~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど -18ページ目

~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

最近リリースされた新譜から ㉜

今週の新譜は、R.シュトラウスの名曲「4つの最後の歌」の新譜がありましたので、購入してみました。名盤のひしめくこの曲の最新録音という訳ですが、LPも同時発売ということで、ちょっと気合が入っているかもしれません。じっくり聴いてみたいと思います。

【CDについて】

作曲:R.シュトラウス

曲名:①4つの最後の歌 (20:07)

   ②4つの最後の歌(ピアノ伴奏) (24:01)

演奏:グリゴリアン(s)、フランク指揮 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

   ヒンターホイザー(p)

録音:2022年6月 パリ Auditorium de Redio France①

   2023年5月 ミュンヘン Herkulessaal②

CD:ALPHA 1046(レーベル:ALPHA)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

R.シュトラウスによる最後の作品という意味をもって出版された歌曲集。実際は、更に最後の作品「あおい」の存在が知られていましたが、これは長らく封印されたままでした。いずれにしても、この作品が晩年に死を意識して作曲されたという事については変わりがない事と思います。R.シュトラウスは、その晩年にアイヒェンドルフの詩「夕映えの中で」のこれから死を迎えようとする内容に感じるところがあって曲をつけ、さらにハイネの詩から3曲を選んで作曲しました。そしてR.シュトラウスの死後、これらの4曲がまとめられて、曲集の名前をつけ、曲順が変更されて出版されました。作曲されたのはR.シュトラウスの死の前年である1948年で、初演は1950年にフラグスタートとフルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管弦楽団によるものでした。ピアノ版は作曲者の死後の編曲によるものです。

 

曲の順序としては、①「春」、暗い谷間で春を待つ詩人の歌で、最初は曲の名前からするととても暗く始まりますが、徐々に明るくなっていきます。②「九月」、夏の名残から秋が深まり夏は消え入るように途絶えていきます。明るさの名残を残す曲がだんだん落ちついていきます。③「眠りにつくとき」、一日の疲れから体の活動が停止を望み、そして眠りの世界に入って精神が解放されます。眠りに入るところに間奏が入り、美しいヴァイオリンのソロが聴かれます。④「夕映えの中で」、苦しみと喜びに満ちた人生の終わりに、夕映えの包まれて静かに死を迎える情景が歌われます。人生の起伏を4つの詩の中で歌い上げた形の、とても叙情的な作品でした。

 

【演奏について】

このCDでは、ソプラノ歌手のグリゴリアンによって、管弦楽版とピアノ版で4曲づつ歌われています。グリゴリアンは、アルメニア人のテノール歌手を父に、リトアニア人のソプラノ歌手をもつ、まさに生まれながらの歌手で、オペラを中心にキャリアを積み、数々のタイトルロールを演じてきました。主な役柄として、マクベス夫人、ヴィオレッタ、サロメ、マリー(ヴォツェック)などを演じており、十分にドラマティコな役柄を演じきっていることが伺えます。2022年に来日した折も、東京交響楽団と演奏会形式のサロメで、サロメ役を演じていたようです。

 

昨日聴いていたバーバラ・ボニーとは打って変わった強い声質で歌われていきます。この落差は大きいですね。この曲の数ある演奏の中では、どうでしょう…。ヤノヴィッツとノーマンの中間くらい??難しいですか…。情緒面ではすこしだけ、あっさりした感じもしますが、十分にインパクトの強い演奏だと思いました。また、管弦楽版とピアノ版の両方が収められているのは面白い試みで、最初に聴いた時はあまり判らなかったのですが、ピアノ版は演奏時間が4分伸びているのですね。2割増しです。管弦楽版は、オーケストラの演奏がとても雄弁で美しい伴奏でした。特に「九月」はR.シュトラウスの華やかな管弦楽が聴かれると思いますし、曲の情緒をオーケストラもかなりの部分を表現していたと思います。対してピアノ版は、大変ピュアな音楽になり、静かなピアノと歌唱自体の感情の起伏で全てを表現する形になっていると思いました。このCDの最後はピアノ版の「夕映えの中で」で終わりますが、最後のピアノが静かな静寂の中に消え行くようで、深い余韻を残し、しばらくはその場から動けなくなるような雰囲気でした。非常に印象深いCDだと思いました。

 

グリゴリアンによる2023年のライヴ演奏。オーケストラは、パッパーノ指揮、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団

 

この録音の公式PV。録音風景やグリゴリアンのコメントなど

 

【録音について】

歌も、オーケストラもピアノも申し分ない、素晴らしい録音です。

 

【まとめ】

管弦楽版とピアノ版を並べて演奏するという試み。同じように歌って、曲の感じが変わるということかと思ったらさにあらず。そういった表面的な事では無くて、演奏表現への取り組み自体を変えて、その特徴を最大限表現しているということのようです。これは、素晴らしい取り組みだと思いました。大変面白いCDでした。

 

購入:2024/02/09、鑑賞:2024/02/22

【CDについて】
作曲:シューベルト

曲名:アヴェ・マリア(エレンの歌第3番)D839 (6:17)
   ガニュメート D544 (4:16)
   ミニョンの歌(ごぞんじですか、レモンの花咲く国)D321 (4:25)
   ミニョンの歌(語らずともよい、黙っているがよい)D877-2 (3:54)
   ミニョンの歌(もうしばらくこのままの姿に)D877-3 (3:24)
   ミニョンの歌(ただ憧れを知るひとだけが)D877-4 (3:23)
   変貌自在な恋する男 D558 (1:58)
   野ばら D257 (1:51)

   恋人のそばに D162 (3:40)

   ます D550 (2:17)

   水の上で歌う D774 (3:39)
   夕映えのなかで D799 (4:01)
   聴け聴け、ひばり(セレナード)D889 (4:18)
   きみは憩い D776 (4:23)
   糸を紡ぐグレートヒェン D118 (4:11)
   グレートヒェンの祈り D564 (4:06)
   岩の上の羊飼い D965* (11:36)

