【CDについて】
①作曲:チマローザ
曲名:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調 (16:45)
②作曲:フランツ・ドップラー
曲名:2本のフルートのための協奏曲ニ短調 (17:36)
③作曲:ヴィオッティ
曲名:2本のフルートのための協奏曲イ長調 (17:08)
④作曲:ドゥヴィエンヌ
曲名:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調 op76 (18:42)
演奏:ランパル(fl)、クレメンティーネ・シモーネ(fl)①、アドルジャン(fl)②、
ウィルソン(fl)③④
シモーネ指揮 イ・ソリスティ・ヴェネティ①③④、
モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団②
録音:1970年代前半
CD:WPCS-4086(レーベル:ERATO、販売:ワーナーミュージック・ジャパン)
【3月のお題:今日の初登場曲は?】
さすがに、あまり聴かない作曲家たちであり曲たちですので、すべて初登場です。でも、すごく面白そうなので、じっくり聴いてみたいと思いました。個別の曲に関しては、聴きながらということで…。
【演奏について】
チマローザ:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調
チマローザは、ロッシーニ以前のイタリアのオペラの作曲家ということで、知られているのではないかと思います。イタリアのみならずロシアやウィーンの宮廷楽長として活躍されたとのことです。年代的には、ハイドンやモーツァルトと時代が被りますね。この曲はチマローザのウィーン時代に、エステルハージ家の一人が大使としてナポリ宮廷を訪れたことを祝して作曲されたとのことです。
曲は、感触はハイドンやモーツァルトの古典派時代の曲そのもののイメージでした。その上とても華麗な曲で、フルートが終始旋律を奏でています。フルートですから曲調そのものが明るいですし、イタリア・オペラの作曲家ですから、尚更ですね。ランパルの名技が聴かれるのと、先日四季でも聴いて素晴らしかった、シモーネのイ・ソリスティ・ヴェネティによる、明晰で明るい響きがとても印象的でした。
ドップラー:2本のフルートのための協奏曲ニ短調
フランツ・ドップラーは弟のカールとともに、フルートのデュオとして活躍、また作曲家・指揮者としても活躍しました。オペラの分野に多くの作品を残していますが、フルート曲では、「ハンガリー田園幻想曲」が有名です。また、兄弟での演奏のためにフルート・デュオの曲も残しており、これもその一つと思います。年代的にはロマン派の中期から後期にかけての時代に活躍しています。
さて、この曲はいかにもロマン派風の作品でした。オーケストラの音も分厚くて、この曲だけモンテカルロ国立歌劇場管弦楽団の演奏になっています。前奏は、いかにもロマン派のピアノ協奏曲が始まりそうな雰囲気ですが、現れるのは単旋律のフルート2本。さすがに畳みかけるように響く大オーケストラが濃厚なメロディを奏でる前では、少々分が悪いのではと思いましたが、フルート2本で大オーケストラと対等に渡り合って第一楽章が終わります。
第二楽章はオーケストラが伴奏に回り、フルートの優美な旋律の独壇場になり、第三楽章はうまく絡み合って、後半にはフルート2本による、素晴らしいカデンツァが用意されていました。いかにも、ロマン派を思わせる協奏曲で、素晴らしい作品でした。演奏機会は少ないかもしれませんが、これは演奏効果も抜群な曲と思うので、機会あればいろいろな演奏で聴いてみたいと思いました。きっと名手の技も映えると思います。
ガロワの吹き振りによる演奏。ガロワはランパルからも教えを受けています。オーケストラはブルガリア国立放送響です。
ヴィオッティ:2本のフルートのための協奏曲イ長調
ヴィオッティはハイドンやモーツァルトと活躍期間の重なる名ヴァイオリニストで、亡くなったのは、ベートーヴェンの死の3年前ですから、古典派の時代の名曲を演奏し続けた音楽家かもしれません。チマローザと同じくイタリア出身ですが、チマローザがロシアからウィーンで活躍したのとは対照的に、ヴィオッティはパリとロンドンが活動の拠点でした。たくさんのヴァイオリン協奏曲などを残しています。
この曲は、古典派の様式を持つ協奏曲ですが、曲調がとても明るく輝かしいものでした。同時代のハイドンのイメージと比較しても、華やかに感じるのは、フルートという特性や、ヴァイオリニストであるヴィオッティの独奏旋律の重視などが影響しているのでしょうか。活躍した土地柄などにもよるかも知れません。豊かな旋律を聴くことができる協奏曲です。ブラームスの愛したと言われるヴァイオリン協奏曲第22番なども、是非聴いてみたいと思いました。
ドゥヴィエンヌ:2本のフルートと管弦楽のための協奏交響曲ト長調
いよいよ最後は真打というところでしょうか。フランス出身でフルートの演奏家でもあったドゥヴィエンヌは、モーツァルトと同世代の音楽家で、作風からフランスのモーツァルトとも呼ばれたようです。作品は器楽曲分野ではほとんどが管楽器のために書かれているようですが、オペラでも成功を収めています。では、聴いてみましょう。
なるほど、さすがにフルートの名手が作曲したフルートの曲だけあって、このフルートのデュオは華やかで美しいものでした。和音が分散されているのがよく目立って、装飾が華やかに感じます。古典派といっても、イタリアの二人の作曲家は比較的旋律が目立ちましたが、こちらは優雅で、かつ、いろいろなパーツが組み合わさって、響きも膨らんでいるように感じます。第二楽章は変奏曲で、オーケストラが序奏と終曲、そして各主題と変奏の間の接続部分で合奏され、フルートのデュオが主題と変奏を奏でるあいだは伴奏に回るというスタイル。解りやすくて良かったです。
このCDはとても楽しめるものでした。ランパルたちのフルートが明るく華麗で、そしてオーケストラのシモーネとイ・ソリスティ・ヴェネティが、華やかで歯切れのよい明るさで、全体を盛り上げているのもとてもいい感じになっています。古典派はハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンだけではないという事が、当たり前のようにわかりましたし、大作曲家の名曲に劣らない素晴らしい曲がたくさんあることを教わりました。なかなか聴きごたえのあるCDでした。
【録音について】
明るく明晰ないい録音と思いますが、モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団の部分は、編成が大きくなった分、ちょっとくすんでいる感じがしました。
【まとめ】
古典派とは、前期のC.P.E.バッハたちから、後期のベートーヴェンまでの100年程度の期間の曲ですが、たくさんの名曲が作曲され、演奏されてきた時代だということを改めて感じます。いつもロマン派以降が中心になりがちなのですが、こういう演奏を聴いてみると、もっと古典派を聴いてみたいと思いました。なかなか奥深いものがあると思いました。
購入:2024/02/16、鑑賞:2024/02/19
ここでは、エラートの名手たちに関する過去記事を、リンクしておきたいと思います。