先日の投稿でアリーナ・ロペス女史の意見Ⅰを紹介しましたが、その直後、さらに充実した内容のインタビュー記事(長文!)をご自身のFBで紹介されていたので、今回も論点を整理し、構成し直して紹介します。

参照元:「オプシオン・マルキスト・インターナショナル(OMI)」によるインタビュー
2026年3月28日付
ロペス女史による『OMI』の紹介:
「左派組織OMIは、米国によるキューバ政府への制裁に反対する一方で、キューバ政府による市民への弾圧を非難し、キューバの政治犯のために声を上げてきた。彼らは多元主義、意見の多様性、表現の自由を信奉している」。
① 食料・エネルギー危機とその国内的要因
今 人々は飢えている。食料が高すぎて買えないからだけでなく、日常生活が完全に崩壊し、料理をする手段がないからだ。停電は最低でも20~22時間、それ以上に及ぶときもあれば、数日間続く地域もある。電気もガスも使えない状況下で、石炭や薪を使って料理するしかない。
現在、石炭1袋の価格は1600~2200ペソ(3.70米ドル)で推移しているが、年金や退職手当の中には3000ペソ(5.80米ドル)しか支給されない場合もある。石炭を買ってしまうと、食料や医薬品を買う余裕がなくなる。
また、手頃な価格の乳製品や肉類を入手する手段がない。養鶏場への投資が打ち切られ、閉鎖されたため、卵も手に入らない。キューバでは卵は輸入品であり、それが価格を高騰させている。卵30個入りのパックは3000ペソ(5.80米ドル)で、これは最低年金と同じ金額だ。野菜や果物はほとんど手に入らない。
人々の食事は非常に質素であり、多くの人々が栄養失調で、高齢者においては、明らかに体重が減っている。
状況が深刻化した要因として、「配給手帳」を通じて1人当たり7ポンドの米が安価で保証されていた制度が約2年前から廃止され、米が販売されなくなったことがある。人々は、食生活の基盤である米を自由市場で購入せざるを得ない。そこでは、品質にもよるが、米1ポンドが250~300ペソ(0.50米ドル)する。米1ポンドでは大家族が1日分しか食べられず、それも十分とは言えない。
キューバの耕作地の大部分は国家が所有しており、これは非生産的な巨大な独占体制となっている。
国営農業や集団化された小規模農地は、土地の大部分が不毛となり、炭を作るための棘のある寄生植物マラブで覆われるという結果をもたらした。
*砂糖産業の解体
2002年の砂糖産業の解体は致命的で、多くの人々を失業させた。キューバの経済的伝統の基盤で、国内の生産連鎖や電力増産を生み出していた同産業の解体は、国家の衰退に影響した。
さらに悪いことに、砂糖産業の解体後、サトウキビ栽培に充てられていた広大な土地は、食料生産にも転用されなかった。新たな遊休地を小規模農民に所有権として譲渡し、農地を拡大して生産に役立てる代わりに、使用権(所有権ではない)として譲渡する法律が可決された。使用権は10年間のみだったり、使用権者が耕作地内に住居を建設できないといった制約があり、そのため作物の世話や監視ができなかった。結果的に、肥沃な土地に富みながら放棄されている国に食料不足が生じている。
現在、砂糖は世界市場で非常に有利な価格となっている。もし生産を維持していれば、現在のような苦境に陥ることはなかっただろう。
*エネルギー問題
電力化は、経済の発展と日常生活にとって極めて重要だが、政府はこの基幹分野への投資を停止してしまい、資金は観光業に充てられてしまった。火力発電所は技術が陳腐化している上、硫黄分を多く含むキューバ産石油を燃焼させざるを得なかったため、酷使され、損傷を受けている。
② 新自由主義的経済政策が招いた国民の窮乏(不満)
危機の代償を個人や家族の肩に負わせるという政策は、ラウル・カストロが権力を掌握して以来、特に2008年に国務評議会および閣僚評議会の議長に任命されて以来さらに強まった。
彼の下で、社会福祉、保健、教育といった社会支出や投資が体系的に大幅に削減された。
