クラリネット・ソナタ変ホ長調 op169 (20:23)

演奏:クレッカー(cl)、フロム(vc)、ドゥイス(p)

録音:2003年11月17-21日、2004年5月10,11日

   ハイデルベルク/サントハウゼン Tonstudio Teije von Geest

CD:777 036-2(レーベル:CPO)

 

【曲について】

クラリネット三重奏曲op28は、作曲の経緯等は定かでないようですが、クラリネットはヴァイオリンでも演奏することができて、その場合はピアノ三重奏曲ということになります。op29のソナタもヴァイオリンでも演奏できるようですが、元来クラリネットのために作曲された曲と考えられており、初期のこの形式の曲として重要な位置を占めると考えられているとのこと。op169のソナタはフルート・ソナタ(感傷的なソナタ)としても知られています。

 

【演奏について】

フェルディナント・リースは、ベートーヴェンのピアノの弟子であり、師の回想録の執筆で知られています。作曲家としては、約300曲の作品を残しているとのことですが、長らく忘れられた作曲家となっていたようです。そして、近年CPOやNAXOSの録音によって作品が網羅され、急速に研究が進むこととなりました。今日はそんなリースのクラリネットの室内楽作品。初めて聴きます。作曲年代は、1808~1814の間になります。

 

一通りざっと聴いた印象としては、師であるベートーヴェンの影響を受けた古典派の曲をベースとしつつ、メロディや装飾などロマン派のイメージも漂っていました。まず目立つのは、ピアノの伴奏がとにかく派手で目立つこと。これがかなり強い第一印象でした。逆に緩徐楽章の印象が薄くかんじます。ピアノ伴奏の装飾の多さや派手さは、すべての曲に共通していて、対してクラリネットはピアノの多彩さに比べて音色が少し単調な感じもしました。と、とりあえず聴いて、あとはじっくり楽しみます。

 

トリオはやはりチェロが入っている分、音が多彩で厚くなっています。第一楽章はなかなか面白いです。クラリネットの音色も多彩ですね。緩徐楽章はシンプルに入ってチェロでメロディを奏でる展開は粋ですねぇ…。ト短調のソナタも第一楽章はいろいろ凝っていて、クラリネットのいろいろな表情を聴くことができます。伴奏のピアノのおかげで、終始華やかな感じがして、どこを聴いても楽しい曲でもあります。リースの曲を初めて聴きましたが、なかなかいい曲でした。埋もれてしまうには惜しい曲でした。室内楽の名曲との出会いはとても楽しいものです。

 

【録音について】

3つの楽器の音が、それぞれ特徴的に捉えられていました。いい録音と思います。

 

【まとめ】

始めて聴くリースの曲。いい発見がありました。あと、このCDをイヤホンで聴いたり、大きいスピーカーで聴いたり、小さなセットで聴いたりと、いろいろしてみましたが、クラリネットの音色がそれぞれ違って聴こえることがよく解りました。一番心地よい音は何かなぁと思いながら聴いていたのですが、奥が深いです。

 

購入:2023/12/08、鑑賞:2024/02/01

2月はベートーヴェンの弦楽四重奏曲 ③

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲。3回目は第12番と第13番で、一部先週と重複します。この際聴き比べてみるのもいいものかと…。後期ばかりなので、それなりに聴きごたえがあります。

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ㉒

【CDについて】

作曲:ベートーヴェン

曲名:①弦楽四重奏曲第12番変ホ長調 op127 (36:24)

   ②弦楽四重奏曲第13番変ロ長調 op130 (36:32)

演奏:ベルリン弦楽四重奏団

録音:1978年1月31日-2月3日、11月27-30日①、1979年5月29日-6月1日、7月4-5日②

   ドレスデン ルカ教会

CD:32TC-60(レーベル:Deutsche Schallplatten、発売:徳間ジャパン)

 

【曲に関して】

ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲は、伝統的な形式を離れた作品が多いのですが、最初の第12番と最後の第16番が古典的な四楽章形式となっています。このうち、第16番は緩徐楽章とスケルツォが逆転した並びになっているのに対し、この第12番は正統的な順番ですね。この第12番の緩徐楽章はベートーヴェン後期に数々作曲された深みのある変奏曲となっていて、大変美しいものです。

 

【演奏についての感想】

いかにも古めかしいCDですね。徳間のシャルプラッテンの初期のCDだと思います。3200円。当時これを買った人は、好きな人だろうねぇ…と思ったりして。全集の6枚目というものですので、1枚だけ持っているのもなんだか…、という感じですが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は全集になることが多いので、バラ買いは少々躊躇します。全集にしたら、結構なお値段になりますね。

 

