7月に聴くために買った14枚のCD(その13)
14枚のCDもあと2枚になりました。こういった聴き方は義務感の押しつぶされるので、来月はもっと枚数を少なくしようと思います。今回は、ブレンデルの変奏曲を集めたCDです。「恋人たち」という副題は、4曲目のブラームスの弦楽六重奏曲が、映画「恋人たち」に使われたことからくるものと思いますが、きっと日本独自のものですね…。
【CD概要】
①作曲:モーツァルト
曲名:デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲ニ長調 K573 (14:09)
②作曲:メンデルスゾーン
曲名:厳格な変奏曲ニ長調 op54 (10:32)
③作曲:リスト
曲名:バッハの主題による変奏曲 (13:59)
(カンタータ「泣き、嘆き、憂い、おののき」BWV12-2、
ミサ曲ロ短調BWV232-16 クルチフクスス による)
④作曲:ブラームス
曲名:主題と変奏 (10:46)
(弦楽六重奏曲 op18 第二楽章、ブラームスによるピアノ版)
演奏:ブレンデル
録音:1989年7月7-10日 イギリス、Snape Moltings
CD:PHCP 128(レーベル:PHILIPS、販売:日本フォノグラム)
【演奏について】
ブレンデルはよる変奏曲集のCDで、このCDがVol.1となっていて、これ以降何種類かの変奏曲のテーマのCDがリリースされています。ここには、古典派からロマン派までの曲が入っていて、私にとってはモーツァルト以外は初めて聴く内容でした。まずは、モーツァルトから聴き始めます。デュポールの典雅なメロディで始まるこの曲、モーツァルトのピアノの変奏曲といえばキラキラ星が一番に思い浮かびますが、ここでもそんなモーツァルトの雰囲気を聴くことができます。モーツァルトの短調の変奏がいいですね。哀感が漂い美しいのでした。
さて、ここからロマン派にうつり、メンデルスゾーンは哀愁に満ちた主題に、ロマンティックかつ技巧的に変奏が加わっていく感じで、一気にロマン派の世界に浸ると、次にリストの変奏曲が出て来て、バッハを主題にしているとはいえ、バッハのオマージュから触発されたリストのピアノ曲という雰囲気です。どんどんリストの華々しい世界に入って行きます。そして、最後のブラームスが圧巻。リストに包まれた雰囲気から一気にブラームスの美しいメロディに持っていかれました。連続して聴いていて、このCDを聴く楽しみが最高潮に達していきます。
ブレンデルのピアノの音がなんともいえず美しいと思いました。明るく硬質な木の肌触りと申しましょうか。変な表現ですが…(笑)。的確な輝かしい技巧の元に紡ぎ出される四つの変奏曲の世界は、一つのまとまったコンセプトとしてのブレンデルの作品となっているようです。一つ一つを聴くのもいいのですが、まとめて聴いてみて大変味わい深いCDだと思いました。
【録音について】
素晴らしい録音です。会場のSnape Moltingsは、かつての醸造所を演奏会場として使っているところのようですね。美しいピアノの響きが聴かれました。
【まとめ】
モーツァルトで導入して変奏曲の世界に入り、ロマン派の変奏曲の歴史をたどる旅。ブレンデルによる素晴らしい演奏と演出でした。
購入:2023/06/22、鑑賞:2023/07/23