また、ディアス=カネル政権下の2021年1月に実施された「タレア・デル・オルデナミエント(経済再建計画)」として知られる新自由主義的な一連の措置により、この傾向がさらに強まった。ハイパーインフレが起こり、物価は短期間で急騰し、賃金や年金は目に見えて減少した。
しかも、人々がキューバ・ペソで賃金を受け取るこの国で、ドル建ての店舗がオープンしたため、格差はさらに拡大した。海外から送金してくれる親族がいる人々は危機を乗り切ることができたが、ドルを受け取れない人々は貧困に陥り、その中には(大家族、子育て中のシングルマザー、高齢者、年金生活者など)極度の貧困に陥った人々もいた。
2021年7月11日の社会的な爆発的抗議行動の背景には、こうした事情がある。
10年や15年前にも貧困はあったが、相対的な尊厳を保った貧困だった。ゴミ捨て場で食べ物を探している人々、時には家族全員がそうしている姿は見られなかったし、働かされている子供たちの姿も見られなかった。
③ 高齢化と人口流出
キューバは、人口流出と低出生率により、この地域で最も高齢化が進んだ国になっている。そして高齢者は極度の貧困に苦しんでいる。国内外に住むキューバ人の支援を受けた、教会や市民の慈善団体によるプロジェクトが、極めて困窮した地域で貧困に苦しむ人々を支援しているが、それだけでは不十分だ。
総死亡率は上昇している。これはチクングニア熱の流行時に顕著で、病院の遺体安置所に遺体が山積みになった。また、乳幼児死亡率や妊産婦死亡率も上昇している。
④ 中小・零細企業
小規模事業が許可されたのは1990年代で、それ以前は、1968年の「革命大攻勢」と称する政策により、民間事業は全面的に禁止されていた。民間事業が「Mypimes(中小・零細企業)」という概念の下で認められたのは2021年のこと。
現在、民間事業者が石油を輸入することが許可されており、そのルートを通じて食料やその他の物資も流入している。米国やその他の国々から、食料、医薬品、マットレス、シーツなども配布されている。これは教会を通じて行われている。もちろん、それだけでは解決策にはならない。こうした製品がもっと大量に流入すべきだが、キューバ政府は常に外貿易の厳格な独占を維持してきた。
⑤ 観光業について
観光部門こそが、過去20年間の経済モデルにおいて、官僚機構が賭けを置いた分野だ。
そのために、保健、教育、農業、科学、産業への投資が犠牲にされた。
しかも政府は、ホテルの建設に投資しただけで、広義の観光を促進したわけではなかった。
その結果、ホテルは一年の大半が空室のままで、中には観光客不足により閉鎖を余儀なくされたものさえある。この「観光客の減少」という状況は、非常に多くの労働者を失業状態にしている。これはトランプ政権以前から続いており、政府の独断的な経済運営は衰退と深く関わっている。
⑥ GAESA(Grupo de Administración Militar SA)
人々がキューバの社会主義について語るのを聞くと笑うしかない。なぜなら、キューバの主要な経済資産は、実際には共和国監査院や国民議会の監督下にはなく、GAESAを率いる選りすぐりのグループの手にあり、彼らは何の説明責任も負っていないからだ。そして、この権力グループこそが、米国に対し経済開放を望んでおり、腐敗した政治階級を存続させているキューバの政治システムを疑問視すること以外なら、彼らはどんな手段も講じるだろう。
民主主義なき資本主義、それがキューバ政府が米国と交渉している内容だ。米国がそのような道を受け入れるかどうかは断言できないが、キューバ政府が「歴史的な敵」と呼んできた政府との対話を、キューバ国民との対話よりも優先しているという事実は、極めて象徴的だ。
参考:ジョアニ・サンチェスがGAESAについて語る動画
⑦ 米国との対話
すでにキューバ政府はトランプ政権との対話が行われていることを認めているが、公式にはほとんど語られていない。2014年にオバマ政権との和解が進み、キューバに米国大使館が開設された際、私たちはそのような話し合いが行われていることを知らないでいた。キューバ政府はこうした情報について常に非常に不透明なので、カナダで数ヶ月にわたり会談が行われていたことや、キューバ側の代表団を率いていたのがラウル・カストロの息子のアレハンドロ・カストロ・エスピンだったことを、私たちは後になって知った。