さて、スズケのベルリン四重奏団です。このころは、ライプツィヒに移ったあとなのですが、録音はベルリンで続けられました。深みのある素晴らしい音で、また旋律がとても美しく、かつ明快に表現されていると思います。第12番は、颯爽とした第一楽章から、第二楽章の変奏曲に入り、ヴァイオリンが静かに旋律を奏でます。連綿とゆったり流れる雰囲気は、もはや変奏曲とは思えず、思索の中を揺蕩うようです。その中にあって中間の舞曲風の変奏は楽しく、消え入るような変奏と交互に、現実と思索の中を行き来していきます。この後期の変奏曲は素晴らしいと思いました。闊達な第三楽章はトリオで一度雰囲気を変え、第四楽章は重厚な展開で力強く終わりました。ベートーヴェンのまさに完成された音楽という構築感と詩情がありました。

 

続く第13番は、先週に続いて鑑賞しています。ベルリン四重奏団の演奏は、第12番と同じように、美しくかつ明快な音楽を奏でていきます。大変歯切れよく、また無理なくメロディが歌われます。とても調和のとれた演奏だと思いました。2週連続ですので、この曲にも随分慣れましたが、この演奏はいいと思いました。いろいろな意味でわかりやすくて美しく、楽しく感じます。当時の東ドイツの完成された音楽という感じです。

 

【録音に関して】

音の響きもとても暖かくて、クリアな録音だと思います。

 

【まとめ】

第13番は2回目ということで、聴き比べる形となりましたが、この歯切れがよくて暖かい音色の演奏は大変気に入りました。この雰囲気であれば、このベルリン弦楽四重奏曲の他のベートーヴェン演奏も是非聴いてみたいと思いました。

 

購入:不明、鑑賞:2024/01/31

 

前回までの記事へのリンクです

 

 

【CDについて】

作曲:ドヴォルザーク

曲名:交響曲第9番ホ短調 op95 「新世界より」 (42:07)

作曲:スメタナ

曲名:交響詩「モルダウ」 (12:34)

演奏:カラヤン ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1985年2月6-9日(新世界)、5月25日(モルダウ)

   ウィーン ムジークフェラインザール

CD:F35G 20041(レーベル:DG、発売:ポリドール)

 

【曲に関して】

押しも押されぬ周知の名曲である訳ですが、古いLPには交響曲第5番となっているものがありますね。これは出版順なのだそうですが、新旧対比はどうなっているのでしょう。私は良く知りません。アメリカ滞在中のドヴォルザークが、黒人音楽と故郷ボヘミアの音楽に類似性を感じたことに刺激を受けて、「新世界から」ボヘミアへ向けて作られた作品だと言われています。

 

【演奏についての感想】

新世界の名盤って何だろうね?と、このCDを聴きながら考えていました。どの演奏でも楽しく聴けてしまいますので、あまり気にしたことが無かったような気がします。今までよく取り出して聴いてきた演奏を振り返ると、LP時代はカラヤンの64年盤と、その対抗馬としてのバーンスタインNYP、当時の高校生的には、バーンスタインに魅力を感じたのは、まぎれもない事実。大学に入ってからは、LPではアンチェルで、大人になってCDを買ったのがフリッチャイ。あとは、ライナーとか好きだったかも…。どちらかと言えば引き締まった演奏が好みの様子です。

 

当時、カラヤンとバーンスタインを比べて、緩徐楽章はバーンスタインの方がゆっくりで、スケルツォはカラヤンの方がゆっくりだなぁ、なんて考えていたような記憶があります。それが80年代の演奏になって、各々の方向に進化しているのも面白いところです。そんなこんなで、久しぶりに新しいCDをGET。今や新時代の録音が沢山出ていますが、未だにあの頃の新世界を聴いています(笑)。

 

ゆったりと堂々とした第一楽章。そしてゆったりして、大変美しい第二楽章。ニュアンスもついていて、しっかりと進む第三楽章。ここは、最近アニメの「青のオーケストラ」でよく聞きました。そして、ダイナミックに盛り上がる第四楽章。細かなニュアンスも効果的で、ウィーンフィルの輝かしい演奏になっています。音は意外と明るめかな…。カラヤンの演奏は美しく磨かれているだけではなく、かつてよりも全体的にゆったりとして、感情が込められた堂々とした演奏になっていると思いました。言う事はないですね。

新世界もいろいろなタイプの演奏はあると思いますが、曲が曲だけに、一流の演奏であればどれも楽しめます。その中でもカラヤン晩年の美しく歌い込まれた演奏として、これから付き合っていくかなぁなどと思ったりするのでした。

 

【録音に関して】

録音は問題ありません。ウィーンフィルの美しいアンサンブルがよく収められています。

 

【まとめ】

カラヤンの新世界って、かなりベタな世界ではありますが、懐かしくもあります。ふとあの頃を思い出してみたくなるのです。この録音は、もう平成に入っていますけど…。

 

