ストラヴィンスキー:ミューズを率いるアポロ 他 サロネン ストックホルム室内o (1990) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

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学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

【CDについて】
作曲:ストラヴィンスキー

曲名:バレエ音楽「ミューズを率いるアポロ」1947年改訂版 (27:31)

   弦楽のための協奏曲二調 1946年改訂版 (11:42)

   カンタータ(古いイギリスの歌詞によるカンタータ) (22:13)*

演奏:サロネン ストックホルム室内管弦楽団

   ケニー(s)*、アラー(t)*

   ロンドン・シンフォニエッタ*、ロンドン・シンフォニエッタ合唱団*
録音:1990年9月24-25日 ストックホルム Berwald Hall

   1990年4月28日 ロンドン Abbey Road Studio 1*

CD:SK46667(レーベル:SONY Classical)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

今日は、ストラヴィンスキーの新古典主義時代の3曲。すべて初登場です。というか、それ以前に私はストラヴィンスキーは三大バレエ以外はあまり聴いていませんので、協奏曲二調以外は、聴くのが初めてだったりします(笑)。いろいろ勉強しながら聴いてみましょう…。

 

ストラヴィンスキーの作風は、原始主義、新古典主義、十二音技法時代の3つに区分されるらしいのですが、この三曲は時代的には新古典主義の時代に嵌るようです。カンタータだけは、十二音技法への移行期にあるとされています。新古典主義は古典的な手法を現代の音楽に取り入れたものですが、とりわけストラヴィンスキーの場合は、バロック系への指向が強いようです。この3曲を並べると、合奏協奏曲、カンタータとバロック時代に隆盛を極めた形式ですね。個別には、演奏を聴きながら…。

 

【演奏について】

ミューズを率いるアポロ

アメリカ議会図書館からの委嘱により、少人数で30分以内という条件で作曲されました。ストラヴィンスキーはアポロを主人公とし、ミューズの中からカリオペ、ポリュムニア、テルプシコレを選んで作曲にあたり、弦楽合奏のみで、古典的なバレエ形式の進行に従い、かつ白い衣装のバレエという、いかにも新古典主義的な作品を作曲しました。聴いてみると、弦楽合奏の響きが心地よい作品ですが、音だけ聴いていると何かストイックで物足りない感じがしたので、下の動画のバレエを見てみました。そうなると音楽が活き活きと聴こえて、とてもロマンティックでした。さすがストラヴィンスキーです。こういった曲は音楽だけだとなかなか想像しきれない部分がありますね…と思いました。

ニューヨーク・シティ・バレエと、北ドイツ放送響による動画。シンプルな構成なのですが、神話の世界なので、とても耽美的なバレエだと思いました。パ・ド・ドゥはお見事。指揮はストラヴィンスキー自身ですかね…

 

協奏曲二調

ストラヴィンスキーの新古典主義時代の弦楽合奏による協奏曲です。形式的には古典的ではあり、バロック時代の合奏協奏曲がベースですが、もちろん20世紀の音楽ですので、現代的な内容でした。(旧)バーゼル室内管弦楽団の委嘱によって作曲されたことから、「バーゼル協奏曲」という愛称もあります。この曲にはジェローム・ロビンズによる「檻(The Cage)」というバレエの振付があり、侵入してくるオスを殺すメス蜂の集団のお話で、これも成功したようです。ストーリーは、女王の娘が誕生し、初めて出会ったオスを殺しますが、2番目に入って来たオスを愛してしまい、周囲の女蜂が変わってオスを痛めつけます。本能が勝った女王の娘は、そのオスにとどめを刺し、女王と共に凱歌を上げるというストーリーです。曲自体がストーリー性を持つわけではありませんが、うまく使われています。

ボリショイ・バレエによる、The Cage。いかにも昆虫という動きが印象的な、グロテスクとも思えるバレエです。

 

カンタータ

最後の曲は、「カンタータ」他のカンタータとの区別のために、「古いイギリスの歌詞によるカンタータ」とも呼ばれます。構成は、合唱-ソプラノ独唱-合唱-テノール独唱-合唱-二重唱-合唱という構成で、中心のテノール独唱が長さの半分くらいを占めています。採用された詩は、15-16世紀のもので、英語圏では有名らしいです。曲の感じは、さすがに歌声として人の声が入ると、私にとっては20世紀の曲でも角が取れて、聴きやすくなります。合唱は透明感があって美しく、古典的な構成美を持った曲でもあります。

 

さて、ここまで聴いてきたサロネンの演奏は、いくぶんソリッドな感じがする、アクセントが強めの演奏だと思いました。現代音楽的なのかもしれません。流れが気にはなりますが、音は美しくて表現されて、明快であったと思いました。一方、すでにこの年代の曲は古典に入っていますので、いろいろな演奏解釈でも聴いてみたいと思いました。

 

【録音について】

透明感もあり、また残響も美しく捉えられた素晴らしい録音であったと思います。

 

【まとめ】

めったに聴かないストラヴィンスキーの三大バレエ以外の曲をしっかりと聴いてみました。それはそれで、また魅力的であったと思います。また、同時代の他の芸術ともしっかり結びついていることも確認出来て楽しかったと思います。

ただ、この毎日初登場曲という企画は、曲には事欠きませんが、続けていくと、聴き込むのが結構きついな…と思い始めました(笑)。

 

購入:2023/12/27、鑑賞:2024/02/17

 

一応ストラヴィンスキーと言えば…ということで関連のリンクです