演奏:ボニー(s)、パーソンズ(p)、カム(cl)*
録音:1994年4月 ベルリン TELDEC Studio

CD:WPCS-21241(レーベル:TELDEC、販売:ワーナーミュージック・ジャパン)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

すべてがシューベルトの歌曲集というCDは初登場です(笑)。いままで、いくつかの曲は登場していました。何と言っても歌曲王シューベルトですので、美しい曲ばかり。ドイツリートを確立したというシューベルトの作品群ですが、このCDにもある、「糸を紡ぐグレートヒェン」の作曲された1814年10月19日は、ドイツ・リート誕生の日とも言われているとのこと。また、最後の「岩の上の羊飼い」は1828年10月作曲で、それは死の一か月前のことでした。白鳥の歌の「鳩の便り」とともに、シューベルトの最後の作品ではないかと言われており、伴奏にクラリネットを含む曲になっています。選りすぐりの歌曲集という感じです。

 

【演奏について】

バーバラ・ボニーの歌うシューベルトです。最初は、アヴェ・マリアで始まります。ちなみにですが、このアヴェ・マリアという曲は、宗教曲ではないのですね。歌詞の内容に、苦境においての聖母マリアへの祈りが多く含まれるということでした。さて、冒頭からボニーの透明感のある美しく、また明晰な声でアヴェ・マリアが歌われます。惚れ惚れする声で、一気にシューベルトのリートの世界に持っていかれます。素晴らしい構成です。

 

このCDに含まれるリートで、このブログを書き始めてから聴いたのは、その「アヴェ・マリア」や「ます」などですが、さすがに有名曲のCDですので、あまりリートを聴かない私でも、大部分の曲を聴いたことがありました。その中でも、最近も聴いていい曲だなと思っていた「水の上で歌う」。バーバラ・ボニーさんの輝かしい歌声で聴いて、ますます好きになりました。ということで、YouTubeから2つ貼り付けておきたいと思います。

 

アメリングさんの歌唱。透明感のある声はボニーに似た感じもしますね。

リストによるトランスクリプションをユジャ・ワンが演奏しています。

 

このCDで、もう一曲とても気に入ったのは、最後の「岩の上の羊飼い」です。10分超と、もはやリートの枠を超える曲ではありますが、シューベルトがその生の最後に書いた曲の一つ。そんな辞世の曲は、静かなピアノを、憂いのあるクラリネットがサポートしながら伴奏が展開します。ソプラノとクラリネットとピアノが競演する10分間。シューベルトの最晩年の音楽に、じっくりと耳を澄ませました。

 

バーバラ・ボニー、アンドレ・ワッツ、デイヴィッド・シフリンというオールスターの競演で演奏されたライヴの映像です。

 

【録音について】

バーバラ・ボニーの美しい声がよく捉えられていると思います。

 

【まとめ】

シューベルトのリートの世界を一望する素晴らしいCDでした。感動的な演奏だったと思います。こういった名曲集を聴くと、同じ曲を何度も聴くことにはなりますが、名曲は何度も聴いて、でも含まれている曲が微妙に特徴があったりする、というのも楽しみだと思います。

そして、これを機に、貼り付けた動画のような、スターたちの饗宴を聴くことができたのも楽しかったと思いました。さすが歌曲王です。

 

購入:2023/07/29、鑑賞:2024/02/21

 

いままでのシューベルトの歌曲が入った記事のリンクです

 

 

 

3月はシベリウスの交響曲を聴いてみましょう ①

シベリウスの交響曲は第2番以外はあまり聴いていませんでした。かつてはひと通り聴いてはみたこともあるのですが、きっと頻繁に聴くほどには惹かれなかったのですね。そんなシベリウスの交響曲なのですが、時折CDを買ったりします。ところが、ファーストチョイスで聴かないものですから、たまってしまったのです。ということで、ひと月分は余りある在庫になっているので、再び聴いてみることにしました。きっと新しい世界が開けるでしょう。第2番は外しますので、3月のブログ初登場曲を聴くというテーマとも合致します(笑)。

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ㉔

【CDについて】

作曲:シベリウス

曲名:交響曲第1番ホ短調 op39 (40:23)

   交響曲第7番ハ長調 op105 (25:54)

演奏:マゼール指揮 ピッツバーグ交響楽団

録音:1992年5月2日(第1番),1991年9月16日(第7番) ピッツバーグ ハインツ・ホール

CD:SRCR 9132(レーベル:SONY Classical、発売:SONY Records)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

交響曲第1番

シベリウスは、当時クレルヴォ交響曲はすでに作曲していましたが、それはフィンランドの叙事詩に基づくカンタータ的な作品で、純器楽の交響曲は作曲していませんでした。この第1番は、両端楽章の間に緩徐楽章とスケルツォを挟む形態は、伝統的な交響曲の形式ですが、個々の楽章は交響詩あるいは幻想曲といった、自由度の高い楽曲を思わせるものです。作曲の動機は、ベルリオーズの幻想交響曲を聴いたこととも言われています。チャイコフスキーの影響が大きいと言われたりしますが、部分的には解らなくもないですが、管弦楽のイメージからはやはり独自のものですよね。

交響曲第7番

シベリウスの最後の交響曲で、着想は第5番、第6番と同時期のようです。単一楽章の交響曲で、その中に一般的な交響曲の要素を包含させたような形になっています。交響詩のようでもありますが、標題性がある訳ではないので、中身が詰まった一楽章の交響曲という位置づけですね。大変独創的な構成の曲で、波のように動くテンポから陰影が浮かび上がってきます。シベリウス自身は、この後作曲から遠ざかってしまいますので、シベリウスの到達点であったということになるのでしょう。

 

【演奏についての感想】

私にとっては、シベリウスの交響曲で初めて聴いた作品でした。確か、バルビローリの演奏であったか、と思います。それ以降はご無沙汰で、廉価版を買っていた時代にあっては、あまり廉価版のシリーズに入ってこない曲でもありました。記憶にあるのは、オッコ・カムのDG盤くらいでしょうか。

 

