【作品#0759】ウォール街(1987) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ウォール街(原題:Wall Street)

【概要】

1987年のアメリカ映画
上映時間は126分

【あらすじ】

若手証券マンのバドは大物になることを夢見て投資家ゴードン・ゲッコーのオフィスに突撃訪問する。良い情報を持っていないかと聞かれたバドは父親の勤める航空会社の内部情報をゴードンに話したことで気に入られ…。

【スタッフ】

監督はオリヴァー・ストーン
音楽はスチュワート・コープランド
撮影はロバート・リチャードソン

【キャスト】

マイケル・ダグラス(ゴードン・ゲッコー)
チャーリー・シーン(バド・フォックス)
ダリル・ハンナ(ダリアン・テイラー)
マーティン・シーン(カール・フォックス)
ジェームズ・カレン(リンチ)
ジョン・C・マッギンレー(マーヴィン)
ハル・ホルブルック(ルー・マンハイム)
テレンス・スタンプ(ラリー・ワイルドマン)

【感想】

マイケル・ダグラスがアカデミー賞で主演男優賞を獲得した。ちなみに、本作で親子を演じたチャーリー・シーンとマーティン・シーンは実の親子である。

何とかのし上がりたいバドは投資家ゴードンとの接触を何度も試みてようやく「5分間」のチャンスを得る。ゲッコーの期待に答えようとバドは情報提供を試みるがゲッコーから「大したことないやつ」と思われてしまう。そこでバドは父親が働く航空会社ブルースターの内部情報をリークする。これが契機となりバドはゴードンから認められ始めていくのだが、ゲッコーはバドのことを調べ上げたようで、バドがもってきた情報がバドの父親からの情報だったことを知られてしまう。それでもゲッコーはバドにチャンスを与えるのだが、この流れについては理解できる側面と理解できない側面がある。

もしゲッコーが本当に「こいつ」と思った奴がバドなんだとしたら、父親の勤務する会社の情報しかもってこなかったバドになぜここまでするのかという話である。本作のバドの描き方だと青二才で向こう見ずだが、ガッツと上昇志向のある若者という印象だ。そんな奴はあの「ウォール街」にはうじゃうじゃいたはずだ。それでもこのバドにしかない魅力というのは正直言って見えてこない。

また一方で、バドが父親の勤務する会社の情報を投資家に流したのは完全なる「インサイダー取引」であり、終盤にバドが証券取引法違反で逮捕されたようにバレていればこの時点でバドは逮捕されてウォール街から締め出されていた可能性もある。ゲッコーのためにバドが証券取引法違反をしてまで情報提供してくれた。そしてゲッコーはダリアンという美女を褒美として与えた。そして、バドはゲッコーのために違法行為をどんどん繰り返していく。こうやって若者を自分色に染めていたのだと考えると理解できなくもない。

最終的にバドはゲッコーに利用されていたことに気付くのだが、バドとゲッコーの関係は同じ証券取引法違反をする同士であり運命共同体でもある。「この業界にいるならこれくらいのことできるよね」という同調圧力にプライドが邪魔して受け入れるしかないのだ。そして、バドはゲッコーに認めてもらうべくその行為はどんどんエスカレートしていき、友人が証券取引委員会から連絡を受けても強気に出ている。

そんなバドの心を揺り動かすのがバドの父親カールの存在である。ちなみに、ゲッコーを演じたマイケル・ダグラスはバドの父親カールを演じたマーティン・シーンよりたった4歳年下というだけであり、事実上映画内にバドからすると父親(あるいはあってほしい父親的存在)が混在することになる。ゲッコーとカールの描き分けはあまりに極端すぎる気もするが、映画的にはやむなしか。カールのような父親なら子供のバドが正反対のゲッコーに惚れるのも仕方ない気もする。また、ゲッコーの側もバドを利用していたとはいえ、父親の勤務する航空会社ブルースターへの提案はかなり現実的にも見える。

どの業界でも、あるいは学校や友人関係においても「チクリ」行為は絶対に嫌がられる。ことさらハリウッド映画におけるチクリ行為はその他の犯罪行為を凌駕するものがあるように描写されることが多い。上述のように証券取引法違反をともに繰り返すゲッコーとバドは運命共同体になりつつある。そこへバドの父親という切っても切れない関係がボディブローのように効いてくる。最終的にバドはゲッコーを「チクる」ことにする。ゲッコーの行く末は映画内で描かれなかったが、自分のために付いて来た若者に「美女」という褒美まで与えたのに最終的に裏切られたわけだ。これほど屈辱的なことはない。ただ一方で当時のウォール街にはゲッコーのようなやつもうじゃうじゃいたはずだ。他の連中からすれば「ゲッコーは運が悪かったんだな」程度のものだったのだと感じる。

ゲッコーにどんな結末が待っていたかを用意しなかったことで、当時のウォール街で働くイケイケのレン中は当然想像したことだろう。また、バドが盗聴していた会話が決定打になっていたわけで、ウォール街の連中も「今目の前にいるやつが盗聴しているかも」と思うかもしれないし、頭の片隅にあるかもしれない。そうすれば、こんな連中のやっている汚い仕事を牽制できるかもしれない。そうなれば本作の作られた意義は大いにあるだろう。

ただ皮肉なことに本作のヒットを受けて証券会社には「ゲッコーのような投資家になりたい」若者が集まってしまったそうだ。上述のようなウォール街で働く連中を牽制するような内容であってもゲッコーのような投資家になりたいと思う若者がいること自体は不思議ではない。人間誰しも「金持ちになりたい」と思ったことはあるはずだ。そして、まるで何でも知っているような世界の支配者のごとくマイケル・ダグラスは魅力的だ。

グレーな部分が山ほどある世界を割りと単純化して、さらに勢力図を明確に描いたことがヒットに繋がったのだと思うが、それ故にそこまで深みのない作品になったとも言える。

【音声解説】

参加者
├オリヴァー・ストーン(監督)

監督のオリヴァー・ストーンによる単独の音声解説。バド役がチャーリー・シーンに決まった後にトム・クルーズが電話で出演を希望してきたが断らざるを得なかった話(後に「7月4日に生まれて(1989)」で実現)、ショーン・ヤングの配役に関する話、チャーリー・シーン起用に関する批判に対する反論など、本作に関する話を満遍なく語ってくれる。

【関連作品】


「ウォール街(1987)」…シリーズ1作目
ウォール・ストリート(2010)」…シリーズ2作目



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

言語
├オリジナル(英語)


【ソフト関連】

<DVD(特別編)>

言語
├オリジナル(英語)
音声特典
├オリヴァー・ストーン(監督)による音声解説
映像特典
├ドキュメンタリー
├オリジナル劇場予告編集


<BD>

言語
├オリジナル(英語)