【タイトル】
ネバーセイ・ネバーアゲイン(原題:Never Say Never Again)
【概要】
1983年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は134分
【あらすじ】
アメリカの核弾頭2機が盗まれる事件が発生した。英国諜報員ジェームズ・ボンドは核弾頭奪還に向け地中海にいる大富豪のラルゴを調査し始める。
【スタッフ】
監督はアーヴィン・カーシュナー
音楽はミシェル・ルグラン
撮影はダグラス・スローカム
【キャスト】
ショーン・コネリー(ジェームズ・ボンド)
キム・ベイシンガー(ドミノ)
クラウス・マリア・ブランダウアー(ラルゴ)
マックス・フォン・シドー(ブロフェルド)
ローワン・アトキンソン(ナイジェル)
エドワード・フォックス(M)
【感想】
ショーン・コネリーが「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」以来、12年ぶりにジェームズ・ボンド役を演じたシリーズ番外編にして、「007/サンダーボール作戦(1965)」のリメイクというか再映画化作品。1983年の興収ランキングで4位につけるなど好成績を残したが、ショーン・コネリーがジェームズ・ボンド役を演じたのは本作が最後となった。
本作の原作はイアン・フレミング、ケヴィン・マクローリー、ジャック・ウィンティンガムの共同執筆によるものだったが、イアン・フレミングが他の二人に無許可で小説化をしてしまった。ケヴィン・マクローリーは訴訟を起こし、裁判によりイアン・フレミング側にスペクターやブロフェルドに関する権利を、ケヴィン・マクローリー側に本作の映画化権を与える形で和解した。
ケヴィン・マクローリーはワーナー・ブラザーズでの映画化を検討したが、イオン・プロがユナイテッド・アーティスツを通じて交渉して「007/サンダーボール作戦(1965)」の共同製作としてクレジットし、ケヴィン・マクロー側は今後10年間シリーズの映画製作をしないことで収まった。ただ、「サンダーボール作戦」に登場するブロフェルドが他のシリーズに登場しない映画化作品にも登場したことでケヴィン・マクローリーは再び訴訟を起こし、「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」を最後に本家シリーズでスペクターやブロフェルドが登場することはなくなった。
そして10年が経過してケヴィン・マクローリーは、すでにジェームズ・ボンド役を降板していたショーン・コネリーに声を掛けて製作した「サンダーボール作戦」の映画化作品が本作「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」である。なので本家シリーズでおなじみのガンバレルやモンティ・ノーマンによるテーマ音楽も流れることはない。本作の製作経緯やその前後関係の話は挙げればキリがないのでWikipediaの該当ページを参照いただきたい。
ショーン・コネリーが約12年ぶりにジェームズ・ボンドを演じた本作だが、当時本家シリーズでジェームズ・ボンドを演じていたロジャー・ムーアの方がショーン・コネリーより3歳年上だったという事情を考えると当時53歳頃のショーン・コネリーがジェームズ・ボンド役を演じていても特に違和感はない。
ただ、番外編とも言える本作は上述のようにモンティ・ノーマンのよるテーマ音楽が流れない。これは地味に大きなダメージである。この音楽なくしてこのシリーズはあり得ないというのを痛感する。本作で音楽を担当したのは親日家としても知られるフランス人のミシェル・ルグランである。彼の音楽も本家シリーズに気を使ったような無難な音楽だったように思える。
「007/サンダーボール作戦(1965)」と比べても良いのだが、核弾頭が盗まれてボンドがその奪還に動くという部分以外はほとんど別物と言っても過言ではない。登場するキャラクターは基本的に同じだが、演じた俳優の見た目を比べても異なるキャスティングをしたのが伝わってくる。
本作が面白いのも序盤くらいである。仕事がなくなまった体を鍛えられるという序盤は、ショーン・コネリーがジェームズ・ボンド役をしばらくお休みしていたという現実と重なり、上下スウェット姿でマッサージを受けるという新鮮な場面である。その際の採尿を促しに来た看護師への一言はなかなか笑える(ただのセクハラ発言だが)。
以降は、本当に核弾頭が盗まれたのかと思うくらいにのんびりしている。当時のロジャー・ムーア作品にも言えるのだが本作も上映時間がそもそも長すぎる。本作が134分の上映時間を必要としたとは到底思えない。おじさん同士がコンピューターゲームでムキになり、一人の女を取り合うなんてふざけた話である(笑いどころとして用意した展開ではない)。
アクションシーンも印象的な場面はほとんどなく、馬に乗ったボンドとドミノが海に落ちていく際の明らかな合成のインサートのみが強烈に印象に残っている。ただ、「サンダーボール作戦(1965)」では水中の場面ばかりで動きが鈍重であったことを踏まえると本作は水中の場面を最低限にしているのは良い。
そんな本作も最後の最後にインパクトを残すのは序盤にも登場したローワン・アトキンソンである。まだ彼が「Mr.ビーン」を始める前である。後にブレイクしていなければ覚えてすらいなかっただろうが。ちなみに彼は後に「ジョニー・イングリッシュ(2003)」に始まるシリーズで本家007シリーズのパロディ作品に主演している。
ショーン・コネリー時代にしてもロジャー・ムーア時代にしても内容に対して上映時間がいずれも長すぎる。こんな内容なら100分程度でまとめられるだろうに。ショーン・コネリーがジェームズ・ボンドを役を再演した以外に価値のない駄作。
【関連作品】
「007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
「007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
「007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
「007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
「007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
「007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
「007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
「007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
「007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
「007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
「007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
「007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
「007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
「007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
「007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
「ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー
「サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー
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