【作品#0135】007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(原題:No Time To Die)


【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

2020年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は163分

【あらすじ】

マドレーヌと南イタリアにやって来たボンドはスペクターの暗殺者に襲われる。何とか彼らの追跡を撒くがボンドはマドレーヌが裏切ったと思い別れることになる。5年後、MI6の科学者が誘拐されてしまった。CIAの友人フェリックス・ライターからの要請でボンドはCIAに協力することになる。

【スタッフ】

監督はキャリー・ジョージ・フクナガ
脚本はニール・パーヴィス/ロバート・ウェイド/キャリー・ジョージ・フクナガ/フィービー・ウォーラー=ブリッジ
音楽はハンス・ジマー※ポスプロで降板
主題歌はビリー・アイリッシュ「No Time To Die」
撮影はリヌス・サンドグレン

【キャスト】

ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド)
ラミ・マレック(サフィン)
レア・セドゥ(マドレーヌ)
ラシャーナ・リンチ(ノーミ)
アナ・デ・アルマス(パロマ)
レイフ・ファインズ(M)
ベン・ウィショー(Q)
ナオミ・ハリス(マネーペニー)
ジェフリー・ライト(フェリックス・ライター)
クリストフ・ヴァルツ(ブロフェルド)

【感想】

史上最長となる足掛け16年もの間、ジェームズ・ボンド役を演じたダニエル・クレイグにとって最後の007作品となったシリーズ第25作。当初はダニー・ボイルが監督予定だったが創造性の違いで降板し、日本の地を引くアメリカ人キャリー・ジョージ・フクナガに白羽の矢が立った。また、2020年2月に公開予定だったが、コロナウイルス感染拡大により同年11月に延期され、計3度の延期を経て2021年10月にようやく日の目を浴びることになった。前作から興行的には落ちたが、コロナという状況下ながら7億ドルを超えるヒットを飛ばした。

 

ナノウイルスを仕込まれ、最愛のマドレーヌとマチルダに触れることができなくなったボンドは、まさにアンタッチャブルな存在となり、これ自体が、ダニエル・クレイグの築き上げたジェームズ・ボンドそのものと言えるだろう。他国ではなくジェームズ・ボンドを生み出したイギリスのミサイルによってジェームズ・ボンドは死ぬというのは、自らの手で終わらせたといって良いだろう。結末には当然賛否は分かれるだろうが、そのダニエル・クレイグ最後のジェームズ・ボンドが迎える結末には大いに納得がいく。また、サフィンが「僕は死んでも残すことができる」と言っていたが、これこそまさにジェームズ・ボンドのことだろう。俳優が変わっても演じ続けられてきたし、作られたものは映画としてちゃんと「残っている」のだから。さらに本作ではボンドは初めて子供も残した。

 

監督のキャリー・ジョージ・フクナガは過去の作品を振り返ると、「子供たちが自分の意思に関係なく仕方なくその道に進んでいく」という物語をよく描いている印象だ。前作「007/スペクター(2015)」で、ボンドはマドレーヌから「仕事はたくさんあるのになぜ殺し屋の道を選んだのか」と聞かれて、「選択肢がなかった」と答えている。

 

悪役に抜擢されたのは、本シリーズ3作品連続のオスカー俳優となるラミ・マレックである。シリーズの悪役で並べるとそこまで印象に残らない悪役になってしまったのは否定しがたい。世界征服を狙うというのは本シリーズっぽくて良いとは思うが、その理屈は映画的にも理解しがたいものがあった。

 

それからアナ・デ・アルマス演じたパロマという「その場限りの関係」となったボンドガールは見事だった。短い登場時間ながら、衣装、アクション、飲みっぷりなど強烈な印象を残した。今までのシリーズなら、この手のキャラクターは間違いなく殺されていたが、それを反転させたかのような登場の仕方と退場のさせ方だった。「チャオ」と言ってから画面内に再登場することがなく、観客側にもっと見たいと思わせるくらいのいキャラクターだったが、このキャラクターに頼らずに物語を展開させたのは潔くて好印象であった。

