【作品#0749】L change the world(2008) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

L change the world

【概要】

2008年の日本映画
上映時間は129分

【あらすじ】

バイオテロを企む「ブルーシップ」のKはLに助けを求めて連絡を試みる。

【スタッフ】

監督は中田秀夫
音楽は川井憲次
撮影は喜久村徳章

【キャスト】

松山ケンイチ(L)
工藤夕貴(K)
福田麻由子(二階堂真希)
平泉成(松戸浩一)
石橋蓮司(加賀見シン)
南原清隆(駿河秀明)
鶴見慎吾(二階堂公彦)
高嶋政伸(的場大介)

【感想】

「デスノート」シリーズのLを主人公にしたスピンオフ映画は31億円のヒットを記録した。

原作も読んでおらず大した情報のないまま映画を観た人はさぞ驚いたんじゃないだろうか(私がそのうちの一人だが)。「DEATH NOTE デスノート」のスピンオフ映画だというのにデスノートはほぼ全く関係ない話になっている。映画の冒頭にLがデスノートに自分の名前を記載して処分する場面があり、Lが死ぬまでの日数が度々映画内に表示され、映画の最後にLが死ぬので全く関係がないわけではない。ただ、映画の最後にLが死ぬことに全く意味がないので、カウントダウンの日数もただの数字でしかなくなっている。ちなみに、エンドクレジット後に数秒Lの映像があり、「安らかに眠る」と表示されて映画が終わる。エンドクレジット前のLが向こうに歩いて姿が見えなくなる演出で十分だろうに。何が「安らかに眠る」だ。

上述のように薄く「デスノート」が映画に関係していても映画の中心からそれがなくなると、いくらスピンオフとはいえ、それはまるで牙を抜かれた獣である。まさか生物兵器の話を中心とした逃亡劇になるとは。本作に「デスノート」が関係ないのならデスノートの存在自体を登場させるべきではなかった。序盤にLがデスノートを焼却する場面があり、「本作にはデスノートはもう出てきませんよ」という宣言をするのは分かるが、「DEATH NOTE デスノート」前後編に出演していた藤原竜也(映像のみでセリフなし)、戸田恵梨香、瀬戸朝香、細川茂樹(声のみ)、藤村俊二あたりは登場させなくても成立したはずだ。「DEATH NOTE デスノート(2006)」でバスの運転手だった田中要次が本作でタクシー運転手として出演しているのもいらん。

そもそもLが動き回る作品にしたことも大間違いだろう。彼はあくまで頭脳派である。前2作品で築き上げてきたL像を考えると、仮に逃亡劇だとしても、Lはあくまで司令塔であり、子供たちの逃亡を手伝う別の登場人物を用意すべきだったんじゃないだろうか。とても運動できるタイプには見えないLが動き始めた飛行機に飛び移る場面は無理がある。

本作はバイオテロを企む「ブルーシップ」と、Lや被害に遭った研究者の娘、タイのバイオテロ被害者の生き残りの少年の対立を軸に展開していく。全編通して言えることではあるが、目ぼしい展開がほとんどないため、ただただ退屈であり、しかも上映時間は129分もある。もっと削ったらせめて100分くらいの映画になっただろうに。また、その割には「ブルーシップ」の企む計画やその結果としてどういう世界が得られるのかなどは観客も想像できないくらいにフワッとしたものでしかない。ここまでの行動を起こすだけの理念があるのならせめて観客にもしっかり共有してしかるべきだ。

途中からはL、被害に遭った研究者の娘、タイのバイオテロ被害者の生き残りの少年の3人の逃亡劇がロードムービー的に展開していく。Lが今まで経験したことのない事をすることで彼も成長してく様子を描くのはありだと思うがちょっと違うな。少年少女相手が苦手なのは伝わってくるのにわざわざセリフで「苦手だ」と言わせる必要なんてない。仮にLの成長を描くとしてもこの映画で観客は何を得られただろうか。

そんな退屈な映画を盛り上げる存在が南原清隆だろう。FBI捜査官としてLたちに協力を申し出てから映画内に度々登場する。あくまで本作はシリアスな雰囲気のもと展開していくが、シリアスな雰囲気ばかりでは窮屈するだろうからということで彼が登場したように見える。その意図は好意的に汲み取ることはできるが、そもそも本作にコメディリリーフは必要ないように思えるし、仮にその役割が必要だとしてもその正解が南原清隆の起用だったとは思えない。コメディアンにコメディリリーフを演じさせたとしても、本作のテイストに合うコメディアンはいるはずだ。まして演技力のない南原清隆をこの作風のコメディリリーフに起用するのはもはや間違っている。この作風だったら仮に役者がコメディリリーフを演じたとしてもうまくいかなかったと思うが。

製作陣のあらゆる意味でのセンスのなさに付き合わされた役者陣が不埒でならない。子役たちが頑張っていたことくらいしか印象に残らず、たった一人コメディリリーフをさせられた南原清隆がますます存在感を増すことになる。それでも31億円もヒットしてしまうなんて、私の見る目がないのだろうかと思ってしまう。

 

【関連作品】

DEATH NOTE デスノート(2006)」…シリーズ1作目
DEATH NOTE デスノート the last name(2006)」…シリーズ2作目
「DEATH NOTE デスノート Light up the NEW world(2016)」…シリーズ3作目
「L change the WorLd(2008)」…スピンオフ



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(日本語)

 

【ソフト関連】

 

<DVD(3枚組)>

 

言語

├オリジナル(日本語)

映像特典(Disc1)

├劇場用予告編集

映像特典(Disc2)

├『L change the WorLd』メイキング完全版 全二部作 〔日本編〕〔タイ編〕

映像特典(Disc3)

├クランクアップ会見
├ジャンフェス2007『L』ステージイベント上映映像/ブース上映映像
├アジア・キャンペーン(韓国~香港~台湾)
├ジャパン・プレミア
├初日舞台挨拶サーキット
├大ヒット御礼イベント・弾丸ツアー
├『outside of file No.15』
├『スピンオフ松田刑事』
├『L 再起動』(チャンネルNECO DVD EDIT ver.)
├各種スポット集
├ナビゲートDVD「L WorLd of change the WorLd」の全隠し映像集
├デスノート検定・全解答
├デスノートDVD・隠し映像在り処・全解説(静止画)
封入特典
├「L change the WorLd」 劇場用ポスタービジュアルを使用した大型カードセット(計3枚)
├オールカラー・ブックレット(24ページ)

 

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(日本語)

映像特典

├劇場用予告編集