私は故郷には帰りたくないのです。
人と違うことは許さないぞ~的な圧力とか、よくも悪くもほっといてくれない感じとか、閉じた人間関係のなかでテキトーに人の悪口言って日が暮れていく感じとか(笑)、すげー苦手…。
でも私がいつか人生にどん詰まったとき、私を最後に受け入れてくれるのはあのどん詰まりみたいな故郷かもしれない、と思わずにはいられない、そういう土地のぬうっとした存在感をこれでもかというほど感じる小説でした。怖。
べつに他人の目には映らないことだし、何にも変わっていないように見えるけれど、だれもの人生にもかならず訪れて、みんなそれを積み重ねて生きていく、奇跡とよぶには小さすぎるけどとても大事な瞬間を目撃するのが、小説の醍醐味と思う。
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●芥川賞受賞作の本(隠居の本棚より)