【作品#0753】女王陛下の007(1969) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

女王陛下の007(原題:On Her Majesty's Secret Service)

【概要】

1969年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は142分

【あらすじ】

ジェームズ・ボンドは宿敵ブロフェルドを捉える作戦の最中に出会ったテレサに恋をする。

【スタッフ】

監督はピーター・ハント
音楽はジョン・バリー
撮影はマイケル・リード

【キャスト】

ジョージ・レーゼンビー(ジェームズ・ボンド)
ダイアナ・リグ(テレサ)
テリー・サヴァラス(ブロフェルド)

【感想】

ショーン・コネリーが初代ジェームズ・ボンドを降板したことで、オーストラリア出身のジョージ・レーゼンビーが2代目ジェームズ・ボンドを演じたシリーズ6作目。当時は売り上げも振るわず、ジョージ・レーゼンビーも本作限りでシリーズを降板したため評価されていなかったが、後年になって一部に再評価する声もある。

アクションシーンの演出は明らかに以前のボンド映画とは異なっている。細かい編集でスピード感を演出しており、今までの作品のような鈍重さは感じられない。ただ、ただひたすらに殴り合うという部分はほとんど変わっておらず進化したとは決して思わない。

本作はかなり多くの場面で音楽が流れているのだが、特にルイ・アームストロングが歌う主題歌「愛はすべてを超えて(原題:We Have All the Time in the World)」のインストが何度も何度も流れる。ボンドとテレサの場面に流れるのならまだ分かるが、ボンドとテレサの父ドラコの場面ですら流れてくる。割りと序盤から音楽の演出はクドいなと感じていたが、映画全体を見渡しても同様のことが言える。音楽を使う場面と使わない場面のメリハリが欲しかったところ。

ボンドがアルプスの山荘に構えられた研究所に行く中盤になると、物語は一向に進まずただただ退屈で、ヒロインも全く登場することがない。この内容で142分はちょっと長いかな。ちなみに、ボンドはキルトを着る場面があるのだが、初代ボンドを演じたショーン・コネリーはスコットランド人であり、本作でボンドを演じたジョージ・レーゼンビーはオーストラリア出身の俳優である。

ボンドは正体がバレて監禁されるのだがあっさり抜け出すことができる(なぜ逃げ道のある場所に監禁する!?)。そこからようやくアクションシーンが続いていく。ただ終盤にかけて、テレサがどこにいるのか分からないのにヘリコプターから銃を何発も撃ち込む場面がある。これでテレサが被弾しようものなら何のためにボンドは動いたのかという話である。ちなみに、これは「コマンドー(1985)」のラストでシュワちゃんが娘の居場所を知らないのに建物を爆破しまくるところを思い出す。

ボンドとブロフェルドの一騎打ちはボブスレーアクションで展開する。ブロフェルドが木の枝に引っ掛かったところでアクションシーンは終結し、ボンドとテレサの結婚式の場面に移行する。ボンドとテレサが車で走っていると追いかけてきたブロフェルドと手下のイルマが彼らの車に銃弾を浴びせる。ボンドは無傷であったがテレサはどうやら死んでしまったらしい。車外に出ていたボンドが彼らの銃撃を受けて車内に乗り込む際にテレサの無事を確認することなく真っ先に追いかけようとしている。まずは無事かどうかを確認するものじゃないかね。

通りかかった警官も車が被弾しているのに「大丈夫か」程度の問いかけしかなく、ボンドがテレサを抱きしめている途中で映画は終わる。ボンドが結婚した末にテレサを亡くすのは原作通りらしいが、2代目ジェームズ・ボンドの初作品にしてなかなか挑戦的だとは思う。ただ、こんな結末になる雰囲気など一切用意していなかったのに急にこんな展開になるとは当時の(原作を読んでいない)観客も戸惑ったんじゃないだろうか。上述のように音楽で彼らの関係を盛り上げようという意図はあったと思うがそれくらいだ。観客もテレサのことをボンドが結婚するほど惚れこんだ女性だと思っただろうか。以前のボンド映画に登場するボンドガールと扱いは大して変わっていない。それでもボンドが結婚までしようと思ったのかが理解できない。

