【タイトル】
007/美しき獲物たち(原題:A View to a Kill)
【概要】
1985年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は131分
【あらすじ】
ソ連からICチップを奪った003が遭難し、彼の遺体からジェームズ・ボンドはICチップを回収する。強力な電磁波にも耐えうるそのICチップの製造元であるゾリン産業をボンドは調査することになる。
【スタッフ】
監督はジョン・グレン
音楽はジョン・バリー
撮影はアラン・ヒューム
【キャスト】
ロジャー・ムーア(ジェームズ・ボンド)
ステイシー・サットン(タニア)
クリストファー・ウォーケン(ゾリン)
グレース・ジョーンズ(メイ・デイ)
【感想】
シリーズ14作目は3代目ロジャー・ムーアにとって最後にジェームズ・ボンドを演じる作品となった。ちなみに、本作公開時にロジャー・ムーアは57歳だったが歴代最年長である。また、シリーズ1作目からミス・マネーペニーを演じてきたロイス・マクスウェルにとっても本作が最後のシリーズ出演となった。ちなみに、シリーズ全14作品でミス・マネーペニーの合計登場時間は約60分で、合計のセリフは約200語であった。
本作は死んだ同僚が奪ったICチップをボンドが奪還する任務から始まる。にしてもムーアボンドはスキーが好きだな。ボンドがスキーで逃げていると、スリリングなインストの音楽から急に歌詞付きの80年代っぽい曲が流れ始める。ここで音楽を変えるセンスよ。すると、この曲も少し流れただけで先程の音楽に戻る。一体何がしたいのか分からん。
このICチップの製造元であるゾリン産業の屋敷へ馬のオークション参加者を装ってボンドは助手と共に訪れる。ボンドが敵の懐へ別人のふりをしてやって来るのはシリーズらしくて良いと思う。また、今までなら助手的なキャラクターは女性ばかりであったが、今回は男性であるところも新鮮である(ただ、あっさり殺されてしまうところはいつもと一緒…)。
すると、お約束の如くボンドは正体がバレて逃げようとするが捕まってしまい、殺された助手の男と共に車ごと湖に沈められてしまう。ボンドは沈みゆく車から何とか脱出し、水面越しに見えるゾリンの姿が見えなくなると水から顔を出す。あれだけ距離が離れていれば水面越しにゾリンの姿は見えないだろうに。しかも、水中で息が持たないために、ボンドは沈みゆく車のタイヤの空気を抜いてそこで酸素を確保する。ちなみに、これを後にテレビシリーズ「MythBusters」で再現しようと試みたが不可能だと結論付けられている。そういや「トランスポーター3 アンリミテッド(2008)」でも似たようなことをしてたっけ。
ボンドはボンドガールのステイシーの屋敷を訪れると、殺し屋たちと鉢合わせる。殺し屋を全員やっつけることができず、一部の殺し屋は尻尾巻いて逃げてしまう。にもかかわらず、ボンドとステイシーはその屋敷で呑気に食事をして酒まで飲んでいる。敵に居場所がバレたというのに。敵はボンドらが逃げてこの屋敷にはいないと考え逆に安全と考えたのか!?そんな訳ないか…。
その後、サンフランシスコ市庁舎へ向かった二人はゾリンらによってエレベーターに閉じ込められ、火炎瓶を投げられて火の手があちこちに回ってしまう。何とかボンドとステイシーは窮地を脱することに成功する。そして、消防車の前で立ち止まると消防員から疑惑の目を向けられてしまい、その消防員を殴って消防車を奪って逃走するという展開に発展する。
ボンドを殺さずに車を湖に沈めたのにボンドは生きていたという教訓を得ず、ゾリンは再び生きた状態でボンドをエレベーターに閉じ込めた。さすがにゾリンがアホすぎるわ。それでは足りないと思ったのか、どう考えても不要な消防車を使ったアクションシーンまで用意されている。
物語上必要なアクションシーンを構築していかないと、アクションシーンのためだけに物語がストップしてしまう。本作にはそれがあまりにも多い。だから本作も131分という上映時間になってしまうのだ。テレビ放送で枠が決まっていたら消防車のシーンなんて真っ先に丸ごとカットされるぞ。
確かにこのシリーズにアクションシーンは必須である。ファンの目当ての一つである。そのアクションシーンを物語の中にどう組み込むかは製作者側の考えなければならないところだと思う。アクションシーンでキャラクターの行動をどうするのか、使うアイテムは何なのか、どういう構図にするのか、どのキャラクターが主体的に動くのかなどなど、アクションシーンに意味を持たせることはいくらでもできる。この時代のボンド映画はそういうことをあまり気にせずやっているようだ。これも当時のある意味での流行かもしれないが、やはり古びている。
ボンドガールのキャスティングは不評を買ったのも頷ける出来だった一方で、悪役には初のオスカー俳優を起用しクリストファー・ウォーケンはその期待に応えたと思う。また、彼の愛人メイ・デイを演じたグレース・ジョーンズも強烈な印象を残した。
ムーアボンド作品も続けて短い期間で観てみたが、どの作品も体感時間は長い。上映時間が130分クラスの作品ばかりだが、そこまで見せ切るだけの物語もないし、推進力も演出もない。途中で絶対にダレる。これが当時の味と言われたらそれまでだが、やはり合わなかったな。
【関連作品】
「007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
「007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
「007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
「007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
「007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
「007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
「007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
「007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
「007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
「007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
「007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
「007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
「007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
「007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
「007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
「ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー
「サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/フランス語)
【ソフト関連】
<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>
言語
├オリジナル(英語/フランス語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ジョン・グレン(監督)、製作スタッフ、キャストによる音声解説
├ロジャー・ムーア卿(出演)による音声解説
映像特典
├MI6:機密書類保管庫
├1985年BBCレポート
├進化を続けるボンド映画
├未公開映像:サンフランシスコのカーチェイス
├蝶のショー~テスト映像
├未公開シーン集 ジョン・グレン監督のイントロ付き
├未公開アングル・シーン集
├秘密任務
├007の履歴書
├ボンド・ガール
├味方
├敵
├アクション・マニュアル
├Qの秘密兵器
├魅力的なロケ地
├任務遂行レポート
├メイキング・オブ・『美しき獲物たち』
├ドキュメンタリー:“ジェームズ・ボンドの音楽”
├ミュージック・ビデオ “007/美しき獲物たち” by デュラン・デュラン
├007プロパガンダ
├オリジナル劇場予告編集
├TVスポット集
├イメージ・データベース:1985年『美しき獲物たち』公開当時のフォト・ギャラリー
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