【タイトル】
007/ムーンレイカー(原題:Moonraker)
【概要】
1979年のイギリス/フランス/アメリカ合作映画
上映時間は126分
【あらすじ】
アメリカからイギリスに輸送中だったスペースシャトル「ムーンレイカー」が突如として姿を消した。その真相を調査すべくボンドはムーンレイカーの製造元であるドラックスを訪ねる。
【スタッフ】
監督はルイス・ギルバート
音楽はジョン・バリー
撮影はジャン・トゥルニエ
【キャスト】
ロジャー・ムーア(ジェームズ・ボンド)
ロイス・チャイルズ(ホリー・グッドヘッド)
マイケル・ロンズデール(ドラックス)
リチャード・キール(ジョーズ)
【感想】
前作「007/私を愛したスパイ(1977)」のエンドクレジットで次回作は「ユア・アイズ・オンリー」と記されていたが、「スター・ウォーズ(1977)」の世界的なヒットを受けて宇宙が舞台となる本作が急遽製作されることになった。そんな本作はシリーズ最大となる2億1千万ドルの興行成績を記録した。
流行りに便乗するのはこのシリーズらしいので「スター・ウォーズ(1977)」のヒットを受けて宇宙に行く話なんて別に驚きもしないが、無重力の表現を人がゆっくり動くとかスロー再生するなんてそりゃないだろう。子供だましにも程がある。子供だって見りゃ分かるよ。予算の都合かどうかは分かりかねるが、クライマックスになる宇宙の場面で無重力を「ちゃんと」表現できないならこの企画は通すべきではないと思うわ。
そして、Wikipediaの本作のページによると、「前編通して非常にスピーディーな展開になっている」と記されている。引用もないので編集された方の感想なのだろうが、少なくとも「スピーディーな展開」ではない。スピード感で言えばロジャー・ムーアが就任してからの作品はどれも似たり寄ったりという印象である。
何ならブラジルのシーンはもっと短縮できたんじゃないか。リオのカーニバルとケーブルカーのシークエンスは物語上なくても何の問題もない。場面と場面の繋ぎも驚くほどに下手で、「なぜ急にこの場面になる」というのも多い。こんな感じだから本作のような内容でも上映時間が2時間を超え、長く感じてしまうのだ。
前作からの続投組であるリチャード・キール演じるジョーズは相変わらずボンドを何度も追いかけてくるのだが、恋に目覚め、ラストにはボンドの味方をする展開が用意されている。何じゃそりゃって話である。
アクションシーンもロジャー・ムーアがやっている場面は相変わらず鈍重であり、冒頭のスタントマンが本気でやったCGや視覚効果なしの飛行機からの落下シーンがより際立つ結果となっている。終盤になると爆破に頼ったアクションシーンが展開していく。この辺りは前作「007/私を愛したスパイ(1977)」のクライマックスで爆破を使いまくったところを踏襲しているのだと思うが、ただの爆破の繰り返しという前作で生じた問題をそのまま引きずっているように見える。「爆破を繰り返す=盛り上がる」ではない。
若いボンドガールとの絡みも、ロジャー・ムーアが年を重ねれば重ねるほど違和感がどんどん生じてくる。しかも本作のボンドはストーカーの如くボンドガールをあちこち追いかけまわしており、ちょっと気持ち悪いわ。
流行りに便乗して宇宙にまで手を伸ばした本作はどう見ても失敗作なのだが、それでも当時大ヒットを飛ばしたんだから映画って分からんもんだわ。
【関連作品】
「007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
「007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
「007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
「007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
「007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
「007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
「007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
「007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
「007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
「007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
「007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
「007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
「007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
「007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
「007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
「ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー
「サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/イタリア語/ポルトガル語)
【ソフト関連】
<DVD(2枚組)>
言語
├オリジナル(英語/イタリア語/ポルトガル語)
音声特典
├ルイス・ギルバート(監督)、製作スタッフ、キャストによる音声解説
├ロジャー・ムーア卿(出演)による音声解説
映像特典(Disc2)
├MI6:機密書類保管庫
├秘密任務
├任務遂行レポート
├007プロパガンダ
├イメージ・データベース
<BD>
言語
├オリジナル(英語/イタリア語/ポルトガル語)
【書籍関連】
<ムーンレイカー>
形式
├紙
出版社
├創元推理文庫
著者
├イアン・フレミング
翻訳者
├井上一夫
長さ
├306ページ