購入:2024/01/21、鑑賞:2024/02/02

 

リストの過去記事をリンクをしてみました。

 

 

 

ショスタコーヴィチの時代 ㉚

1944のピアノ三重奏曲第2番と、弦楽四重奏曲第2番の作曲初演のあと、独ソ戦は勝利に終わり、平和が訪れます。その勝利を祝って作曲されたのが、交響曲第9番ということになります。実際作品はそう単純なものとは言えず、ショスタコーヴィチの周辺に新たな火種を起こすこととなりました。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:交響曲第9番変ホ長調 op70 (27:53)

   交響曲第10番ホ短調 op93 (48:09)

演奏:クルツ指揮(op70)、ミトロプーロス指揮(op93)

   ニューヨーク・フィルハーモニック

録音:1949年(op70)、1954年(op93) MONO

CD:MPK 45698(レーベル:CBS)

 

【曲と演奏について】

大戦中に第7番と第8番の二曲の交響曲を作曲したショスタコーヴィチに対して、終戦、勝利という時期となると、それを祝う第9交響曲への期待が高まってきます。ショスタコーヴィチも大規模な合唱交響曲を作曲していることを公言。第9番という記念碑的な番号であったこともあり、周囲の期待は最高潮に達しました。そんな中で公開されたのは、新古典的で軽妙洒脱なこの交響曲です。特に政府は肩透かしを食らわされたと感じ、これが遠因となって、ジダーノフ批判に発展することとなります。

 

実際にショスタコーヴィチは大規模な作品の作曲に着手はしましたが、それらは放棄され、その一部は他の作品に転用されました。元の曲の断片は存在も発見され、録音もされていますが、現状の第9番は全く異なる音楽なのだそうです。(まだ、聴いていません)

 

さて、このCDには第9番と第10番の2曲が収録されていますが、この2曲は作曲年代も大きく異なるものであり、第10番の方は、またいずれ記事を書くとして、今回はさらっと聴いてみます。第9番は、バレエ音楽で有名になったエフレム・クルツの演奏で、作曲後4年経過した、1949年のものです。作曲後あまり時間が経過していないこともあり、原曲をストレートに表現したものだと思います。各パートが丁寧に表現された、しっかりした演奏でもあり、2012年にやっと日本でも発売されました。

 

第一楽章は、若き日のショスタコーヴィチがよく作曲していたバレエ音楽などの軽妙さを思わせます。このタイプの音楽は、交響曲のような看板曲への挿入は行われていなかったと思いますが、ここではストレートに登場します。過去への回顧か、あるいは「プラウダ批判」でもボルトなどの西洋かぶれした曲の転用がやり玉に挙がっていたこともあり、このタイミングで出してくるのはどういうことかなどと、意味を考えてしまいます。第二楽章はクラリネットのソロがとても憂鬱です。対して低弦に現れる音が不気味に暗雲のように曲を覆っていきます。この音楽は一つのポイントになりますね。

 

第三楽章、第四楽章と明るくもあり、虚しさも感じる短い音楽が続いて、シンプルな雰囲気の第五楽章で華々しく閉じられますが、この三楽章には、内容に大きな揺れも感じられ、あちこちに憂鬱感やためらいのようなものもあり、単純には計り知れないものがありそうです。最後は思い直したようにパット盛り上がってシンプルに終わり…という雰囲気です。この曲の中身をどう考えるかはそれぞれだと思いますが、あちこちで二重性のある表現をしているショスタコーヴィチですので、何かあるぞ…と思ってしまうのは条件反射みたいなものかもしれません。曲自体は隙の無い構築感のある、ショスタコーヴィチの素晴らしい名曲だと思います。勿論素直に勝利の喜びを感じると考えるのも、ありかとは思いますが…。

 

現代のこの曲の表現の一つ。こういう風に聴こえるものかと驚くくらい、美しいのですが、このシンプルに演奏される第1~2楽章と、第3~5楽章の鬼気迫る表現の対比には、何かを感じずにはいられません。

 

ミトロプーロスの第10番についても少しだけ…。この演奏は、作曲の翌年のアメリカ初演時の4日後にセッション録音されたものとのこと。内容は音質は別にしても、しっかりと引き締まった迫力のある演奏だと思います。第10番が非常に明快かつ機能的に表現されているのではないでしょうか。初演当初から、こういう風に演奏されていたと思うと、そもそもこの曲の持つパワーを再認識する次第です。

 

購入:不明、鑑賞:2024/02/04(再聴)

 

過去記事のリンクは、第二次大戦時の交響曲を象徴する第7,8番で。第9番を入れた三曲で戦争三部作と言われたこともあるようですが…