ショスタコーヴィチの時代 ㉕
先週は、弦楽四重奏曲第1番の記事をアップしましたが、今週は引き続きその、弦楽四重奏曲第1番の弦楽合奏版です。交響曲第14番の初演者でもあるバルシャイは、ショスタコーヴィチとの親交も深く、5曲の弦楽四重奏曲の合奏版の編曲を行いました。そして、これらは独立した曲としても大変すばらしいものになっています。今回は、2枚組に5曲収められたCDの、op49が入っている方を聴いてみます。
【CDについて】
作曲:ショスタコーヴィチ(バルシャイ編)
曲名:室内交響曲ハ長調 op49a (15:30)
室内交響曲ハ短調 op110a (21:04)
弦楽のための交響曲イ長調 op118a (26:31)
演奏:バルシャイ指揮、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団
録音:2005年 ミラノ Auditorium Verdi (ライヴ)
CD:8212(レーベル:Brilliant Classocs) 2/2CD
【曲と演奏について】
バルシャイの編曲版のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、かつては私の、いわゆるヘビロテでした。といっても、第8番と第10番のDG盤のバルシャイ指揮ヨーロッパ室内管弦楽団のもので聴いていました。今回はその後バルシャイ自身の指揮によって再録された、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団の演奏によるものです。この2枚組のCDには、バルシャイの編曲した5曲すべてが収められています。
バルシャイの弦楽合奏を中心とした編曲は、弦楽四重奏曲のややもすると先鋭的な響きになりがちで、とっつきにくいところを、角が取れて大変親しみやすくした感じで、これらの曲が、いつでも気軽に楽しめる形になっています。弦楽四重奏が内面表現で、交響曲が外向きのものとするならば、よりわかりやすい形で、内面を紹介した音楽。あるいは、これはショスタコーヴィチの音楽の純音楽的な核になる部分を、広く広めた形になったのかもしれません。そういう意味ではバルシャイはショスタコーヴィチの伝道師ではないかと思ったりします。
室内交響曲ハ長調 op49a
弦楽四重奏の響きは固めに感じますが、この演奏は冒頭からとても柔らかな響きで、4つの楽章がコンパクトにまとまった原曲の構成感もよく出ていると思います。弦楽四重奏曲よりも当然演奏するメンバーは多いのですが、音楽はよりシンプルに聴こえます。合奏だと主旋律がより目立つからですかね?この曲を聴きながら、プロコフィエフの古典交響曲を感じました。性格は違うのですが、これはある程度政治的要請によって書かれた交響曲第5番以降の、新しいショスタコーヴィチの始まりの曲なのかもしれません。大変リラックスした古典的な流れを汲んだ音楽になっています。
室内交響曲ハ短調 op110a
超名曲弦楽四重奏曲の弦楽合奏版です。私はこの編曲版で親しみつつ、原曲もそのシナジーで聴いていました。交響曲第10番以降と表裏一体というイメージもありますが、この曲についてはまた機会があると思いますので、今回はこの程度で。大変思い出深い曲で、冒頭の音が流れたとたんに、これだ!という感じになる曲なのです。ショスタコーヴィチ自身のテーマである。DEsCHが何度も何度も繰り返されます。
この音源から、最も特徴的なop110aの第2楽章をリンクします。
弦楽のための交響曲変イ長調 op118a
この曲は、原曲よりもむしろ合奏版をよく聴いていたかもしれません。この時期になると、ショスタコーヴィチの音楽は、弦楽四重奏に傾斜していくようです。この曲にはかつての重要な曲のモチーフや、重要な所で登場してきたパッサカリアなどが登場します。その時期になれば、またじっくりと聴いてみたいと思います。第8番の方は、表現や感情の噴出が圧倒的ですが、音楽的な重厚さは、こちらも負けていないというか、むしろ充実度は高いくらいかもしれません。
いよいよ、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏の世界へと本格的に入っていきます。私はどこまでついていけるのか…?
購入:2023/12/27、鑑賞:2024/01/08