こうした理由に加え、彼らが動いている一族支配的な状況を考慮すれば、現在の協議も一族の誰かが主導しているに違いない、と私は見ている。長きにわたり、国内弾圧を担う基幹機関の一つである対諜報機関を指揮していたアレハンドロ・カストロ・エスピン本人かもしれない。
が、今回はラウル・カストロの孫、ラウル・ギジェルモ・ロドリゲス・カストロ(写真↓右)がその役割を担ったようだ。彼は、故ルイス・アルベルト・ロドリゲス・ロペス=カジェハの息子であり、ラウルの元義理の息子でもある。ルイス・アルベルトは、パナマに登記された資本主義的な株式会社として、事実上キューバ経済を支配しているGAESAの責任者だった。
ミゲル・ディアス=カネル大統領が米国との対話が行われていることを公に認めた日、それは政治局および閣僚評議会との会合の場で行われ、その後テレビで放映された。そして、ラウルの孫は、それらの機関のいずれにも役職を持っていないにもかかわらず、出席者の中に座っていた。これは、彼がその対話に関与していることを示す指標だ。

*トランプによるキューバ介入について
異議を唱える人々や抗議活動に参加する人々は、政権交代を求めていたわけではなく、深刻な問題の解決を求めていたのだが、政府は彼らに対し暴力的な弾圧を続けて来た。そして多くが拘束され投獄されてきた。こうした弾圧の結果、人びとはもはや食料や電気よりも自由を求めている。
トランプによるキューバ政府への圧力を、危機からの脱出の道として捉えている人たちもいる。
これこそが絶望の度合いを示している。
〈キューバ政府と米国の対立〉には注目するが、〈キューバ政府と無防備な市民との対立〉には決して目を向けようとしない左派の前で、自分たちが「見えない存在」となっている時に何が起きるかを如実に物語っている。
人々は、時間の中で停滞した国であるキューバにおいて、何かを変えようとする即時の可能性を、外部の、異国の存在に見出しているのだ。
だが、結局のところ、米国は自国の利益を守る限り、独裁政権を嫌がったことは一度もないという事実を、彼らは考えもせずにいる。
もしキューバ政府がトランプ政権との対話において、利益が満たされることを保証してしまうなら、私たち市民は取り残されてしまう。これは極めて大きな懸念であり、国際機関や国際世論の一部には大きな責任がある。キューバ政府は、政治的な変革を行うことなく、外国資本や投資を受け入れることだけを望んでいるが、経済分野における汚職や透明性の欠如を考えると、それが受け入れられることは明らかに難しいだろう。
⑧ 望ましい支援
キューバには国連のブルーヘルメットのような人道介入が必要だと確信している。もしキューバに専門家チームが入り、国民と国が置かれている状況を評価すれば、まるで破壊的な内戦状態にあるかのような実態を確認することになるだろう。
(私の言う内戦とは)インフラ、道路、通信網、発電設備を破壊し尽くした、長年にわたる戦争のこと。道路の大部分は破損し、通行不能な道もある。停電時には固定電話も携帯電話も機能しない。信号を中継する基地局がアンテナから電力供給を受けられず、私たちは皆、完全に孤立してしまう。
医療システムは完全に崩壊している。医師たちの並外れた努力にも関わらず、何年も前から医薬品や医療資材が不足している。重篤な病気にも、ごく軽度の病気にも薬がなく、闇市場では非常に高価で、貧しい人々は手に入れることができない。
ラウル・カストロ政権が医療分野への投資を削減してから、ほぼ18年が経ち、医療システムは崩壊してしまった。
もう一つの支援方法として、キューバで起きていることを世界に知らしめることが重要だと考える。内部からの変革が必要だ。アメリカが言うからではなく、ここに住む私たちがそれを求めているのだ。国民の声が届くことが必要。下から湧き上がる変革が必要。民主主義が必要。物事が機能することが必要。多様性と異なる考えへの尊重が必要だ。それなしでは、機能する国を作ることは不可能だ。