2018年発表の高橋弘希さんの小説で、第159回芥川賞受賞作。


主人公は中学3年生の歩。親の仕事の都合で津軽の田舎に引っ越した転勤族で、高校生になったらまた関東に戻る予定である。つかの間の青森生活、空気を読んでなんとな~くなじめたかのように見えた学校で、ひたひたと獲物を狙うヘビのように忍び寄る理不尽な暴力…。


たしかな観察眼と、濃密な描写と、いきいきとした津軽弁と、挟み込まれるエピソードがとても良い、のはわかる。だけど私はこの小説、残念ながら暴力のシーンが不快感しかなくて、あんまり人に薦められないと思った。べつに不快でもいいんだけど、その不快さは何のために?


だってこれじゃ、理不尽な暴力の被害者だったことがある人にはただの現実で、これをフィクションにする意味がどこにあるんだろう。フィクションにしかたどり着けない場所にたどり着いたようには、見えなかった。


でも、読み終わると、たぶん作者の高橋さんにも、この小説がたどり着く場所は最後まで知らされなかったんだろうな、とも思えて、もしそうだったら高橋さんが今後、この文章力をもってして、目的意識に目覚めて小説を書いたらどうなるんだろう、というのに興味はある。うーん、もう何作か読んでみようかなぁ…。


 

 




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