柳美里さんの芥川賞受賞作。久しぶりに読み返した。

 
崩壊してしまった家族が、映画出演という降ってわいたような話に乗るんだけど、やっぱりウチって崩壊してるんだな、と再確認するだけに終わる。
 
血がつながってるというだけで、一度だって家族だったことなんかない人たちに、家族の再生なんかできるわけない、という現実。
 
あらすじはない、終わりもない、どこにも続かない人生を、それでもなんとか折り合いをつけてやっていくしかないんだという、主人公・素美の諦念が通奏低音のように流れていく。
 
家族が全員天才的に卑しくて(笑)、ときどき入り込む自然や花や生き物の描写だけが救いだった。
 
クライマックスで、素美は泥沼のような場所から抜け出せたように見える。このままどうか、逃げ切ってほしい。