結局この結末になったのもシリーズ通しての悪役ブロフェルドを殺さない、あるいは殺せない物語を用意し続けてきたからだろう。毎作品のようにブロフェルドが悪役なのに最終的に彼は逃げてしまう。まるでアンパンマンとバイキンマンの関係のようだ。アンパンマンは最後にバイキンマンをやっつけるが殺すことはない。アンパンマンがとどめを刺さずにいるとバイキンマンがバタコさんを本当に殺してしまった。そんな話が今回の映画だろう。ブロフェルドにとどめを刺さずに次回の作品にも悪役の座を用意するのならこんな結末は用意してはダメだ。凄腕の英国諜報員がブロフェルドもイルマもやっつけることなく呑気に結婚式なんかしている場合ではない。

この当時の比較的コミカル路線を考えると、たとえ当時がニューシネマの流行があったとしてもこの結末の物語はどう考えても無理がある。

【音声解説】

参加者
├ピーター・ハント(監督)
├マイケル・リード(撮影)
├ジョン・バリー(作曲)
├ジョン・グレン(編集)
├ピーター・ラモント(美術)
├アレック・ミルズ(カメラ・オペレーター)
├フレッド・ウィルミントン(車の調達)
├ロイス・マクスウェル(マネーペニー役)
├アンジェラ・スクーラー(ルビー役)
├ヴィク・アームストロング(スキーシーンのジョージ・レーゼンビーのスタントダブル)
├サイモン・レイヴン(脚本)
├ジョン・ステアズ(特殊効果)
├ジョージ・ベイカー(ヒラリー・ブレイ卿役)
├ロビン・ブラウン
├ウィリー・ボグナー(スキーシーンの撮影)
├スタンレー・ソーペル
├シド・ケイン
├クリフ・カリー(マットペイント)
├リチャード・グレイドン(ジョージ・レーゼンビーのスタントダブル)
├ジョージ・リーチ(スタント)
├ジョン・コーク(フレミング財団/案内人)

フレミング財団のジョン・コークが案内人となって、計20人の関係者が語る音源を紹介していく音声解説。各スタッフやキャストのインタビュー音源から様々な情報を得ることができるが、やはり案内人のジョン・コークがサラッと出す情報が濃厚なので彼ひとりに喋らせた方が良かったんじゃないかとさえ思える。

 

【関連作品】

 

007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー

サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】
 

<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├ピーター・ハント(監督)、製作スタッフ、キャストによる音声解説
映像特典(Disc2)
├MI6:機密書類保管庫:
    ├『女王陛下の007』のキャスティング
    ├プレスへのお披露目
    ├ジョージ・レーゼンビーのインタビュー集
    ├氷上のカー・チェイス(1969年オリジナル版)
    ├アルプスでの撮影(1969年オリジナル版)
    ├クレジット
├秘密任務:
    ├007の履歴書
    ├ボンド・ガール
    ├味方
    ├敵
    ├アクション・マニュアル
    ├Qの秘密兵器
    ├魅力的なロケ地
├任務遂行レポート:
    ├メイキング・オブ・『女王陛下の007』
    ├ドキュメンタリー:“Qの研究室 - 007の秘密兵器”
    ├パブリシティ用映像
├007プロパガンダ:
    ├オリジナル劇場予告編(1種)
    ├TVスポット集(5種)
    ├ラジオ・スポット集(7種)
├イメージ・データベース:1969年『女王陛下の007』公開当時のフォト・ギャラリー

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

【音楽関連】

 

<CD(サウンドトラック)>

 

収録内容

├11曲/38分

 

【書籍関連】

 

<女王陛下の007>

 

形式

├電子

├紙

出版社

├早川書房

著者

├イアン・フレミング

翻訳者

├井上 一夫

長さ

├342ページ