『推し、燃ゆ』

宇佐見りんさんの二作目で、第164回芥川賞受賞作。

主人公の高校生あかりは、他の子みたいにふつうに生きることが、気がつくといつもできていない。体は重く、もたつき、持て余す。名前は明かされないが、実は病院で診断名がつくくらいの、何かの障害であるらしい。

そんなあかりの推しは、男女混合アイドルグループ「まざま座」の真幸くん。彼のあらゆる発言を集め、解釈し、ブログに書き綴る。彼を推すことが、ままならない現実を生きるうえで、自分の背骨のようになり、姿勢を保つ手段になってくれる。それなのに、推しがファンを殴ったとかで炎上してしまい…。

背骨を失って、這いつくばるあかり。これがあたしの生きる姿勢だと。背骨を失っても生きていくしかないという切実さ。なんでこんなに切実になっちゃうんだろうっていう、自分とうまく共存できない苦しみ、私はあかりのように障害とは診断されなかったけど多分みんなそれぞれなにかの生きづらさはあって、その生きづらみに寄り添ってくれるような小説だった。

デビュー作にひきつづいてSNS上のあたらしいコミュニケーションを小説に翻訳するのがずば抜けてうまい。でも最後がなんか…宇佐見さんはもっと行ける方だと思う！このあとの飛躍がすごく楽しみ。