【作品#0775】007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(原題:The World Is Not Enough)

【概要】

1999年のイギリス/アメリカ/スペイン合作映画
上映時間は128分

【あらすじ】

ジェームズ・ボンドは石油王ロバート・キングのお金を回収したものの、仕掛けられた罠によってロバート・キングは爆死してしまう。その犯人は体内に残った銃弾の影響で痛みを感じない体になったテロリストのレナードであった。キングの娘であるエレクトラの命が危ないとしてジェームズ・ボンドはアゼルバイジャンへ向かう。

【スタッフ】

監督はマイケル・アプテッド
音楽はデヴィッド・アーノルド
撮影はエイドリアン・ビドル

【キャスト】

ピアース・ブロスナン(ジェームズ・ボンド)
ソフィー・マルソー(エレクトラ)
デニス・リチャーズ(クリスマス)
ロバート・カーライル(レナード)
ジュディ・デンチ(M)
ロビー・コルトレーン(ズコフスキー)

【感想】

シリーズ19作目となる本作は、過去最高となる1億3,500万ドルの製作費がつぎ込まれ、全世界で3億6千万ドルのヒットを記録した。メカ開発のQを演じたデズモンド・リューウェリンはシリーズ17作に出演し、次回作の出演にも意欲を示していたが、公開から6週間後に交通事故で亡くなり本作が遺作となった。

冒頭のボートチェイスシーンでボートが水中に潜る際にボンドがネクタイを締め直しているが、ピアース・ブロスナンによるアイデアである。こういう観客を「ニヤっと」させる演出は素晴らしい。これぞボンド映画を見ているという感覚になるし、前作「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」で感じたシリーズならではの「楽しさ」が表現されている場面だと思う。

ただ、この場面でボンドが負う女殺し屋はそもそもこの場にいる必要があったと思えない。爆破したMI6本部を監視できる場所で待機し、爆破により壁が破壊されてボンドが外を見るとその女殺し屋が銃撃してくる。爆破できたらそれで良かったはずなのでわざわざあの場にいる必要性を感じないし、顔を出した誰かを銃で殺そうとする必要もない。取ってつけたようなアクションシーンという印象は拭えないのが残念なところだ。

それなりに「楽しさ」という要素を押し出した前作「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」に比べると、本作は「007/ゴールデン・アイ(1995)」に並ぶ、もしくはそれ以上にハードボイルドな作品という印象である。何と言ってもメインのボンドガールをボンドが射殺するのだから。

その射殺されたボンドガールを演じたのはソフィー・マルソーである。これまでのシリーズでボンドガールを演じる人はモデルやまだ世界的には知られていない女優であることが多かった。前作のボンドガールを演じたミシェル・ヨーは香港でこそ大スターだったが世界的な知名度はそこまでではなかった。そんな中で起用されたソフィー・マルソーは起用された当時の知名度では本作時点で最も高かった女優だろう。そして、以降の作品では著名な俳優の起用が当たり前になっていく。

そして、このソフィー・マルソー演じるエレクトラの存在こそによって、ロバート・カーライル演じる悪役レナードや、デニス・リチャーズ演じるもうひとりのボンドガールのクリスマスが割を食う形になったのだろう。もういっそのこと悪役はソフィー・マルソー演じるエレクトラに集約しても良かったのではないかと思う。

もう一方のボンドガールであるクリスマスを演じたのはデニス・リチャーズである。彼女の演技は酷評され、ラジー賞で最低助演女優賞を受賞してしまった。ソフィー・マルソー演じるエレクトラに比べるとデニス・リチャーズ演じるエレクトラは「美味しい」役柄ではないのは確かである。また、男には興味がないという設定の割に、砂漠にある研究所で体のラインがまるわかりのタンクトップと短パン姿で登場する。そんな彼女も最終的にはボンドの手に落ちることになる。男には興味がないという設定は必要なかったんじゃないだろうか。その設定を付け加えたうえでボンドと体の関係を持つことになると、女性を見下したような印象は受けなくもない。

ボンドガールと悪役をエレクトラに集約して、ボンドとエレクトラの関係をメインにじっくり描けば多少ハードボイルドな作風でも映画として機能したのではないかと思う。また、Mが誘拐される件も新鮮ではあるがちょっと違うかな。あんなにデカい発信機を持っていたのにボディチェックもされていなかったのかよ。

アクション映画としても冒頭のシークエンス以上のものを以降の場面で見られなかったのは残念である。痛みを感じなくなったレナードというキャラクターを生かしたアクションシーンも少ないし、あの狭い原子炉室でのアクションには限界があったように思う。

割と「楽しい」映画だった前作から雰囲気を変えて臨んだ本作は、新しい試みが成功している箇所もあるが、完全に失敗に終わった箇所もある。脚本や監督次第ではもっと良くなったとは思ってしまう。

 

【関連作品】
 

007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー

サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー



取り上げた作品の一覧はこちら
 

 


【配信関連】


<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/ロシア語/スペイン語)

 

<Amazon Prime Video>
 

言語
├日本語吹き替え


【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語/ロシア語/スペイン語)
├日本語吹き替え
音声特典
├マイケル・アプテッド(監督)による音声解説
├ピーター・ラモント(プロダクション・デザイン)、デヴィッド・アーノルド(音楽)、ヴィク・アームストロング(スタント・コーディネーター/第二班監督)による音声解説
映像特典(Disc2)
├MI6:機密書類保管庫:
    ├未公開シーン集&別バージョン集(マイケル・アプテッド監督のイントロ付き)
    ├ボート・チェイス
    ├ロケ舞台裏-テムズ川
    ├予告編が出来るまで
    ├香港記者会見
    ├クレジット
├秘密任務:
    ├007の履歴書
    ├ボンド・ガール
    ├味方
    ├敵
    ├アクション・マニュアル
    ├Qの秘密兵器
    ├魅力的なロケ地
├任務遂行レポート:
    ├メイキング・オブ・『ワールド・イズ・ノット・イナフ』
    ├ボンド・カクテル
    ├“Q”に捧ぐ
    ├ミュージック・ビデオ“ワールド・イズ・ノット・イナフ”byガービッジ
    ├シークレット・アクセス・オブ・007
├007プロパガンダ:オリジナル劇場予告編
├イメージ・データベース:1999年『ワールド・イズ・ノット・イナフ』公開当時のフォト・ギャラリー

 

<BD>

収録内容
├上記DVDと同様


【グッズ関連】

<ポスター>

サイズ
├68.5cm×101.5cm