ほんとにこの著者は、人間がちゃんとやさしいんだろうなあと思った。


気がつかなかったふりをしようと思えば簡単にできるような日常の、自分や他人のささいなことにも、きちんと心を痛められる人っていうか。もうそれだけでささいな哀しいことも浮かばれるっていうか。それで、ちゃんと最後に面白がってくれるっていうか。私がその「ささいなものごと」だったら、この人に哀しまれて笑ってもらえたらもういいや、っていう。


ほんとに見たんだろうなあ、聞いたんだろうなあ、という感じがものすごくじんじんと伝わってくる。山田詠美さんが「11行に、きちんとコストがかかっている」と言っていたが、まさにそんな感じ。


主人公の徳永が、師匠と崇拝する神谷の一挙手一投足を、きちんとすくい取って打ち返して成仏させようとするいじましさに何遍もグッとくる。


あとこれは内緒ですが、ふたりの世界がたいへんゲイゲイしくて萌えましたので、この本は私の本棚におけるBL的コーナーの新顔として仲間入りを果たしたことを告白します。



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