【新譜】シャマユ:レター(ズ)・トゥ・エリック・サティ (2023) | クラシックCD 感想をひとこと

クラシックCD 感想をひとこと

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。
一言二言で印象を書き留めておきたい。
長い文章だと、書くことが主になってしまう。
その時の印象を大切に。

最近リリースされた新譜から ㉛

今週の新譜は、サティを中心としたピアノ曲集です。とは言っても、通常のサティのみの曲集ではなく、ジョン・ケージ、ジェームズ・テニーといった、サティと関係のある音楽を組み合わせた作品です。サティを聴くのは随分久しぶりですが、アンニュイな雰囲気に浸ってみましょう。

【CDについて】

①ジョン・ケージ(作とされる):エリック・サティのための小石の全面 (3:37)
②サティ:グノシエンヌ 第1番 (3:02)
③ジョン・ケージ:瞑想への前奏曲 (1:20)

④サティ:ジムノペディ 第1番 (2:57)

⑤サティ:グノシエンヌ 第2番 (2:02)

⑥サティ:グノシエンヌ 第3番 (2:46)

⑦ジョン・ケージ:ア・ルーム (1:16)

⑧ジョン・ケージ:ある風景の中で (8:01)

⑨サティ:パンタグリュエルの幼年時代の夢 「組み立てられた3つの小品」より (1:14)

⑩サティ:犬のためのぶよぶよした本当の前奏曲

     1.きつい叱責 (0:39)

     2.家に一人 (0:58)

     3.お遊び (0:49)

⑪サティ:ジムノペディ 第2番 (2:41)

⑫サティ:海水浴 「スポーツと気晴らし」より (0:28)

⑬サティ:グノシエンヌ 第4番 (2:08)

⑭サティ:ブランコ 「スポーツと気晴らし」より (0:44)

⑮ジョン・ケージ:スウィンギング (0:45)

⑯サティ:ジムノペディ 第3番 (2:30)

⑰サティ:グノシエンヌ 第5番 (2:47)

⑱サティ:夜想曲 第2番 (1:48)

⑲サティ:永遠に続くタンゴ 「スポーツと気晴らし」より (2:07)

⑳ジョン・ケージ:永遠のタンゴ (1:32)
㉑サティ:グノシエンヌ 第6番 (1:50)

㉒サティ:サラバンド 第3番 (4:26)

㉓サティ:うつろな空想 (1:44)

㉔サティ:第1幕への前奏曲「天職」 「星たちの息子」より (3:37)

㉕サティ:グノシエンヌ 第7番 (2:25)

㉖ジェームズ・テニー:梨の形をした3つのページ(エリック・サティを祝して) (0:32)

㉗ジョン・ケージ:夢(Dream) (9:11)

演奏:シャマユ(p)

録音:2023年4月3-6日 コレン ミラヴァル・スタジオ

CD:5054197696442 (レーベル:ERATO)

 

【3月の選曲について】

3月になりました。このブログを始めたのが昨年の4月半ばでしたので、そろそろ1年が近づきます。という訳で、3月は最後のひと月ということで、いままで登場しなかった曲を含むCDという縛りにしましょう。全曲が初登場のCDだと、ちょっと聴くのが大変になるので、初登場曲が一つでもあればいい、ということで…。最初はサティになりました。このCD全曲初登場ではないかな??

 

【演奏について】

さて、サティですね。サティっていうと、いつもあんまり真剣に聴いていなくて、クラシックの中でも微妙な位置づけというか、ちょっと主流とは離れたイメージを持っています。とは言っても、重要な作曲家であることは当然でもあり、後期ロマン派と印象派の間にあって、その技法とか、印象派の作曲家に与えた影響は大きいと言えるのでしょう。かくいうサティ自身はというと、そんな派閥なんか関係ないといった風情の音楽なんですが…。年代的にはドビュッシーとラベルの中間の世代。ケクランに近いのですね。

 

このCDは輸入盤を注文したのですが、立派な日本語の織り込みがついていました。その中に音楽評論家の矢澤孝樹氏の詳細な解説があり、いろんなことが書かれていますが、サティの受容史のようなものが説明されていました。それによると、①啓蒙の時代(チッコリーニたちの正当な評価による全体を俯瞰する演奏)、②発見の時代(高橋悠治、高橋アキ、ジョン・ケージたちによって、新しさや前衛性が積極的に見出された)、③普及の時代(都市のBGMやヒーリングといった用途で爆発的に流行し消費された。名曲レパートリーとなった)、④再認識の時代(改めて原点に回帰し、歴史から孤絶しているように見えるサティの古典的な連続性や後進の作曲家との関係性を問い直した。いわゆるピリオドアプローチや、このアルバムのようなアプローチ)ということです。これは、かなり納得感がありました。

 

また別の個所には、ケージとの連続性の他にも、ミニマル・ミュージックやテクノ勢への連続性も挙げられています。また、このアルバムが構成的に、ピンク・フロイドの「ザ・ウォール」の系譜に繋がるとも書かれていますが、このあたりはまさに「う~む…」ということで(笑)。プログレの音楽で、サティに一番近く感じるって何でしょうね?むしろ私はテクノ系のバンドの方が近いような気がしますが?

 

ということを書きつつ、ふと頭に浮かんできたクラフトワーク。サティというより、ミニマルではありますが。

 

だいぶ、話がそれてしまいました。サティのCD、いつものように気軽に聴いています。サティもケージも融合して心地よく流れていきます。やはり、ジムノペティとグノシェンヌの曲たちが、尺も長くて情緒も深くて、全体の中で目立ちますね。それを他の小曲たちが間を取り持って埋めているような感じがしました。とても面白いアルバムでした。サティに関しては昔の街中やドラマでよく流れていた、大量消費の時代を体験していますが、いまや他の関連する曲たちの中で鑑賞する時代になりました。サティだけのCDもいいのですが、こうして聴くといろいろ目立つところが目だってきて、楽しくなりました。

 

最後に、グノシェンヌでも聴いて落ち着きましょう(笑)

 

【録音について】

素晴らしい録音です。シャマユの美しいピアノの音、申し分ないですね。

 

【まとめ】

サティを聴きつつ、いろいろな音楽に話しが飛んでしまいましたが、いろんなことを想起させるサティの音楽は素晴らしいですし、かつて異端的に見られがちだったサティの音楽はむしろ他のクラシックの音楽以上に、日常の中に入り込んでいるのではないかと感じました。

 

購入:2023/12/06、鑑賞:2024/02/16