遠野遥さんの小説で、第163回芥川賞受賞作。
作家は顔で選ぶという、本読みの風上にもおけない私は、久々にスター性のある顔面の新人作家が出てきてわくわくしました。イケメン!
主人公の陽介は、母校の名門大学のラグビー部コーチをしながら、公務員試験に向けて勉強に励んでいる。筋トレと走り込みと自慰のルーティーンを自らに課し、筋骨隆々で、たぶん容色にも恵まれている。付き合う女にもとくに困らない。ふつうのハイスペ男子のハイスペな日常…。
なのですが。
な〜んか変なんですよ、この人が。
顔が綻ぶのを感じる→どうしてなのか考える→嬉しかったのだと理解した。
こういう、独特のMy公式みたいなものに、どんどん自分を当てはめていく。自分は、A=Bであるから、B=Cということなのだろう。以上です。
…楽しい?ねえそれほんとに楽しい!?
そして陽介は、「〜だ。なぜなら〜だ。」とか、「〜だから、〜だろう。」というMy公式を、他人にも犬にも当てはめまくる。その結果、公式によって自信満々に導き出した答えが、相手からしたらひたすら「そこじゃねー!」っていう(笑)。
で、この「そこじゃねー!」が行き着く先が、ある破局ってことになるんだけど、これ「破局」ですらないかも知れないよあんた。
だけど考えてみたら自分だって自分がそうだと認識してるものが、間違ってるかもしれないのにね。一点の曇りもなく信じられるなら、まあこの人はそれで幸福ってことになるのかな。全然幸福そうには思えないけど。
たぶん陽介も、20代で隠居してハッピー♪とか自己申告してる私をみて「彼は幸せではないだろう」って思うんでしょうね、笑。
面白いのかどうかわからなかったが、スラスラと読み終わってしまったので、面白かったということができるだろう。(←陽介風)
●芥川賞受賞作の本(隠居の本棚より)