【タイトル】
007/消されたライセンス(原題:Licence to Kill)
【Podcast】
Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。
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【概要】
1989年のイギリス/アメリカ/メキシコ合作映画
上映時間は133分
【あらすじ】
友人のフェリックス・ライターが襲われ、彼の妻は殺されてしまった。逃亡した麻薬王サンチェスの仕業だと睨んだジェームズ・ボンドは、上司Mからの忠告を無視し、個人的な復讐に動き始める。
【スタッフ】
監督はジョン・グレン
製作はアルバート・R・ブロッコリ
脚本はリチャード・メイボーム/マイケル・G・ウィルソン
音楽はマイケル・ケイメン
撮影はアレック・マイルズ
【キャスト】
ティモシー・ダルトン(ジェームズ・ボンド)
ロバート・ダヴィ(サンチェス)
キャリー・ローウェル(パメラ)
タリサ・ソト(ルペ)
【感想】
007シリーズの第16作。前作からジェームズ・ボンドを演じたティモシー・ダルトンは本作が2作目にして最後の作品となった。
結果的に、ティモシー・ダルトンがジェームズ・ボンドを演じたのが2作品で終わったのが惜しまれる作品。前作「007/リビング・デイライツ(1987)」でロジャー・ムーアのボンド像からの脱却が垣間見え、本作はさらに脱却が進んだ部分と後退した部分が見られると感じる。
本作の大きな特徴は、ボンドによる個人的復讐と「殺しのライセンス」の剥奪である。ボンドの盟友フェリックス・ライターが半殺しにされ、彼の妻は殺されてしまった。これに対しボンドが個人的な復讐に走ろうとして、MI6も辞職してしまう。ただ、シリーズ準レギュラーくらいのフェリックス・ライターは基本的に毎回違う役者が演じている。2年前の前作には違う役者が演じ、なんと本作でフェリックス・ライターを演じたデヴィッド・ヘディソンは「007/死ぬのは奴らだ(1973)」でフェリックス・ライターを演じている役者である。16年前に同じ役を演じた役者が今作でも演じているからと言って感情移入しやすくなる要素にはなっていない。また、ボンドがかつて結婚していて妻を亡くした話も本作で少し触れられ、そのことが復讐へ走る要因になっているが、それは「女王陛下の007(1969)」で描かれた内容である。まるで本シリーズ愛を試されているようである。
それからMI6を辞職すると言って、「殺しのライセンス」が剥奪されるわけだが、ボンドが上司Mの指示を無視することはよくあることだったし、その後にメカ開発のQが現場まで助けに来たことで、この設定の意味をほとんど消してしまった(Qの活躍場面が増えるのは楽しいが)。
また、ムーアボンド時代の「007/私を愛したスパイ(1977)」「007/ムーンレイカー(1979)」で登場した敵キャラ「ジョーズ」へのアンチテーゼの如く、本作では本物のサメによって噛み千切られるシーンがあるのは残酷でこそあるが、設定としては興味深い。
それから、前作ではムーアボンド映画からの脱却と言いつつ、最新メカを搭載した武器や車は数多く登場した。それに比べると本作は摩訶不思議な武器などはほとんど登場せず、終盤のタンクローリーでの激しいカーチェイスはリアルである。
そして、女性関係については、本命のボンドガールとなかなか関係を持たないところは前作の流れを踏襲しているが、ルペと関係を持つところは前作に不満を持つファン向けの目配せではないかと感じる。ルペと関係を持つ必然性はあまり感じなかったので、ここはシビアにいってほしかった。また、CIAのパイロットという設定のパメラは登場するのが映画開始後50分すぎてからである。個人的な復讐に来たボンドと捜査で来ていたパメラが船の上でキスするシーンも違和感がある。パメラとのキスシーンは最後まで取っておくべきだっと感じる。また、パメラを演じたキャリー・ローウェルは178センチという長身だったため、回し蹴りの1回くらいは披露してほしかったものだ。
公開当時は多くの娯楽作に埋もれてそこまで興行成績を残せなかった。かつ、シリーズは後に訴訟問題で次回作の製作になかなかたどり着けず、しびれを切らしたティモシー・ダルトンが降板するという流れになる。要所に良いところもあるし、決して失敗作ではないと感じる。後の「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」への影響を考えるとシリーズでは外せない一本。
【音声解説1】
参加者
├ジョン・グレン(監督)
├キャリー・ローウェル(パメラ役)
├ロバート・ダヴィ(サンチェス役)
├デズモンド・リューウェリン(Q役)
├ベニチオ・デル・トロ(ダリオ役)
├デヴィッド・ヘディソン(フェリックス・ライター役)
上記関係者の別撮り音声を繋ぎ合わせた音声解説。悪役サンチェスの衣装の話、キャリー・ローウェルのロケの話、ベニチオ・デル・トロがティモシー・ダルトンをケガさせてしまった話など随所に聞き応えはあった。
【音声解説2】
参加者
├マイケル・G・ウィルソン(プロデューサー)
├コーク、B・J・ワース(スタントマン)
├ジェイク・ロンバード(スタントマン)
├サイモン・クレイン(スタントマン)
├アーサー・ウースター(第二班監督)
├リチャードソン(視覚効果監修)
├コーホールド(視覚効果監修)
├ロン・クエルチ(プロダクション・バイヤー)
├ピーター・ラモント(美術監督)
├アレック・マイルズ(撮影監督)
├ドン・スモーレン(広報)
├N・ラモント(アシスタント・アート・ディレクター)
上記関係者の別撮り音声を繋ぎ合わせた音声解説。それらしい箇所に当てはめてはいるが、個々のインタビュー色が強い。それぞれの立場から見たプロデューサーや俳優の印象などが語られる。プロダクション・バイヤーという小道具などを発注する人の話は新鮮だった。
【関連作品】
「007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
「007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
「007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
「007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
「007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
「007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
「007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
「007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
「007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
「007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
「007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
「007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
「007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
「007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
「007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
「ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー
「サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
<Amazon Prime Video>
言語
├日本語吹き替え
【ソフト関連】
<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>
言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ジョン・グレン(監督)、キャストによる音声解説
├マイケル・G・ウィルソン、製作スタッフによる音声解説
映像特典
├MI6:機密書類保管庫:
├未公開シーン集――ジョン・グレン監督のイントロ付き
├『消されたライセンス』のボンド
├ジョン・グレン監督の撮影日誌
├ピーター・ラモント、ロケを語る
├コーキー・フォーノフの空撮秘話
├クレジット
├秘密任務:
├007の履歴書
├ボンド・ガール
├味方
├敵
├アクション・マニュアル
├Qの秘密兵器
├魅力的なロケ地
├任務遂行レポート:
├ドキュメンタリー:『消されたライセンス』
├パブリシティ用映像
├スタントシーン・メイキング
├ミュージック・ビデオ“消されたライセンス”byグラディス・ナイト
├ミュージック・ビデオ“イフ・ユー・アスクト・ミー・トゥ”byパティ・ラベル
├007プロパガンダ:オリジナル劇場予告編集(2種)
├イメージ・データベース:1989年『消されたライセンス』公開当時のフォト・ギャラリー
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言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え