【新譜】R.シュトラウス:4つの最後の歌 グリゴリアン フランク フランス放送po (2022) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

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学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

最近リリースされた新譜から ㉜

今週の新譜は、R.シュトラウスの名曲「4つの最後の歌」の新譜がありましたので、購入してみました。名盤のひしめくこの曲の最新録音という訳ですが、LPも同時発売ということで、ちょっと気合が入っているかもしれません。じっくり聴いてみたいと思います。

【CDについて】

作曲:R.シュトラウス

曲名:①4つの最後の歌 (20:07)

   ②4つの最後の歌(ピアノ伴奏) (24:01)

演奏:グリゴリアン(s)、フランク指揮 フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

   ヒンターホイザー(p)

録音:2022年6月 パリ Auditorium de Redio France①

   2023年5月 ミュンヘン Herkulessaal②

CD:ALPHA 1046(レーベル:ALPHA)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

R.シュトラウスによる最後の作品という意味をもって出版された歌曲集。実際は、更に最後の作品「あおい」の存在が知られていましたが、これは長らく封印されたままでした。いずれにしても、この作品が晩年に死を意識して作曲されたという事については変わりがない事と思います。R.シュトラウスは、その晩年にアイヒェンドルフの詩「夕映えの中で」のこれから死を迎えようとする内容に感じるところがあって曲をつけ、さらにハイネの詩から3曲を選んで作曲しました。そしてR.シュトラウスの死後、これらの4曲がまとめられて、曲集の名前をつけ、曲順が変更されて出版されました。作曲されたのはR.シュトラウスの死の前年である1948年で、初演は1950年にフラグスタートとフルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管弦楽団によるものでした。ピアノ版は作曲者の死後の編曲によるものです。

 

曲の順序としては、①「春」、暗い谷間で春を待つ詩人の歌で、最初は曲の名前からするととても暗く始まりますが、徐々に明るくなっていきます。②「九月」、夏の名残から秋が深まり夏は消え入るように途絶えていきます。明るさの名残を残す曲がだんだん落ちついていきます。③「眠りにつくとき」、一日の疲れから体の活動が停止を望み、そして眠りの世界に入って精神が解放されます。眠りに入るところに間奏が入り、美しいヴァイオリンのソロが聴かれます。④「夕映えの中で」、苦しみと喜びに満ちた人生の終わりに、夕映えの包まれて静かに死を迎える情景が歌われます。人生の起伏を4つの詩の中で歌い上げた形の、とても叙情的な作品でした。

 

【演奏について】

このCDでは、ソプラノ歌手のグリゴリアンによって、管弦楽版とピアノ版で4曲づつ歌われています。グリゴリアンは、アルメニア人のテノール歌手を父に、リトアニア人のソプラノ歌手をもつ、まさに生まれながらの歌手で、オペラを中心にキャリアを積み、数々のタイトルロールを演じてきました。主な役柄として、マクベス夫人、ヴィオレッタ、サロメ、マリー(ヴォツェック)などを演じており、十分にドラマティコな役柄を演じきっていることが伺えます。2022年に来日した折も、東京交響楽団と演奏会形式のサロメで、サロメ役を演じていたようです。

 

昨日聴いていたバーバラ・ボニーとは打って変わった強い声質で歌われていきます。この落差は大きいですね。この曲の数ある演奏の中では、どうでしょう…。ヤノヴィッツとノーマンの中間くらい??難しいですか…。情緒面ではすこしだけ、あっさりした感じもしますが、十分にインパクトの強い演奏だと思いました。また、管弦楽版とピアノ版の両方が収められているのは面白い試みで、最初に聴いた時はあまり判らなかったのですが、ピアノ版は演奏時間が4分伸びているのですね。2割増しです。管弦楽版は、オーケストラの演奏がとても雄弁で美しい伴奏でした。特に「九月」はR.シュトラウスの華やかな管弦楽が聴かれると思いますし、曲の情緒をオーケストラもかなりの部分を表現していたと思います。対してピアノ版は、大変ピュアな音楽になり、静かなピアノと歌唱自体の感情の起伏で全てを表現する形になっていると思いました。このCDの最後はピアノ版の「夕映えの中で」で終わりますが、最後のピアノが静かな静寂の中に消え行くようで、深い余韻を残し、しばらくはその場から動けなくなるような雰囲気でした。非常に印象深いCDだと思いました。

 

グリゴリアンによる2023年のライヴ演奏。オーケストラは、パッパーノ指揮、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団

 

この録音の公式PV。録音風景やグリゴリアンのコメントなど

 

【録音について】

歌も、オーケストラもピアノも申し分ない、素晴らしい録音です。

 

【まとめ】

管弦楽版とピアノ版を並べて演奏するという試み。同じように歌って、曲の感じが変わるということかと思ったらさにあらず。そういった表面的な事では無くて、演奏表現への取り組み自体を変えて、その特徴を最大限表現しているということのようです。これは、素晴らしい取り組みだと思いました。大変面白いCDでした。

 

購入:2024/02/09、鑑賞:2024/02/22