冒頭のクラリネットのモノローグ。イントロだけだと、ゴッドファーザーPartⅡのテーマを思い出してしまいました。この演奏を聴いた第一印象としては、全体的にくすんだ感じの音と雰囲気だ思いました。これがシベリウスの音かもしれないと…。ただ、実際はこの曲の細かなパーツを美しく磨き込んで演奏したような感じがして、結果としてこういった印象を持ったのだと思いました。もちろん時々盛り上がりますが、演奏自体は抑制的では?と思います。もっと華々しい演奏や、もっと気持ちを込めて歌う演奏はあると思います。しかし、この演奏は華々しくはならず、歌って繋いでいくという風でもなく、小さな丁寧にパーツを磨き上げていった感じで、それでいて、シベリウスの味わい深い世界が構築されていると思いました。

 

緩徐楽章の美しい第二楽章、スケルツォの第三楽章を経て、曲も終盤。最後は聴きなれた第2番を思わせる盛り上がりに入っていきますが、コーダにしても連続性というよりは、パーツの積み重ねを思いました。形式感が薄くて、幻想曲風という事かもしれませんが、交響詩とはまた違った、観念的な雰囲気を持っている曲だと思いました。マゼールの演奏は最後まで尖らず、細部を細かく美しく表現した感じがします。マゼールにとってのシベリウスの表現ということで一貫しているのだと思います。

 

第7番は、通常22分くらいというところですが、マゼールはその2割増で、26分かけています。これは相当にゆっくりしたテンポということになるでしょう。ゆったりと波のように動く旋律とテンポを、じっくりと表現していくことによって、細部まで克明に演奏し尽くしているという感じでしょうか。普通に聴く第7番とは随分感触が違うと思います。それでも出てきた音楽はとても自然で、深く移ろう様にも思える情緒が広がっていくものになっています。

 

【録音に関して】

細部までよく捉えられた素晴らしい録音で、全体的な雰囲気もいいと思います。

 

【まとめ】

マゼールと言えば、ちょっと突飛な演奏をするイメージもありますが、この演奏を聴くと、その曲によっての自分の考える音楽を手を尽くして表現する、稀有な表現者だと思いました。あと、第2番やヴァイオリン協奏曲以外のシベリウスを久しぶりに聴きましたが、なんとなく懐かしい感じがして、楽しくなりました。

 

購入:不明、鑑賞:2024/02/20

 

とりあえずシベリウスで書いた記事を少しリンクしておきます。

 

 

 

【CDについて】
①作曲:チマローザ

 曲名:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調 (16:45)

②作曲:フランツ・ドップラー

 曲名:2本のフルートのための協奏曲ニ短調 (17:36)

③作曲:ヴィオッティ

 曲名:2本のフルートのための協奏曲イ長調 (17:08)

④作曲:ドゥヴィエンヌ

 曲名:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調 op76 (18:42)

演奏:ランパル(fl)、クレメンティーネ・シモーネ(fl)①、アドルジャン(fl)②、

   ウィルソン(fl)③④

   シモーネ指揮 イ・ソリスティ・ヴェネティ①③④、

   モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団②

録音:1970年代前半

CD:WPCS-4086(レーベル:ERATO、販売:ワーナーミュージック・ジャパン)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

さすがに、あまり聴かない作曲家たちであり曲たちですので、すべて初登場です。でも、すごく面白そうなので、じっくり聴いてみたいと思いました。個別の曲に関しては、聴きながらということで…。

 

【演奏について】

チマローザ:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調

チマローザは、ロッシーニ以前のイタリアのオペラの作曲家ということで、知られているのではないかと思います。イタリアのみならずロシアやウィーンの宮廷楽長として活躍されたとのことです。年代的には、ハイドンやモーツァルトと時代が被りますね。この曲はチマローザのウィーン時代に、エステルハージ家の一人が大使としてナポリ宮廷を訪れたことを祝して作曲されたとのことです。

 

曲は、感触はハイドンやモーツァルトの古典派時代の曲そのもののイメージでした。その上とても華麗な曲で、フルートが終始旋律を奏でています。フルートですから曲調そのものが明るいですし、イタリア・オペラの作曲家ですから、尚更ですね。ランパルの名技が聴かれるのと、先日四季でも聴いて素晴らしかった、シモーネのイ・ソリスティ・ヴェネティによる、明晰で明るい響きがとても印象的でした。

 

ドップラー:2本のフルートのための協奏曲ニ短調

フランツ・ドップラーは弟のカールとともに、フルートのデュオとして活躍、また作曲家・指揮者としても活躍しました。オペラの分野に多くの作品を残していますが、フルート曲では、「ハンガリー田園幻想曲」が有名です。また、兄弟での演奏のためにフルート・デュオの曲も残しており、これもその一つと思います。年代的にはロマン派の中期から後期にかけての時代に活躍しています。

 

さて、この曲はいかにもロマン派風の作品でした。オーケストラの音も分厚くて、この曲だけモンテカルロ国立歌劇場管弦楽団の演奏になっています。前奏は、いかにもロマン派のピアノ協奏曲が始まりそうな雰囲気ですが、現れるのは単旋律のフルート2本。さすがに畳みかけるように響く大オーケストラが濃厚なメロディを奏でる前では、少々分が悪いのではと思いましたが、フルート2本で大オーケストラと対等に渡り合って第一楽章が終わります。

第二楽章はオーケストラが伴奏に回り、フルートの優美な旋律の独壇場になり、第三楽章はうまく絡み合って、後半にはフルート2本による、素晴らしいカデンツァが用意されていました。いかにも、ロマン派を思わせる協奏曲で、素晴らしい作品でした。演奏機会は少ないかもしれませんが、これは演奏効果も抜群な曲と思うので、機会あればいろいろな演奏で聴いてみたいと思いました。きっと名手の技も映えると思います。

 

ガロワの吹き振りによる演奏。ガロワはランパルからも教えを受けています。オーケストラはブルガリア国立放送響です。

 

