【CDについて】
作曲:クープラン
曲名:教区のためのミサ曲 (66:10)
演奏:アラン(org)
ヴェルサイユ礼拝堂聖歌隊(指揮:エマニュエル・マンドラン)
録音:1996年9月23-28日 ポアティエ サン・ピエール大聖堂
CD:WPCS-11396 (0630-17581-2)(レーベル:ERATO)
【曲について】
クープラン一族は代々サン・ジョルヴェ教会のオルガニストを務め、大クープランもオルガニストを長らく務めたのですが、作品はクラヴサンに集中し、オルガン曲は2曲しか残していません。しかしそれは、この時代のフランスのオルガン曲の頂点をなすものとも言われています。
オルガン・ミサ曲は、17世紀から18世紀にかけてフランスで演奏されてきた作品形式です。これは、一連の短い小品(通常21-22曲)で構成され、それに合わせて、ミサの中の聖歌と交互に演奏される形になっています。形式が固定されているため、オルガニストの自由度は非常に限られており、作曲家はそれぞれのプログラムの中で才能を発揮する形になります。
【演奏について】
このCDを聴くには、まずオルガン・ミサとはいかなるものか…というお勉強から始まります。まず、オルガンの前奏から始まり、次に聖歌という形で、短いシークエンスで繰り返されます。次々と現れるオルガンの短く個性のある楽曲が、それぞれのオルガンのいろいろな部分で演奏され、美しい音楽が奏されると、キリエから始まる聖歌が深い空間を満たし、そしてオルガンがまた新しい音を展開していくという音の世界の中に没入していくという雰囲気で、ミサが展開していきます。
オルガンの音楽は、明るい曲あり、寂しげな曲あり、音色を使い分けて、それぞれのデュオやトリオという形で、楽曲が展開していきます。なるほど、そもそもオルガン音楽とはこういったものだったのですね。一人オーケストラというか、一人室内楽というか…。ちょっとだけ理解が進んだような気がします。もっともこういった音楽が「わかる」という意味では、グレゴリオ聖歌や、聖歌の数々や、ミサの形式などを知っていることが必要なのでしょうが、さすがにそこまではとてもとても…、です。雰囲気だけ楽しみます(笑)。
この手の曲をじっくり聴くのは、正直初めてではないか?と思うのですが、演奏されるオルガンによっても音色がいろいろあったりするのでしょう。ここで演奏されているのは、ポアティエの1790年頃製造されたものとのこと。違いは判りませんが、深みのあるいい音が聴けました。演奏は、マリー=クレール・アランで、いろいろな楽曲でお馴染みの方。安定したいい演奏を聴かせてくれました。オルガン曲も、またいろいろなCDを聴いてみれば、いろいろと感じるところも出てくるものだと思います。
【録音について】
雰囲気のいい素晴らしい録音だと思います。
【まとめ】
年の瀬にあって、オルガンのミサ曲を聴いてみました。なかなか良い体験です。年の瀬は教会でもいろいろなミサが行われていると思いますが、このような曲がどこかで演奏されているのではないかと思うと、ちょっと感慨深いものがありました。
購入:2023/12/07、鑑賞:2023/12/23
これが、今年最後の投稿になります。
この1年、読んでいただいた方には深く感謝申し上げます。おかげさまで、こうしてブログを書くことによって、私の方でも、多少経験値が積み重ねられ、素養も深まったのではないかと思っておりますが、大変奥深い世界ですので、これだけ聴いてもほんの少しという感じですね。また、来年も可能な限り続けていきたいと思います。
それでは、良いお年を…。