加賀美アッコは赤塚不二夫先生原作のアニメ『ひみつのアッコちゃん』に登場する女の子で、鏡の国の女王様からもらった「テクマクマヤコン」という呪文を唱えれば何にでも変身できる魔法のコンパクトを持っています。これは、コンパクトの力でロボットに変身したアッコが元の人間の姿に戻れなくなってしまうという設定のアナザーストーリーです。

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『アッコちゃん、悪いけれどそれは固く口止めされてるからノーコメント』
リモコンが解除されて動けるようになったアッコは、人間に戻らずそのまますぐ猫に変身して、シッポナにもう1人のアッコの正体を尋ねましたが、シッポナににべもなく答えを拒否されました。
『口止めしてるのが誰か知れないけれど、それって私より大事な人…人とは限らないけれど…なの?メロスとセリヌンティウスのような美しい真の友情で結ばれた私より?』
『そうなのよ。シーザーとブルータスのような美しい真の友情で結ばれたアッコちゃんよりも大事なの』
『…………今、明らかにわざと言い間違えたわよね?』
『何のことかしら。それよりアッコちゃん、今回がファーストキッスだったんでしょ?どうだった?』
『シッポナあれを見てたの?見てたならどうにかして止めてよ!あれはまぎれもない性犯罪よ!本来なら大将を強制わいせつで訴えても不思議じゃないわよ!』
『まあまあ、大将もわざとやったわけじゃないんだし…外形としてはアッコちゃんの方から積極的に迫った形になるんだし…それに『アッコを元に戻せ!』なんてなかなか泣かせるセリフじゃない?ああ見えて一途で誠実だし、いっそ一緒になっちゃえば?』
『冗談でもやめて。一途で誠実なだけで男の子が恋人の条件クリアできるなら、30代以上の婚活女子が世の中にあふれてないってのよ。何ごとも最低条件ってものがあるのよ』
『でも、この間体操部の件で助けてもらった時は、ちょっとは見直したって言ってたじゃない?』
『いや、あれは…最低が下から2番目か3番目に上がったぐらいで…』
『大将といい、ピースケくんといい、命がけで尽くしてくれるイケメン男子がいっぱいいて、羨ましいわ、アッコちゃん…』
『その口先だけ羨むって言っといて全然羨んでない感じ、すごくムカつく!今度大好物の鯛の骨がお皿に残っても、絶対にあげないからね!』
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「あ、あら大将…おはよう」
「あ、アッコおはよう」
次の日、学校に行くために家の玄関を出たところですぐに大将と出くわしたアッコは、ちょっと意外に思いました。大将の家からの通学路とアッコの通学路が合流するのは本来はもっと先の地点なのです。
「ああ、昨日はいろいろと心配してくれて、ありがとうね」
「い、いや、そんなことはいいんだよ。それより、本当にいいのか、アッコ?俺なんかとつきあうことにして?」
「…………へっ?」
「と、とぼけるなよ。昨日、泥棒の家からの帰り道で言ってたじゃんか。『大将、あたしとつきあいたいんでしょ?今日のことで、あたし大将のことがすごく気にいったわ。つきあってあげてもいいわよ』って…」
「じ、冗談はやめてよ。あたしが、いつそんなことを大将に…」
と、あわてて否定しようとするアッコの脳裏に、悪戯っぽくウインクするもう1人のアッコの顔が横切りました。
(あの女のしわざに違いないわ…やられた…今度会ったらどうしてくれようかしら…)