ヴィオッティ:2本のフルートのための協奏曲イ長調

ヴィオッティはハイドンやモーツァルトと活躍期間の重なる名ヴァイオリニストで、亡くなったのは、ベートーヴェンの死の3年前ですから、古典派の時代の名曲を演奏し続けた音楽家かもしれません。チマローザと同じくイタリア出身ですが、チマローザがロシアからウィーンで活躍したのとは対照的に、ヴィオッティはパリとロンドンが活動の拠点でした。たくさんのヴァイオリン協奏曲などを残しています。

 

この曲は、古典派の様式を持つ協奏曲ですが、曲調がとても明るく輝かしいものでした。同時代のハイドンのイメージと比較しても、華やかに感じるのは、フルートという特性や、ヴァイオリニストであるヴィオッティの独奏旋律の重視などが影響しているのでしょうか。活躍した土地柄などにもよるかも知れません。豊かな旋律を聴くことができる協奏曲です。ブラームスの愛したと言われるヴァイオリン協奏曲第22番なども、是非聴いてみたいと思いました。

 

ドゥヴィエンヌ:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調

いよいよ最後は真打というところでしょうか。フランス出身でフルートの演奏家でもあったドゥヴィエンヌは、モーツァルトと同世代の音楽家で、作風からフランスのモーツァルトとも呼ばれたようです。作品は器楽曲分野ではほとんどが管楽器のために書かれているようですが、オペラでも成功を収めています。では、聴いてみましょう。

 

なるほど、さすがにフルートの名手が作曲したフルートの曲だけあって、このフルートのデュオは華やかで美しいものでした。和音が分散されているのがよく目立って、装飾が華やかに感じます。古典派といっても、イタリアの二人の作曲家は比較的旋律が目立ちましたが、こちらは優雅で、かつ、いろいろなパーツが組み合わさって、響きも膨らんでいるように感じます。第二楽章は変奏曲で、オーケストラが序奏と終曲、そして各主題と変奏の間の接続部分で合奏され、フルートのデュオが主題と変奏を奏でるあいだは伴奏に回るというスタイル。解りやすくて良かったです。

 

 

このCDはとても楽しめるものでした。ランパルたちのフルートが明るく華麗で、そしてオーケストラのシモーネとイ・ソリスティ・ヴェネティが、華やかで歯切れのよい明るさで、全体を盛り上げているのもとてもいい感じになっています。古典派はハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンだけではないという事が、当たり前のようにわかりましたし、大作曲家の名曲に劣らない素晴らしい曲がたくさんあることを教わりました。なかなか聴きごたえのあるCDでした。

 

【録音について】

明るく明晰ないい録音と思いますが、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団の部分は、編成が大きくなった分、ちょっとくすんでいる感じがしました。

 

【まとめ】

古典派とは、前期のC.P.E.バッハたちから、後期のベートーヴェンまでの100年程度の期間の曲ですが、たくさんの名曲が作曲され、演奏されてきた時代だということを改めて感じます。いつもロマン派以降が中心になりがちなのですが、こういう演奏を聴いてみると、もっと古典派を聴いてみたいと思いました。なかなか奥深いものがあると思いました。

 

購入:2024/02/16、鑑賞:2024/02/19

 

ここでは、エラートの名手たちに関する過去記事を、リンクしておきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

ショスタコーヴィチの時代 ㉜

先週は、弦楽四重奏曲第3番、第4番の記事をアップしましたが、今週は引き続きその弦楽合奏版です。バルシャイは5曲の弦楽四重奏曲の合奏版の編曲を行いました。前回はその中から3曲を聴きましたので、今回は残りの2曲。ちょうど、第3番と第4番になります。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ(バルシャイ編)

曲名:弦楽と木管楽器のための交響曲ヘ長調 op73a (34:29)

   室内交響曲ニ長調 op83a (26:25)

演奏:バルシャイ指揮、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団

録音:2005年 ミラノ Auditorium Verdi (ライヴ)

CD:8212(レーベル:Brilliant Classocs) 1/2CD

 

【曲と演奏について】

バルシャイの編曲版のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、とても聴きやすくて、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲への導入としても素晴らしいものだという認識がありましたが、この2曲は、弦楽四重奏曲第3番と第4番がバルシャイによってどう変貌するのかが興味の湧く処です。というもの、この2曲は以前DGから発売された、同じくバルシャイの演奏によるCDを聴いたことはありましたが、昔のことで内容はかなり忘れているのでした。

 

弦楽と木管楽器のための交響曲ヘ長調 op73a

弦楽四重奏曲第3番が、交響曲第8番や第9番の流れを汲むものとすれば、この曲の管弦楽編曲にはどうしても、「交響曲第9番」を期待してしまいます。とは言うものの、聴いてみるとやはり弦楽四重奏曲第3番なんですね。確かに、バルシャイは編曲をしているのであって、改作をしている訳ではないのでした。交響曲第9番の第一楽章の飛び跳ねるような曲調と比較すれば、やはり幾分まったりした感じになるのは否めません。

 

それはそうなんですが、実際第二楽章、第三楽章と聴き進んでいくと、悲劇性に重厚さが加わって、ショスタコーヴィチの交響曲の響きのニュアンスに近いものを感じてきます。結局最後まで聴いて、この弦楽四重奏曲第3番は、この編曲版の室内交響曲と並んで、ショスタコーヴィチの戦争交響曲の総決算であり、総集編であるという感触がますます確かなものに感じてきました。戦争中に作られた第8番の暗さは少々控えめになり、圧政は続くものの、少なくとも戦争は終わったという何某かの安堵感も見えるような気がします。戦禍への哀悼と将来への不安が消えない中で、時代は流れていきますが、ここで一つの区切りはついているものと感じました。

 

この音源から、この曲の一つの聴きどころでもある、パッサカリアの第四楽章をリンクしておきたいと思います。

 

室内交響曲ニ長調 op83a

弦楽四重奏曲第4番の管弦楽編曲版です。第4番はジダーノフ批判の自粛中の中で、ある程度は発表も見込んで書かれていると思います。この管弦楽編曲を聴くと、出だしが比較的わかりやすいメロディで、まるでプロコフィエフの第7番のように感じます。おっ、純音楽分野でも社会主義リアリズムの軍門に下ってしまったか…というところですが、その後の展開が一筋縄ではいかないのと、ユダヤのメロディを使用しているという事もあって、当時の当局の許容範囲からは大幅に外れているものになっているという事になるでしょう。

