李琴峰さんの小説で、第165回芥川賞受賞作。個人的に応援してたので、とてもうれしい。

舞台は南の小さな島。そこでは〈ニホン語〉と〈女語〉、ふたつの言語が話されている。歴史を語り継ぐのが許されるのは「ノロ」だけで、そして「ノロ」になれるのは女だけ、という独自の文化を持つ。そこに外から流れ着いた、記憶をなくした少女、宇実。何も知らない宇実の(つまり読者と同じ)視点で、だんだんと島の歴史が明らかになっていく。

むりやりジャンル分けするなら、近未来ファンタジーってことになるんだろうか。だから李さんがこれまで書いてきた作品に出てくるような、ヒリヒリするような現実は薄めだけど、主人公が少年少女ってことで文章も読みやすいし、ちょっとだけ中国語と台湾語になじみがある者としては、何語が何語の影響を受けているのかを推測したり、似て非なる2つの言語のあいだを往来する人の頭の中を覗いているような楽しみもあった。

そして何より、主人公の子どもたちが未来のことを語るときの、なんつーか、キラキラした感じよ! 大人たちが詰まらせてきた何かに風穴を開けるような爽やかさがある。

李さんがこれまでテーマにしてきたセクシュアリティ・外国人・言語・恋愛・政治・歴史といった要素をすべて詰め込んだ、壮大な思考実験の羽ばたき。こんなふうにも表現できるんだなぁ。面白かった!


・『首里の馬 』高山羽根子

・『乳と卵』川上未映子

『推し、燃ゆ』 宇佐見りん

・『妊娠カレンダー』小川洋子

『共喰い』 田中慎弥


・・・・・・・・・・・・・・・


●メルマガはじめました!


主に新刊の連載と、購読者さんからのおたよりにお返事するコーナーなどあり〼。


ご購読はこちらからできます! 初月は無料なので、登録・解除はお気軽に~。

↓↓↓

大原扁理のやる気のないラジオ メルマガ版 (mag2.com)


メルマガタイトル:大原扁理のやる気のないラジオ メルマガ版
対応機器    :PC・携帯向け
表示形式    :テキスト・HTML形式
発行周期    :毎月 第2金曜日・第4金曜日
創刊日     :2021/4/9
登録料金    :550円/月(税込)


・・・・・・・・・・・・・・・・・