【作品#0750】007/サンダーボール作戦(1965) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

007/サンダーボール作戦(原題:Thunderball)

【概要】

1965年のアメリカ/イギリス合作映画
上映時間は129分

【あらすじ】

NATO空軍が輸送中だった原子爆弾が犯罪組織「スペクター」に盗まれてしまった。英国諜報員のジェームズ・ボンドはバハマに飛び、NATO空軍少佐の妹ドミノに接近する。

【スタッフ】

監督はテレンス・ヤング
音楽はジョン・バリー
撮影はテッド・ムーア

【キャスト】

ショーン・コネリー(ジェームズ・ボンド)
クローディーヌ・オージェ(ドミノ)
アドルフォ・チェリ(ラルゴ)
ルチアナ・パルッツィ(ヴォルペ)

【感想】

シリーズ4作目に当たる本作は最初の2作品を監督したテレンス・ヤングが監督の座に戻って来た。前作の3倍に当たる900万ドルの製作費がつぎ込まれ、1億4千万ドルのヒットを記録した。

結論から言うと、本作までの計4作品で一番退屈な作品といえる。前作までの3作品は2時間以内で収まっていたが本作は129分と過去最長である。その一番の原因は、奪われた核弾頭を探すという本作の中心にある物語がほとんど動かないことである。

上映時間30分を過ぎてからようやく核弾頭が盗まれる場面になり、その核弾頭は海底に沈めて隠されることになる。そして終盤に至るまでこの核弾頭自体も動くことはない。さらに、観客は海底に核弾頭があることは知っているのだから、その過程には魅力ある展開を用意すべきだが、ボンドの行動が核弾頭の奪還に繋がっているようには見えず、ボンドが何のために行動しているのかこっちが忘れてしまうほどである。こうなるくらいなら核弾頭の場所は観客に知らせない方がまだ良かったかもしれない。

また、この本題に入るまでに30分もかける必要を感じない。核弾頭が盗まれる描写なんて映画の冒頭に済ませておくべきだ。犯罪組織「スペクター」の首領ブロフェルドがいかに残虐な人間かなんて後で描くことも同時並行的に描くこともできたはずだ(というか前作まででブロフェルドがどんな人間かは観客が知っている)。

わざわざ「00」の部門の諜報員全員が集められて会議をしたのに結局ボンド以外の「00」の諜報員は登場することはない。だとしたら全員を集めた会議の場面は必要ないだろう。この場面でボンド以外の諜報員の顔が映らないので、後に登場することもないことは何となく想像がついてしまうが、これだけ集まったのなら多少はチーム戦や応援に駆け付ける他の諜報員がいても良いのではないかと思うし、Mが指揮をする場面でボンドの心配をしているが、他の諜報員も派遣すれば良いのにと観客が思ってしまう。

それから本作がスピード感を最後まで出せなかったのはアクションシーンをほぼすべて水中でやってしまったことであろう。水中の場面、あるいは水中でのアクションシーンがあまりにも多すぎる。せめて水中でのアクションシーンは一つに留めるべきだった。動きが鈍くなる水中のシーンが陸上でのシーンを上回るのは到底難しいはずだ。殴り合いみたいな格闘シーンやカーチェイスを続けてきたシリーズだからこその新しい試みかもしれないが完全に失敗している。

さらに、そのスピード感を補うべきか本作中に何度か早回しを使っている場面がある。冒頭のアクションシーンと中盤、それからラストの船の暴走で使われている。特に船の暴走の場面では素人が見てもはっきり分かるくらいに早回しが多用されており、映像としても演出としてもチープと言わざるを得ない。早回しはどうしてもコメディに見えてしまうし、早回しに頼らない工夫ができなかったものか。

また、ボンドガールが何人か登場するが、そのどれもが同系統の見た目をしている。前作「007/ゴールドフィンガー(1964)」でさえも、姉妹の女優の見た目ははっきりと違うと分かるほどだったのに、本作の女優はどれも似たり寄ったり。そのキャスティングにどんな意味があったのかは分かりかねるが、見た目の個性さえ与えられないと「ボンドガールはどれも一緒」と言わんばかりに感じてしまう。そして、本作は悪役もいまいちだった。大ボスから雑魚キャラまでそのどれもがインパクトに欠け、悪役の存在が映画を面白くもしていない。

結論、本作がシリーズ4作品の中で最低の出来だった。Wikipediaには「シリアス路線に戻った」とあるが、果たしてそうだろうか(序盤の拘束器具を使ったシーンはどう見てもギャグ)。本筋もアクションも冗漫で、ボンドガールや悪役のキャスティングも失敗。毎年のように作っていると練り込む時間もないのだろうか。

【関連作品】

007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー

サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

 

├テレンス・ヤング(監督)、製作スタッフ、キャストによる音声解説
├ピーター・ハント(編集)ジョン・ホプキンス(脚本)による音声解説
映像特典

├MI6:機密書類保管庫

    ├ジェームズ・ボンドの世界

    ├こども向け自動車爆破マニュアル

    ├ケン・アダム ロケを語る
    ├ジェットパック撮影秘話

    ├ボート・ショー用映像

    ├ボンドグッズ コマーシャル

    ├クレジット
├秘密任務

    ├007の履歴書

    ├ボンド・ガール

    ├味方

    ├敵

    ├アクション・マニュアル

    ├Qの秘密兵器

    ├魅力的なロケ地
├任務遂行レポート

    ├メイキング・オブ・『サンダーボール作戦』

    ├ドキュメンタリー:“サンダーボール現象”
    ├『サンダーボール作戦』裏情報
├007プロパガンダ

    ├オリジナル劇場予告編集

   ├TVスポット集

   ├ラジオ・スポット集
├イメージ・データベース:1965年『サンダーボール作戦』公開当時のフォト・ギャラリー

 

 

<BD>

 

収録内容

├上記DVDと同様