 

この編曲を聴いて感じるのは、バルシャイはいろんな楽器を導入して、かなり凝ったオーケストレーションにしているのですね。特に金管楽器の使用は、弦楽四重奏の編曲というところからすると、色彩的にもかなり手の込んだことになっていると思いました。そして、そこから出てきたのは、新しい形の小交響曲なのでした。ジダーノフ批判やスターリンの死去を経て、これから先ショスタコーヴィチの音楽も変化していくことになるのですが、これが最初ではないにしても、このあたりも一つのターニングポイントと見ることもできるのではないでしょうか。

 

さて、これからジダーノフ批判へと向かい、ショスタコーヴィチの創作は再び停滞していくこととなってしまいます。

 

購入:2023/12/27、鑑賞:2024/02/17

 

関連リンクです

 

 

 

【CDについて】
作曲:ストラヴィンスキー

曲名:バレエ音楽「ミューズを率いるアポロ」1947年改訂版 (27:31)

   弦楽のための協奏曲二調 1946年改訂版 (11:42)

   カンタータ(古いイギリスの歌詞によるカンタータ) (22:13)*

演奏:サロネン ストックホルム室内管弦楽団

   ケニー(s)*、アラー(t)*

   ロンドン・シンフォニエッタ*、ロンドン・シンフォニエッタ合唱団*
録音:1990年9月24-25日 ストックホルム Berwald Hall

   1990年4月28日 ロンドン Abbey Road Studio 1*

CD:SK46667(レーベル:SONY Classical)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

今日は、ストラヴィンスキーの新古典主義時代の3曲。すべて初登場です。というか、それ以前に私はストラヴィンスキーは三大バレエ以外はあまり聴いていませんので、協奏曲二調以外は、聴くのが初めてだったりします(笑)。いろいろ勉強しながら聴いてみましょう…。

 

ストラヴィンスキーの作風は、原始主義、新古典主義、十二音技法時代の3つに区分されるらしいのですが、この三曲は時代的には新古典主義の時代に嵌るようです。カンタータだけは、十二音技法への移行期にあるとされています。新古典主義は古典的な手法を現代の音楽に取り入れたものですが、とりわけストラヴィンスキーの場合は、バロック系への指向が強いようです。この3曲を並べると、合奏協奏曲、カンタータとバロック時代に隆盛を極めた形式ですね。個別には、演奏を聴きながら…。

 

【演奏について】

ミューズを率いるアポロ

アメリカ議会図書館からの委嘱により、少人数で30分以内という条件で作曲されました。ストラヴィンスキーはアポロを主人公とし、ミューズの中からカリオペ、ポリュムニア、テルプシコレを選んで作曲にあたり、弦楽合奏のみで、古典的なバレエ形式の進行に従い、かつ白い衣装のバレエという、いかにも新古典主義的な作品を作曲しました。聴いてみると、弦楽合奏の響きが心地よい作品ですが、音だけ聴いていると何かストイックで物足りない感じがしたので、下の動画のバレエを見てみました。そうなると音楽が活き活きと聴こえて、とてもロマンティックでした。さすがストラヴィンスキーです。こういった曲は音楽だけだとなかなか想像しきれない部分がありますね…と思いました。

ニューヨーク・シティ・バレエと、北ドイツ放送響による動画。シンプルな構成なのですが、神話の世界なので、とても耽美的なバレエだと思いました。パ・ド・ドゥはお見事。指揮はストラヴィンスキー自身ですかね…

 

協奏曲二調

ストラヴィンスキーの新古典主義時代の弦楽合奏による協奏曲です。形式的には古典的ではあり、バロック時代の合奏協奏曲がベースですが、もちろん20世紀の音楽ですので、現代的な内容でした。(旧)バーゼル室内管弦楽団の委嘱によって作曲されたことから、「バーゼル協奏曲」という愛称もあります。この曲にはジェローム・ロビンズによる「檻(The Cage)」というバレエの振付があり、侵入してくるオスを殺すメス蜂の集団のお話で、これも成功したようです。ストーリーは、女王の娘が誕生し、初めて出会ったオスを殺しますが、2番目に入って来たオスを愛してしまい、周囲の女蜂が変わってオスを痛めつけます。本能が勝った女王の娘は、そのオスにとどめを刺し、女王と共に凱歌を上げるというストーリーです。曲自体がストーリー性を持つわけではありませんが、うまく使われています。

ボリショイ・バレエによる、The Cage。いかにも昆虫という動きが印象的な、グロテスクとも思えるバレエです。

 

カンタータ

最後の曲は、「カンタータ」他のカンタータとの区別のために、「古いイギリスの歌詞によるカンタータ」とも呼ばれます。構成は、合唱-ソプラノ独唱-合唱-テノール独唱-合唱-二重唱-合唱という構成で、中心のテノール独唱が長さの半分くらいを占めています。採用された詩は、15-16世紀のもので、英語圏では有名らしいです。曲の感じは、さすがに歌声として人の声が入ると、私にとっては20世紀の曲でも角が取れて、聴きやすくなります。合唱は透明感があって美しく、古典的な構成美を持った曲でもあります。

 

さて、ここまで聴いてきたサロネンの演奏は、いくぶんソリッドな感じがする、アクセントが強めの演奏だと思いました。現代音楽的なのかもしれません。流れが気にはなりますが、音は美しくて表現されて、明快であったと思いました。一方、すでにこの年代の曲は古典に入っていますので、いろいろな演奏解釈でも聴いてみたいと思いました。

 

【録音について】

透明感もあり、また残響も美しく捉えられた素晴らしい録音であったと思います。

 

【まとめ】

めったに聴かないストラヴィンスキーの三大バレエ以外の曲をしっかりと聴いてみました。それはそれで、また魅力的であったと思います。また、同時代の他の芸術ともしっかり結びついていることも確認出来て楽しかったと思います。