 

前作ややがっかりだったアクションは少なくとも前作より遥かに良くなっている。特に本作は最後にサフィンのアジトへボンドが侵入する場面がある。ダニエル・クレイグになってからのボンド映画では敵のアジトに行く場面こそあれ侵入する場面は初めてではないだろうか(「007/慰めの報酬(2008)」のラストはアジトではない!?)。その侵入していく感じやダニエル・クレイグの銃構えなど非常に様になっていた。また手榴弾に吹き飛ばされてから階段を登り敵を背負い投げするまでが長いワンカットになっており、アルフォンソ・キュアロン監督「トゥモロー・ワールド(2006)」を思わせる場面になっていた。

 

また、ユーモアの加減は本作の塩梅がちょうど良いと感じる。ノーミにバイクに乗せてもらった後の一言、ノーミがボンドの家に来てからの一言、マドレーヌがボンドに見せたいものがあると言った後の一言、ボンドの追悼でQだけ酒を一気飲みしているところなど思い出してもニヤッとできるものである。

前作「007/スペクター(2015)」が原点回帰で病的な過去作オマージュに溢れた作品だったが、本作はダニエル・クレイグ最後のボンド映画とあり、特に彼がボンドを演じた中でも評価の高い「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」や「007/スカイフォール(2012)」へのオマージュに溢れている。ボンドガールの用意したタキシードを着るところ、助けようとした人が水中で死んでしまうところ、追いつめられたノーミが投降しようとして逃げるところ、またヴェスパーの墓に行くとデヴィッド・アーノルドによるヴェスパーのテーマが流れるところなどは、「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」へのオマージュと言えよう。また、池に落ちるところ、ブルドッグの置物、ボンドガールとイヤホンでやり取りするところ、生まれ育った家に戻って来る展開などは「007/スカイフォール(2012)」へのオマージュだろう。


また、過去作との類似を指摘すると、「ザ・ロック(1996)」に似た話である。冒頭に墓参りをして、実は主人公に娘がいて、生物兵器が登場し、2人で島に潜入して、最後に島にミサイルが撃ち込まれると、これだけ書くとほとんど同じに見える程、大筋は似ている(もちろん全然違う映画だが)。

ただ、スペクター壊滅の流れが雑だったり、オブルチェフがサフィンの手下になる流れが描かれなかったりと言いたいことがないわけではない。ジェームズ・ボンドもフェリックス・ライターもブロフェルドも死んで、スペクターは消滅した。それでもエンドクレジットの最後に「James Bond Will Return」といつものように表示された。ここまでやったんだから次は何でもできる。ダニエル・クレイグの後任はかつてないほど大変だと思うが、温かく見守りたい。そして、ダニエル・クレイグ最後のボンド映画としては有終の美を飾ったと言えよう。他のボンド映画とは比べるのも難しいくらい別格の作品となった。


【関連作品】

007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー

サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【予告編】

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語/ロシア語/スペイン語/ノルウェー語/ドイツ語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD+DVD>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語/ロシア語/スペイン語/ノルウェー語/ドイツ語)

├日本語吹き替え

映像特典

├マテーラでの撮影
├リアルを追求したアクション
├世界を駆けるボンド
├「007」のデザイン

 
 

 

<4K Ultra HD+BD>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語/ロシア語/スペイン語/ノルウェー語/ドイツ語)

├日本語吹き替え

映像特典

├マテーラでの撮影
├リアルを追求したアクション
├世界を駆けるボンド
├「007」のデザイン

├ジェームズ・ボンドとして※4K Ultra HDのみ収録

 

【音楽関連】

 

<主題歌:ビリー・アイリッシュ「No Time To Die」>

 

 

<CD(サウンドトラック)>

 

収録内容

├21曲/71分

 

【書籍関連】

 

<メイキング・オブ・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ>

 

形式

├紙(ソフトカバー)のみ

著者

├マーク・ソールズベリー

監修

├神武団四郎

出版社

├玄光社

長さ

├192ページ