【タイトル】
007は二度死ぬ(原題:You Only Live Twice)
【概要】
1967年のイギリス/アメリカ/日本合作映画
上映時間は117分
【あらすじ】
アメリカの宇宙船が謎の飛行物体に捕まる事件が発生し、アメリカ政府はソ連の関与を疑うが、その謎の飛行物体が日本周辺から飛び立ったという情報を得たイギリス政府はジェームズ・ボンドを日本に派遣する。
【スタッフ】
監督はルイス・ギルバート
音楽はジョン・バリー
撮影はフレディ・ヤング
【キャスト】
ショーン・コネリー(ジェームズ・ボンド)
若林映子(アキ)
丹波哲郎(タイガー田中)
浜美枝(キッシー鈴木)
ドナルド・プレザンス(ブロフェルド)
【感想】
シリーズで初めて2年の間隔を空けて製作されたシリーズ5作目。監督はシリーズで合計3作品を監督することになるルイス・ギルバート。日本が舞台になったこともあり、丹波哲郎、若林映子、浜美枝など多くの日本人が出演した。ちなみに冒頭でボンドの相手をするリンを演じたツァイ・チンは、「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」に別役でも出演している(カジノシーンで映る中国人プレイヤー役)。
これほどタイトル負けしている映画も珍しい。冒頭でボンドは敵に撃たれて死亡して水葬まで行われるが、これは死を偽装して敵の目を欺く狙いがある。さすがにボンドが死ぬわけないので生きていることは容易に想像できる。では敵の目を欺く狙いがこの国家ぐるみの偽装でどこまで効果があったのだろうか。これに関して本作が取り組んでいるのは中盤になってボンドが生きていることを一部の敵が驚く場面があるだけである。未読のため原作での描写は分かりかねるが、少なくとも映画化された本作では冒頭の描写が生きている場面など一切ないと言っても過言ではない。
ボンドは事情を調査するため日本を訪れる。190センチ近い長身の欧米人が何の変装もせずに日本国内をうろつけば敵にあっさりバレてしまいそうだが、特に変装したり身を隠したりする気はないようだ。これも敵の目を欺くという意図がさっぱり伝わらない要因の一つになっている。というか、欧米人がアジアにこっそり潜入する物語という部分に大きな無理があったのだと思う。せめて英国人が主人公ならその主人公が潜入しても違和感のない欧米諸国を舞台にしないと「死んだふり」作戦はうまくいきそうに感じない。
そんな感じの珍作なので真面目に見る必要はないのかもしれないが、一応は日本が舞台となった本作がショーン・コネリーがボンドを演じる最後の作品となったわけだ(後に復帰するが)。丹波哲郎演じるタイガー田中がボンドを招いて風呂をともにする場面では付き添ってくれる女性たちが体を洗ってくれる。そういやこれって後に「ウルヴァリン:SAMURAI(2013)」でウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)が日本にやってきて女性たちから体を洗ってもらうシーンのオマージュもとか!?
結局、アメリカの宇宙開発を邪魔したのはソ連ではなく犯罪組織「スペクター」だったことが判明する。この作品まで基本的に敵はずっと「スペクター」だった。本作も終盤近くまで黒幕が誰かを伏せているが、当時の観客なら映画が始まってすぐに分かったはずだ。というか映画を見る前から知っていたはずだ。別に本作に謎解き要素はないにしても、最初から「スペクター」の仕業ということは分かった上で物語を進めても何の問題もなかったように思う。というか「スペクター」は何をどうしたかったのかがよく見えなかったな。
また、緊張感のなさはアクションシーンにも顕著に現れている。例えば、オートジャイロに乗ったボンドを3機ほどのヘリコプターが追いかけてくる場面。ヘリコプターから敵の銃撃を食らっても全く銃弾は当たらない一方、オートジャイロに仕掛けたミサイルは後方のヘリコプターに見事命中して撃退する。他にも飛行機の後部座席に乗ったボンドが身動きの取れない状態にしてパイロットはパラシュートを使って脱出。両手を木で固定されたボンドがなんとかその木を外して飛行機の操縦桿を握ることに成功する。ボンドが身動きの取れない状態になってから殺して飛行機から脱出すれば良いのに。こんな風にボンドを殺そうと思えば殺せる場面はいくらでもある。
そして、終盤になってボンドが「ついに」日本人になる場面。ボンドの「結婚相手」から島での不審死について知らされるのだが、誰も調べていないという呑気さ。人がひとり死んだ上にそれが不審死だったら真っ先に事情を調べるべきだろうに、このアンテナのなさで英国諜報員が務まるのだろうか。最終的には運良く最悪の事態を免れたようにしか見えない。前作に引き続き駄作と言わざるを得ない。
【関連作品】
「007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
「007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
「007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
「007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
「007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
「007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
「007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
「007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
「007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
「007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
「007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
「007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
「007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
「007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
「007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
「ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー
「サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー
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├ルイス・ギルバート(監督)、製作スタッフ、キャストによる音声解説
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├任務遂行レポート
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