ただ、この毎日初登場曲という企画は、曲には事欠きませんが、続けていくと、聴き込むのが結構きついな…と思い始めました(笑)。

 

購入:2023/12/27、鑑賞:2024/02/17

 

一応ストラヴィンスキーと言えば…ということで関連のリンクです

 

 

 

 

【CDについて】
作曲:チャイコフスキー

曲名:幻想序曲「ロミオとジュリエット」 (22:02)

   バレエ組曲「くるみ割り人形」op71a (21:38)

演奏:カラヤン ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年9月 ベルリン フィルハーモニー

CD:POCG-1178(レーベル:DG、販売:ポリドール)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

今日は、チャイコフスキーの「幻想序曲:ロミオとジュリエット」について調べつつ、鑑賞しました。この曲は、バラキレフに勧められて作曲され、こまかな構成まで具体的に助言されたとのことです。第1稿から第3稿までの改訂も行われ、その際もバラキレフからの批評に基づいていてとか…。ということで、当時は五人組が六人組になったとも言われたようですが、出来上がりはまぎれもなく、チャイコフスキーの曲ですね。

 

幻想序曲という名称を、チャイコフスキーは「テンペスト」と「ハムレット」と「ロミオとジュリエット」の3曲に使っていて、これはいずれもシェイクスピアの戯曲につけられた音楽に使われています。他の2曲については、物語を追って聴いたことはないのですが、改めてこの曲を「ロミオとジュリエット」の物語のあらすじを思い出しながら聴くと、なるほどという事になります。3つの戯曲の中でも、最も有名なストーリーなので、聴いていて曲とも結びつきやすいなと思いました。20分で体験する「ロミオとジュリエット」のお話です。

 

この曲には作品番号が当てられていないのですが、長い期間を経て改訂が行われているので、第1稿は交響曲第1番と第2番の間、最終稿は第4番と第5番の間に相当する時期になっています。つまり、今聴かれる最終稿は、チャイコフスキーの円熟の時期の管弦楽となっていることになります。さて、CDを聴いてみます。

 

【演奏について】

ロミオとジュリエット

80年代に録音された、カラヤンの名曲CDの一枚です。細かいメロディを浮き立たせるとかではないのですが、それでも良く歌われながら演奏されていきます。このあたり、カラヤンの演奏の雰囲気に共通する感じです。オーケストラはもちろんベルリン・フィルですので、素晴らしい音を出しています。そして、ラストに向けて音楽は進んでいく訳ですが、とても物語性と合致した雰囲気が出ていると思います。カラヤンの演奏は全体を大きく俯瞰して、起伏を織り込みながら、物語性を前面に出して作り上げているのではないかと思いました。その中にはチャイコフスキーが円熟の管弦楽によって、この曲に表現した「ロミオとジュリエット」の物語が、見事に表現されている訳ですね。素晴らしい表現だと思います。

 

くるみ割り人形

演奏の印象としては、ロミオとジュリエットと同じなのですが、物語性が少ない分、曲の構成から音楽を聞かせるという形になると思います。速めのテンポで小気味良く進んでいく感じです。私はこの曲は、オーマンディ、アンセルメ、そして前回聴いたデュトワといったところで体験してきたので、それらの細部まで美しく磨き抜かれた演奏とは肌合いが違うところがありますが、カラヤンも立派な演奏には違いありません。小曲の連続は個々の性格を弾き分けて楽しく演奏されています。中国の踊りのフルートがとても歌っていて、大変気に入りました。全体として聴かせ所を意識した上での、テンポよくスッキリ進む印象で、ラストも凄く盛り上がりました。

 

それでも私的には、今まで聴いてきた手前か、オーマンディやアンセルメのスタイルの方が好きではあるのですが…。

 

【録音について】

この時期のDGのカラヤンの標準的な録音と思います。

 

【まとめ】

幻想序曲「ロミオとジュリエット」については、今まであまり気にしたことは無かったのですが、調べてみるとカラヤン・ウィーンpoの旧録も含めて5種類ありました。交響曲の余白に入っていることもあるので、いつの間にか増えていたということだと思いました。改めて主役として聴いてみると、いろいろと発見があって、大変面白かったです。

 

購入:2024/02/13、鑑賞:2024/02/17

 

このブログからの関連のリンクです

 

 

 

最近リリースされた新譜から ㉛

今週の新譜は、サティを中心としたピアノ曲集です。とは言っても、通常のサティのみの曲集ではなく、ジョン・ケージ、ジェームズ・テニーといった、サティと関係のある音楽を組み合わせた作品です。サティを聴くのは随分久しぶりですが、アンニュイな雰囲気に浸ってみましょう。

【CDについて】

①ジョン・ケージ(作とされる):エリック・サティのための小石の全面 (3:37)
②サティ:グノシエンヌ 第1番 (3:02)
③ジョン・ケージ:瞑想への前奏曲 (1:20)

④サティ:ジムノペディ 第1番 (2:57)

⑤サティ:グノシエンヌ 第2番 (2:02)

⑥サティ:グノシエンヌ 第3番 (2:46)

⑦ジョン・ケージ:ア・ルーム (1:16)

⑧ジョン・ケージ:ある風景の中で (8:01)

⑨サティ:パンタグリュエルの幼年時代の夢 「組み立てられた3つの小品」より (1:14)

⑩サティ:犬のためのぶよぶよした本当の前奏曲

     1.きつい叱責 (0:39)

     2.家に一人 (0:58)

     3.お遊び (0:49)

⑪サティ:ジムノペディ 第2番 (2:41)

⑫サティ:海水浴 「スポーツと気晴らし」より (0:28)

⑬サティ:グノシエンヌ 第4番 (2:08)

⑭サティ:ブランコ 「スポーツと気晴らし」より (0:44)

⑮ジョン・ケージ:スウィンギング (0:45)

⑯サティ:ジムノペディ 第3番 (2:30)

⑰サティ:グノシエンヌ 第5番 (2:47)

⑱サティ:夜想曲 第2番 (1:48)

