【作品#0768】ダブル・インパクト(1991) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ダブル・インパクト(原題:Double Impact)

【概要】

1991年のアメリカ映画
上映時間は110分

【あらすじ】

香港で建築家夫婦が殺され、双子の弟のチャドは彼らの父親の親友フランクが逃がせてアメリカで生活していた。フランクが兄のアレックスを見つけたことでフランクはチャドを連れて香港へ向かう。

【スタッフ】

監督はシェルドン・レティック
音楽はアーサー・ケンペル
撮影はリチャード・H・クライン

【キャスト】

ジャン=クロード・ヴァン・ダム(アレックス/チャド)
ジェフリー・ルイス(フランク)
アロナ・ショウ(ダニエル)

【感想】

ジャン=クロード・ヴァン・ダムが一人二役をやりたいと望んで製作されたアクション映画。好戦的なアレックスと温厚なチャドという二人の兄弟だが、ジャン=クロード・ヴァン・ダム本人はプライベートではチャドに近いことを公言している。アクション映画を製作していると、双子の兄弟とかの設定で一人二役や何なら三役以上やりたくなるものなのだろうか。ジャッキー・チェンは「ツイン・ドラゴン(1992)」で、アーノルド・シュワルツェネッガーは「シックス・デイ(2000)」で、ジェット・リーは「ザ・ワン(2001)」でもやっている。何ならジャン=クロード・ヴァン・ダムは後に「マキシマム・リスク(1996)」で双子の兄弟役、「レプリカント(2001)」では自分と自分にそっくりのレプリカの一人二役、「ファイナル・レジェンド 呪われたソロモン(2001)」でも一人二役を演じている。

ジャン=クロード・ヴァン・ダムは演技の幅を広げたいという意図もあったようだが、それは同時に彼の演技の自信のなさ、バラエティのなさを表しているようにも思える。仮にジャン=クロード・ヴァン・ダムのファンであっても彼の演技面を期待している人はそう多くないだろう。ジャン=クロード・ヴァン・ダム自身も当時すでにアクション俳優としてある程度の地位を確立していた。ただ、彼は後にハリウッドへジョン・ウーを招いていることから本作はジョン・ウー向けのプロモーション映画とも捉えることはできる。

一人二役はジョン・ウー監督の代表作「男たちの挽歌(1986)」と「男たちの挽歌Ⅱ(1987)」でチョウ・ユンファが双子の兄弟を演じていたことと通じるし、本作のアクションにはジョン・ウーのトレードマークである二丁拳銃も登場し、スローモーションや大規模な爆発、主人公のアジトとなる場所には鳩がいるなど、その影響は感じられる。さらに本作の舞台が香港だし、ラストは「男たちの挽歌(1986)」のそれと同様に港で展開していたわけである。

ジョン・ウー監督のフォロワーは後にたくさん出てきたが、本作も割と露骨なフォロー作品と言えるだろう。ジョン・ウー監督もジャン=クロード・ヴァン・ダムにここまでしてもらったらハリウッドへの誘いを断れなかったのではないだろうか。

では本作が面白いかと言われると全くそんなことはない。ジャン=クロード・ヴァン・ダムの年齢にある程度合わせる形で映画が25年後から始まってしまうことに対する説明はない。アレックスとチャドという兄弟を多少描き分けているが、温厚なチャドも空手教室をやっているという設定なので好戦的なアレックス同様に格闘シーンは戦えるという設定だ。ただ、だとしても銃器の扱いまで問題ないというのは行き過ぎだ。

また、この手のアクション俳優が一人二役をこなす映画に付き物なのは「自分対自分」である。もちろん本作にも「ジャン=クロード・ヴァン・ダム対ジャン=クロード・ヴァン・ダム」の戦いはしっかり用意されている。それが行われるのは中盤。アレックスには香港でダニエルという彼女がいる。途中でチャドとダニエルが行動する場面になると、アレックスはチャドにダニエルを寝取られたと勘違いする場面がある。この場面ではチャドとダニエルのラブシーンがあるのだが、これはアレックスの妄想である。そのためだけに裸にさせられたダニエルを演じたアロナ・ショウは可哀そうだ。こんな場面は時間の無駄でしかなく、彼らの父親の親友だったフランクから諫められ、「戦う相手を間違っている」と指摘される。本作の中で正しいキャラクターに指摘させるのは最もなのだが、こんなところに「ジャン=クロード・ヴァン・ダム対ジャン=クロード・ヴァン・ダム」はいらない。せめて彼らが協力して敵をやっつける場面さえあればいいのだ。

じゃあ彼らが協力して敵をやっつける展開が用意されているのかというとそれもない。ラストは二手に分かれた敵を兄弟が二手に分かれてそれぞれやっつけるという形になっている。アレックスとチャド各々が分かれた敵をやっつける意図は分からなくもないが、せっかくジャン=クロード・ヴァン・ダムが一人二役で兄弟を演じ、さらには生き別れになった兄弟がその両親の敵を討つわけなのだから最後の最後は一緒に回し蹴りくらいしてくれよ。

というか生き別れになった兄弟なのだから離れ離れになったお互いがどういう人生を歩んできたのか、両親はどんな人だったのか、敵をやっつける上での覚悟などを描くべきだ。本作にヒロインなんて必要ない。中盤は完全に中だるみしており、この内容ならせめて90分くらいで完結させてほしい。



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【配信関連】

<Amazon Prime Video>

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├オリジナル(英語/フランス語/広東語)


【ソフト関連】

<DVD>

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映像特典
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