【作品#0755】007/死ぬのは奴らだ(1973) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

007/死ぬのは奴らだ(原題:Live And Let Die)

【概要】

1973年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は121分

【あらすじ】

カリブのサン・モニークで英国諜報員が次々に殺害される事件が発生し、ジェームズ・ボンドはその調査のためにアメリカへ向かう。

【スタッフ】

監督はガイ・ハミルトン
音楽はジョージ・マーティン
撮影はテッド・ムーア

【キャスト】

ロジャー・ムーア(ジェームズ・ボンド)
ジェーン・シーモア(ソリテア)
ヤフェット・コットー(カナンガ)

【感想】

3代目ジェームズ・ボンドに就任したロジャー・ムーア主演による007シリーズ8作目。主題歌はポール・マッカートニーが担い、劇伴は前作までのジョン・バリーから「5人目のビートルズ」と称されたジョージ・マーティンが担った。

ロジャー・ムーアによるボンド初作品だからか、前任ショーン・コネリーより3歳年上だったロジャー・ムーアの方が若々しく見える(特に前作のショーン・コネリーと比して)。確かなハードなアクションは少なくなっている印象で、ジョークを言う雰囲気はロジャー・ムーアの方が様になっている印象だ(と言っても後の作品のジョークの数を考えると本作はかなり大人しい印象)。ちなみに、冒頭のガンバレルはボンド側から見て左側に外しているように見えるぞ。このシンプルな動きでも実はめちゃくちゃ難易度が高いのは何となく想像がつくが。

そのロジャー・ムーアによるボンドのファーストカットはボンドの部屋で女性とベッドに居る場面である。そこへドアをノックする音がしてボンドがドアを開けるとMがいる。夜中に英国諜報員の家に訪問者が来るのだからドアを開ける前に確認をするなどした方がいいんじゃないか。警戒心のかけらもない。

そのMからの指令で本題に入っていく。架空の国サン・モニークの首相カナンガがアメリカのハーレムで大物ミスター・ビッグに扮してアメリカ内に麻薬を無料で配布しているというのだ。これでアメリカを崩壊させようという意図があるらしいが、ほとんど伝わってこない。せめて麻薬で儲けている業者同士が揉める様子や無料で手に入れた麻薬で廃人が増えている、あるいは増え始めている様子などを描かないことにはカナンガの脅威も感じづらい。これに関する描写は冒頭に英国諜報員が次々に暗殺される場面があったくらいだ。

そこそこテンポよく進んでいった物語も中盤くらいから間延びし始める。特にワニの出てくるところからが酷い。ボンドはワニのうじゃうじゃいる池の真ん中にポツンとある小さな陸地に取り残され、ボンドを連れてきた連中はボンドを放ったらかしにして建物の中に入ってしまう。追い詰められたボンドはワニの背中を踏み台にして脱出し、建物に火をつけてモーターボートで逃走を図る。せめて見張りくらい置いておけよ。

そこから約13分間に及ぶボートチェイスが始まるのだがこれがとにかく長い。ボートで追い掛けっこしながら時折陸地を飛び越えるというのをただひたすらに繰り返していく。また、その合間に彼らを追う地元のペッパー保安官の様子も描いていく(彼は次回作にも登場)。ペッパー保安官はこのシークエンスのみの登場であり、彼のために尺を取って描く意図は伝わってこない。部下に厳しい保安官の立場ながら敵に振り回され、挙げ句の果てには相手が英国諜報員だったために手出しもできないというところで笑いを取ろうとしていたのだろう。だが、この見せ場として用意されたであろう13分間のシークエンスはとにかく退屈である。

そして、ボンドは捕まってカナンガのアジトに連れてこられる。何とか危機を脱したボンドとカナンガの一騎打ち。カナンガの持っている圧縮ガス弾を奪ったボンドはカナンガの口の中にそれを突っ込むとカナンガの体が風船の如く膨張し天井まで浮かび上がった挙げ句に爆死する。これは完全にコントにしか見えないぞ。

それからボンドはソリテアと列車の旅に出る。その列車には義手のサメディ男爵が潜んでおりボンドに襲いかかってくる。殺し損ねた(もしくは忘れていた!?)敵がラストでボンドを襲う展開はこのシリーズのお約束ではある。

また、本作のボンドガールであるソリテアは驚くほどに存在感がない。ただただボンドに付いてくるだけであり、大した見せ場も用意されていない。ショーン・コネリー時代のボンドガールはジョークとは言え酷い名前を付けられていることもあったがボンドを助けるなど重要な役割を担うこともあった。それに比べて本作のボンドガールは明らかに退化している。

ボンドの敵は前作まで基本的にブロフェルドであったが、権利の関係で本作以降は基本的に登場することなく本作的な再登場は「007/スペクター(2015)」まで待たなければならない。毎作品のようにブロフェルドを悪役にすることで、ブロフェルドを殺せなくなり「ちゃんと敵をやっつけた」という満足感を得られないというジレンマを抱えていた。権利の関係とはいえブロフェルドが登場しないことで毎作品「ちゃんと敵をやっつけることができる」ようになったのは良いことだ。これによって一話完結の物語にできるようになったのではないだろうか。ただ、だからといってそれが本作の面白さに繋がっているわけではない。

ロジャー・ムーアの後のジョークまみれのボンド映画を鑑みると本作はかなり大人しい。いきなりガラッと路線変更するわけにもいかず作品ごとにグラデーションができるのだろう。

 

【関連作品】

 

007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー

サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー



取り上げた作品の一覧はこちら

 



【配信関連】


<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/イタリア語/ハンガリー語)

 

 

<Amazon Prime Video>
 

言語
├日本語吹き替え


【ソフト関連】

<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>

言語
├オリジナル(英語/イタリア語/ハンガリー語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ガイ・ハミルトン(監督)による音声解説
├ロジャー・ムーア卿(ジェームズ・ボンド役)による音声解説
├トム・マンキウィッツ(脚本)による音声解説
映像特典(Disc2)
├MI6:機密書類保管庫:
    ├秘蔵ドキュメンタリー
    ├1964年の知られざるボンド
    ├ポスターのデザインができるまで
    ├クレジット
├秘密任務:
    ├007の履歴書
    ├ボンド・ガール
    ├味方
    ├敵
    ├アクション・マニュアル
    ├Qの秘密兵器
    ├魅力的なロケ地
├任務遂行レポート:
    ├ドキュメンタリー:『死ぬのは奴らだ』
    ├メイキング・オン・ザ・ロジャー・ムーア:葬儀のパレード
    ├メイキング・オン・ザ・ロジャー・ムーア:ハンググライダーの技術指導
├007プロパガンダ:
    ├オリジナル劇場予告編集(2種)
    ├TVスポット集(3種)
    ├ラジオ・スポット集(2種)
├イメージ・データベース:1973年『死ぬのは奴らだ』公開当時のフォト・ギャラリー

 


<BD>

言語
├オリジナル(英語/イタリア語/ハンガリー語)
├日本語吹き替え


【書籍関連】

<死ぬのは奴らだ>

形式
├電子
├紙
出版社
├早川書房
著者
├イアン・フレミング
翻訳者
├井上 一夫
長さ
├277ページ