⑲サティ:永遠に続くタンゴ 「スポーツと気晴らし」より (2:07)

⑳ジョン・ケージ:永遠のタンゴ (1:32)
㉑サティ:グノシエンヌ 第6番 (1:50)

㉒サティ:サラバンド 第3番 (4:26)

㉓サティ:うつろな空想 (1:44)

㉔サティ:第1幕への前奏曲「天職」 「星たちの息子」より (3:37)

㉕サティ:グノシエンヌ 第7番 (2:25)

㉖ジェームズ・テニー:梨の形をした3つのページ(エリック・サティを祝して) (0:32)

㉗ジョン・ケージ:夢(Dream) (9:11)

演奏:シャマユ(p)

録音:2023年4月3-6日 コレン ミラヴァル・スタジオ

CD:5054197696442 (レーベル:ERATO)

 

【3月の選曲について】

3月になりました。このブログを始めたのが昨年の4月半ばでしたので、そろそろ1年が近づきます。という訳で、3月は最後のひと月ということで、いままで登場しなかった曲を含むCDという縛りにしましょう。全曲が初登場のCDだと、ちょっと聴くのが大変になるので、初登場曲が一つでもあればいい、ということで…。最初はサティになりました。このCD全曲初登場ではないかな??

 

【演奏について】

さて、サティですね。サティっていうと、いつもあんまり真剣に聴いていなくて、クラシックの中でも微妙な位置づけというか、ちょっと主流とは離れたイメージを持っています。とは言っても、重要な作曲家であることは当然でもあり、後期ロマン派と印象派の間にあって、その技法とか、印象派の作曲家に与えた影響は大きいと言えるのでしょう。かくいうサティ自身はというと、そんな派閥なんか関係ないといった風情の音楽なんですが…。年代的にはドビュッシーとラベルの中間の世代。ケクランに近いのですね。

 

このCDは輸入盤を注文したのですが、立派な日本語の織り込みがついていました。その中に音楽評論家の矢澤孝樹氏の詳細な解説があり、いろんなことが書かれていますが、サティの受容史のようなものが説明されていました。それによると、①啓蒙の時代(チッコリーニたちの正当な評価による全体を俯瞰する演奏)、②発見の時代(高橋悠治、高橋アキ、ジョン・ケージたちによって、新しさや前衛性が積極的に見出された)、③普及の時代(都市のBGMやヒーリングといった用途で爆発的に流行し消費された。名曲レパートリーとなった)、④再認識の時代(改めて原点に回帰し、歴史から孤絶しているように見えるサティの古典的な連続性や後進の作曲家との関係性を問い直した。いわゆるピリオドアプローチや、このアルバムのようなアプローチ)ということです。これは、かなり納得感がありました。

 

また別の個所には、ケージとの連続性の他にも、ミニマル・ミュージックやテクノ勢への連続性も挙げられています。また、このアルバムが構成的に、ピンク・フロイドの「ザ・ウォール」の系譜に繋がるとも書かれていますが、このあたりはまさに「う~む…」ということで(笑)。プログレの音楽で、サティに一番近く感じるって何でしょうね?むしろ私はテクノ系のバンドの方が近いような気がしますが?

 

ということを書きつつ、ふと頭に浮かんできたクラフトワーク。サティというより、ミニマルではありますが。

 

だいぶ、話がそれてしまいました。サティのCD、いつものように気軽に聴いています。サティもケージも融合して心地よく流れていきます。やはり、ジムノペティとグノシェンヌの曲たちが、尺も長くて情緒も深くて、全体の中で目立ちますね。それを他の小曲たちが間を取り持って埋めているような感じがしました。とても面白いアルバムでした。サティに関しては昔の街中やドラマでよく流れていた、大量消費の時代を体験していますが、いまや他の関連する曲たちの中で鑑賞する時代になりました。サティだけのCDもいいのですが、こうして聴くといろいろ目立つところが目だってきて、楽しくなりました。

 

最後に、グノシェンヌでも聴いて落ち着きましょう(笑)

 

【録音について】

素晴らしい録音です。シャマユの美しいピアノの音、申し分ないですね。

 

【まとめ】

サティを聴きつつ、いろいろな音楽に話しが飛んでしまいましたが、いろんなことを想起させるサティの音楽は素晴らしいですし、かつて異端的に見られがちだったサティの音楽はむしろ他のクラシックの音楽以上に、日常の中に入り込んでいるのではないかと感じました。

 

購入:2023/12/06、鑑賞:2024/02/16

新日本フィルハーモニー交響楽団の室内楽シリーズに行ってきました。ここのところ、マメに通っています。楽員プロデューサー編は、今日はチェロ奏者の弘田徹さんのプロデュースです。僕の周りの名手たちと題されています。室内楽シリーズはメンバーが固定されがちなので、楽員外からも賛助者に声を掛け、また普段は室内楽に登場しないパートを入れて編成したとのこと。そして、そういった編成のために、作曲家の宮本正太郎さんが編曲を担当したとのこと。こういった集まりで演奏する機会はもう無さそう、という一期一会の演奏会でした。

 

◆前半
①吉松隆:3つの白い風景 op47a
②D.マスランカ:Out of This World
③ラヴェル(宮本正太郎編):亡き王女のためのパヴァーヌ
◆後半

④ビゼー(宮本正太郎編):アルルの女 組曲第1番、第2番

 

演奏:弘田徹(vc)①②③④、野口みお(fl)①③④、高野麗音(harp)①③④、

   林田和之(sax)②③④、高橋ドレミ(p)②④、竹田勉(cb)③④、山内創一朗(perc)③④、

   宮本正太郎(cel,p)③④

2024年2月29日 すみだトリフォニーホール

 

トークは、弘田さんを中心に男性奏者が5名登場。この企画の成立の話しや、編曲の苦労話などが語られました。弘田さん流のユーモアでまず場を盛り上げます。そんな感じで和気あいあいとした雰囲気で、コンサートは開始されました。

 

