【タイトル】
007/黄金銃を持つ男(原題:The Man with the Golden Gun)
【概要】
1974年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は124分
【あらすじ】
ボンドのもとに黄金の銃弾が送られてくる。送り主は「黄金銃を持つ男」の異名を持つ殺し屋スカラマンガであった。ボンドは調査のためにマカオへ向かう。
【スタッフ】
監督はガイ・ハミルトン
音楽はジョン・バリー
撮影はテッド・ムーア/オズワルド・モリス
【キャスト】
ロジャー・ムーア(ジェームズ・ボンド)
ブリット・エクランド(メアリー・グッドナイト)
クリストファー・リー(スカラマンガ)
【感想】
ガイ・ハミルトンがシリーズ4度目にして最後の監督を努めたシリーズ9作目は興行的にも批評的にも失敗し、一時はシリーズ続行が危ぶまれる事態となった。
上述の事情が頷ける酷い出来。この内容でなぜ上映時間が120分を越えるのかがさっぱり分からない。これが当時の映画のテンポだし、このシリーズは基本的にずっとこんな感じなのは理解できるが、にしても途中からあまりにも退屈すぎる。
クリストファー・リー演じる殺し屋スカラマンガの特徴はなんと3つの乳首である。これは後に「トータル・リコール(1990)」でパクられたに違いない(3つの乳房を持つ宇宙人)!?そんな乳首が3つあるのも冒頭に触れられ、スカラマンガになりすましたボンドが服を脱ぎ付け乳首で資産家の男をスカラマンガだと思わせる場面でしか使われていない。
また、本作の悪役スカラマンガには手下の人間として小人症のエルヴェ・ヴィルシェーズ演じるニック・ナックが登場する。このシリーズには悪役と手下が基本的にセットで登場するが、その手下連中の中ではインパクトはある。ただ、長身のボンドと小人症の俳優の演じる悪役では力の差が歴然としているので、いつものようにエピローグのところで登場したところで大人相手に子供が反抗している程度にしか見えない。ボンドを殺そうとする最後の場面もボンドガールにあっさり見つかり(あの態勢であの場所ならバレて当然)、ナイフをベッドの隙間に落としてしまうという間抜けさ。最後はワインボトルを投げまくるってボンドを殺す気ないだろ。
終盤にボンドガールのメアリーはボンドが「ソレックス・アジテーター」を取り出そうとしている様子を屈んで見ていると、お尻が後ろのボタンに触れてしまいボンドを危機的状況に追いやり兼ねなくなる。その後はボンドの指示に従ったことで危機を脱することに成功する。お尻がボタンに触れるなんてコントみたいな話だし、普通気付くだろう。分厚い服を着ているとかなら分かるが水着やぞ。感覚ないのか。あまりに間抜けなお話である。
その間抜けさの象徴とも言えるのが中盤のカーチェイスの場面である。川の向こう側に渡りたいボンドはうねっている途切れた橋に車ごと突っ込んでいく。すると車はジャンプしながら一回転してきれいに着地する。これはなかなかすごいスタントなのだが、何を思ったかここにホイッスルの拍子抜けする効果音を入れているのだ(監督のガイ・ハミルトンは後に失敗だったと認めている)。コメディ映画でもこんな効果音付けないぞ。いくらなんでもセンスがなさすぎるし、周囲にそれを止められる人物はいなかったのか。
そのカーチェイスの前から映画内に登場するのが前作ボートチェイスシーンで登場したペッパー保安官である。どうやら奥様と休暇を利用して旅行している最中らしい。カメオ出演程度かと思っていたら何度も画面に顔を出し、後に車の販売店でペッパー保安官が試乗をしよう車に乗っていると、車を追い掛けたいボンドがその足を手に入れるために車に乗り込んでくる。そこからはボンドが車を追い掛けて、空飛ぶ車で逃げられてしまうまでペッパー保安官もついてくる。前作のボートチェイスシーンで味を占めたのか、本作ではカーチェイスシーンでペッパー保安官の力を借りているようだ。ところが彼が登場したからといって面白くなるわけでもない。むしろ雑音に感じるくらいだったので、休暇で旅行に来た先でボンドと再会するというカメオ出演程度で十分だったと思う。
終盤にかけてボンドとスカラマンガの一騎打ちになるのだが、驚くほどに緊張感も迫力もない。タイトルにもある黄金銃もそれほどの脅威には全く見えない。前作に引き続きシリーズ通して全く印象に残らない作品の一つ。
【関連作品】
「007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
「007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
「007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
「007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
「007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
「007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
「007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
「007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
「007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
「007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
「007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
「007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
「007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
「007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
「007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
「ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー
「サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
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├オリジナル(英語/広東語/タイ語)
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├日本語吹き替え
【ソフト関連】
<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>
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├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ガイ・ハミルトン監督と製作スタッフ、キャストによる音声解説
├ロジャー・ムーア卿による音声解説
映像特典(Disc2)
├MI6:機密書類保管庫
├秘密任務
├任務遂行レポート
├007プロパガンダ
├イメージ・データベース
<BD>
収録内容
├上記DVDと同様
【書籍関連】
<黄金銃を持つ男>
形式
├電子
出版社
├早川書房
著者
├イアン・フレミング
翻訳者
├井上一夫
長さ
├207ページ