本谷有希子さんの芥川賞受賞作、薄気味わる怖おもしろかった~。

主人公のサンちゃんという女と、その旦那の結婚生活。同じものを食べ、同じ空気を吸って、顔がだんだん似てきて、お互いの輪郭が崩れていき、、、という話。

この主人公のサンちゃんっていう女がたいへん恐ろしい。その恐ろしさを一言でいみじくも表したのは、ここだと思う。

「私は男たちに自分を食わせ続けてきたのだ」

男に怠惰という快感を与え続けて廃人にするタイプの、こんな女に狙われたら、命ないですよ。ぞっとする。

だけどサンちゃんが、わかりやすい性悪女かっていうと、まったくそうではなくて、至極フツーに見えて、だからこそタチが悪い。無意識に、だけど着実に、つきあった人を破滅に追い込んでいく。

はじめは、旦那も、サンちゃんを利用してやろうと思ってたのかもしれない。

これは、結婚生活というより、ただの共同生活、いやいやもっと正確にいえば、怠惰のための共犯生活を描いている小説だと思いました。

そして本当は旦那も、この怠惰な快感に身を任せながら、どこかでここから逃げなくては、と危機感を感じ、抵抗していたんじゃないだろうか。

旦那がクライマックスで、あるものになるんですが、あれは廃人に残された最後の意志なのかもしれません。