最初の曲は、吉松隆作曲の「3つの白い風景」独創的な白の世界を描いた画家・富岡惣一郎の作品を所蔵するトミオカホワイト美術館の委嘱作品とのことで、東洋の白、俳句そのものと言われる富岡の作品をイメージした作品とのことで、日本の静かで白い風景が浮かんでくるような音楽でした。美しい演奏にしみじみと聴き入ります。編成はフルートとハープとチェロ。フルートとハープという組み合わせが、なかなか美しいのでした。

 

第1曲の「雪占」。この音源だと弦楽合奏が入っています。

 

2曲目はアメリカの現代作曲家マスランカによる作品。カトリック教会での神との対話の中で、時間の停止と永遠を感じるという神秘体験を描いたアイルランドのヒーニーの詩を、音楽で表現したものとのことです。アルトサックスとチェロは大部分ユニゾンで演奏され、その力強い響きから、中盤からはパート間の音の受け渡しが入り、ラストは消え入るような静けさが会場を支配しました。これもしみじみと聴き入る曲でした。

 

YouTubeに音源がありましたので、貼り付けておきます。

 

残るはお馴染みのラヴェルとビゼーです。面白いアレンジを楽しみます。ラヴェルは敢えてピアノを使わなかったとのこと。そのかわりに、チェレスタ、ハープ、マリンバなどを使い分けながら、同系の音を出している感じです。主旋律は、フルート、サックス、チェロが順番に分担していくイメージでしょうか。

 

休憩の後、後半に入ってアルルの女です。女性奏者は前半は白やカラーのドレスでしたが、全員黒いドレスに変わるという、お色直しまでありました。全員黒い服になったので、さながらミニオーケストラという雰囲気です。この編成ですと、高音域はフルートかソプラノサックス(サックスは、ソプラノ・テナー持ち替え)で、主旋律はこれに加えてチェロのソロもありという形です。なんと、8人編成でティンパニーも1台セットされています。ピアノは4手で、中間はあまり目立たないですが、最後のファランドールになると、オーケストラの分厚い伴奏をピアノが一手に引き受けて、その上を各パートが動いていく感じになりました。確かにピアノは万能なのですね…。

 

大変楽しいコンサートでした。8人編成というと、まだまだ室内楽の範疇とも言えるかもしれませんが、編曲と編成によっては、さながら室内管弦楽団という雰囲気になっていくようです。この編成のために編曲した、ワザありというところでしょうが、なかなか聴けない音楽を聞かせてもらう、稀有な体験だったと思いました。また、次回が楽しみです。

(次回はホルンの室内楽作品になっているようです)

【CDについて】

作曲:ショパン

曲名:バラード第1番ト短調 op23 (9:33)

   バラード第2番ヘ長調 op38 (7:43)

   バラード第3番変イ長調 op47 (7:26)

   バラード第4番ヘ短調 op52 (11:54)

   舟歌 嬰ヘ長調 op60 (8:54)

   幻想曲 へ短調 op49 (13:59)

演奏:ツィマーマン(p)

録音:1987年7月 ビーレフェルト

CD:F32G 20258(レーベル:DG、発売:ポリドール)

 

【曲について】

ショパンのバラード集は、手頃な長さにいろいろな内容が詰まっているので、私はショパンのピアノ曲の中でも最も聴く機会が多いような気がします。だいたいCDはこの4曲が続けて入っていて、他にスケルツォが入っていたり、舟歌などの単独の曲が入っていたりというパターンですが、バラードの4曲はいつも1番から順に聴いていくことになるので、いつの間にか4曲セットの組曲ように感じてきました。

 

【演奏について】

昔から、見慣れたジャケットのツィマーマンのCDですが、私は手にするのも聴くのも初めてです。どうやら、私はツィマーマンはバーンスタインとのブラームスの協奏曲第1番、第2番しか聴いたことが無いようです。それもきっとバーンスタイン目当てで聴いたのでしょうねぇ…。そういう意味では、ブーニンもほぼ聴いたことがないし、キーシンやポゴレリッチは後年になって少しだけですかね。

 

それは思うに、当時はアルゲリッチやポリーニの全盛時代で、まだまだホロヴィッツやルービンシュタインやリヒテルが身近だった時代。アラウやブレンデルもいましたし、アシュケナージもですね。CDの新譜は2800円していた時代です。買うものが限られる若年層だった頃は、廉価版の巨匠>新譜の新人という図式が明確に成り立っていたのでしょう。いくらショパンコンクールで優勝したからと言って、評価の固まっていない若手に対して、ホイホイ手を出そうという気にはならなかったのですね(笑)。という感覚が抜けないまま、この世代のピアニストをほとんど聴かないまま来てしまったようです。

 

そういえば、ブーニンは東京に住んでますし、ツィマーマンは東京に家を持っていている?ようですが、この世代の二人は、1990年代前半の東京の雰囲気に出会っているのでしょうか。当時はTOKIOは活気のある魅力的な街だったと思ったりします。ただ、これはこっちが歳をとって懐かしんでいるだけのことで、現実の東京はそれほど変わっている訳ではないですが…。と話が長くなりましたが、CDを聴いてみます。

 

バラードの第1番。美しいニュアンスをつけて、輝かしい音で演奏されています。技巧的な印象は表に出ず、情緒あふれる美しい演奏が溢れていますね。ちょっと第1番だけまず聴いてみるか…と思って聴き始めたら、思わず最後まで聴いてしまいました。曲に合わせて、それぞれの魅力が引き立つような演奏をされていると思いました。第4番も素晴らしいです。そんな感じで、とても魅了される演奏でした。まさに天上の音楽のようです。

 

【録音について】

問題ない録音とは思いますが、完璧でもないと思うので、ツィマーマンはもっと究極の録音を目指したかったのではないか?と思ったりしました。

 

【まとめ】

ツィマーマンは、最近ピアニストとしての引退宣言をされたようです。今後どうなるかというところですが、せめて残された遺産は楽しんでいきたいと思います。最近のシューベルトD960はまだ聴いていないので、是非聴いてみたいと思います。

 

購入:2023/12/08、鑑賞:2024/02/14

 

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