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『それで結局大将とつきあうのを承知したってわけ?全くアッコちゃんは甘ちゃんなんだから』
とシッポナに呆れたような口調で言われて、さすがに(猫に変身した)アッコはちょっとムッとしました。
『だってこれというのも例のもう1人のアッコのしわざであって、大将に非があるわけじゃないから…これで断っちゃったらさすがに大将に悪いんじゃない?』
『それが甘ちゃんだってのよ。この間はつい気の迷いであんなこと言っちゃったけれど、よく考えたらあんたみたいなブサイク、あたしと到底釣り合わないからよすわぐらい言って、手酷く振ってやればいいのよ。水準以下のオスをあっさり切り捨てるのは、美しく生まれたメスの特権ぐらいに考えて』
『…………あたしはとてもシッポナほどそこまで人が…いや哺乳類が悪いことは考えられないわよ。まあ、これも何かの縁だし、お試し期間だと思ってちょっとつきあってみるわ。それで駄目ならまあそれまでということで…』
『まあ、アッコちゃん、ピースケくんともそれなりに上手くやってたもんね。この間のデート、楽しかったんでしょ?』
『……うん。予想以上に。ピースケくんがこっちの正体を疑って変なことをしてこなければ、最高点だっていってもいいぐらい』
『まあ、ピースケくんはああ見えて、デートプランとか堅実に立てるタイプだもんね。大将と違って』
『シッポナもやっぱりそう思う?大将は10中8,9、初回で気負って自分の身の丈に合わない変なデートプランを立てて女の子を失望させる口よね』
『だから1回目はアッコちゃんが主導権を握って、大将がカッコ悪いところを見せなくてすむデートプランを立ててあげた方がいいわよ。それとピースケくんには、大将とこういう理由でつきあうことになったって断っといた方がいいわね』
『そうよね。不本意とはいえ、二股かけることになっちゃったし…ちょっと気が重いけれど…』
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またコンパクトの力でロボットに変身して、遠隔通信でピースケにシッポナを取り返しに行った後に起こったことや大将とつきあうことになったことをあれこれ説明したアッコは、ピースケの反応が思いのほか上機嫌に見えたのでほっとしました。
「ピーッ!事情ハ理解シマシタ…トリアエズAKKO132NOサンノ大事ナ猫ガ・無事ニ戻ッテキテ本当ニ良カッタデス…モチロン私ハ・AKKO132NOニ他ノ人トデートスルナトカ・ソウイウ出過ギタコトハ言イマセン」
「ピポポポポッ!アリガトウピースケクン!…ヤッパリピースククンハ物分カリガイイシ・寛容デ助カルワ…ピキュ~ン!」
「ピーッ!マアホンノチョット気ニナルコトトイエバ…リモコンデ不本意ナ状態トハイエ…AKKO132NOサンハソノ人トキスヲシタンデスヨネ?シカモソレガファーストキス?私ヘノコノ間ノキスハ・トテモキスノウチニハ入ラナカッタト?物ノ数デハナカッタト?…フーン…イエ・大シタコトジャナインデスガ・チョット気ニナッテ…」
「ピ、ピースケクン…コッチニ送ラレテクルアナタノ画像情報…目ガ全然笑ッテナイワヨ…ヤレヤレ・チョット先ガ思イヤラレルワ…ピポポポポッ!ピキュ~ン!」

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良く晴れた日曜日の朝、学校のグラウンドを整備しながらなぜか難しい顔をしているアッコと大将。
「なあ、アッコ」
「なによ、大将?」
「今日は俺たちつきあってはじめてのデートをするはずだったよな?」
「するはずって…するのよ、ちゃんと今から。現在もデートプランは予定通り進行中よ」
「どうしてデートプランが大勢人を集めてのソフトボール大会になるんだよ?」
「それはまあ…私が大将がカッコ悪いところを見せなくてすむデートプランをいろいろ考えてたら、なぜかこうなっちゃったのよ。音楽会は大将いびきかいてすぐ寝ちゃってまわりに迷惑でしょ、美術館は大将ピカソの絵の落ちがわからないと言って美術館員を困らせたことあるでしょ、遊園地は大将絶叫マシンダメでしょ、動物園は大将ゴリラに喧嘩を売ろうとしてまわりに止められた前科があるでしょ…こういう風に駄目な選択肢をどんどん削っていったら、一緒にソフトボールをやるぐらいしか残んなかったのよ。どうせやるなら、みんな一緒の方が楽しいじゃない?」
「いや、俺もアッコが俺のために一所懸命デートプランを考えてくれたことは疑わないよ。疑わないんだけれど…でもこのプランにはデートというものに特有のドキドキ感が欠けていることは否めない」
「うん、それは確かに大将のいうことにも一理あると思う。だから…」
「だから?」
「ソフトボール大会にデートに特有のドキドキ感を上乗せしたらどうかしら。たとえば…」
「たとえば?」
「試合に見事勝ったら、私が大将のほっぺたにキスしてあげるとか」
「ほっぺた?ほっぺたじゃもの足りないな。やっぱりほっぺたじゃなくちゃんと口にキスしてほしい」
「うーん、その要求なら、せめて敵チームに5点は差をあけて勝ってほしいわね」
「わかった。それじゃあ5点差とはいわず10点差をつけたらキスということにしよう」
「いいの?さすがに大将がいくら頑張っても10点もの大差をつけて勝つのは無理なんじゃない?」
「いいさ。そのかわり…」
「そのかわり?」

「キ、キスをする時は、アッコにこのあいだみたいなレオタードを着てもらいたいんだ。それでその恰好で俺をギュッと強く抱きしめながらキスをしてほしい!」
「………………うーん、わかったわ。その要求のんだ!(ふふふ…大将は知らないけれど、敵チームには学生時代に野球部員だった佐藤先生が入っているのよね。さすがの大将も佐藤先生相手に10点差をつけて勝つのは無理でしょ!)」

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「モ、モコちゃん…き、9点差…」

「うん。なんか大将が今日は何かに取り憑かれたような大活躍で、他の選手もその勢いになんか引っ張られて、こりゃ試合終了までに15点差ぐらいいくかもね。敵チームで1番要注意だった佐藤先生は突然風邪でダウンして今日の試合には出てこられなかったし…どうしたの、アッコ?何でうちのチームの方が勝っているのに顔色悪いの?」

改造絵日記(11月10日)「機械人形化ひみつのアッコちゃん」
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『ひみつのアッコちゃん(Wikipedia)』

【今回描いた絵】