若竹千佐子さんのデビュー作&文藝賞受賞作&芥川賞受賞作(初出は2017年)。


主人公の桃子さんは70代。息子と娘は独り立ちし、夫にも先立たれ、孤独で楽しいひとり暮らしを満喫中。


と聞けば昨今はやりの、キラキラ老後ライフかと思ったらさにあらず。桃子さんってけっこうずぼら、部屋はちらかり、そして過去の悔恨を抱えて生きている。親の立場から、子どもを差別してしまうこと、子どもに人生を仮託しようとして子どもを押しつぶしてしまう弱さが、小説のなかでここまでキッパリと描かれたのを私ははじめて見たような気がする。これを読んだ親たちはどう思うのだろう。


それでも人生。おらおらでひとりいぐも。この決意が、泥の中から咲いた一輪の蓮の花のように、この小説をなんとも清々しいものにしています。


惜しむらくは、登場人物がほぼ桃子さんということ。頭のなかにいる、いろんな声。あんな桃子さん、こんな桃子さん。出身地の東北弁が、泥流のようにところどころに流れ込む。ここはおもしろいところだけど、そしてこれが老人のリアルといわれればそうかもしれないけど、でももうちょっと知人友人とかいないの?そういう人たちが出てきて話が広がればよかったな~と思う。





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