高瀬隼子さんの小説で、第167回芥川賞受賞作。

ムカつく女の描写が天下一品で、もう作者といっしょに「これムカつきますよね~!!」と言い合いたくなる(笑)。

…というのを、「食べる」に関するシーンとたくさんからめていて、食べるということについてくるいろんな現代のしんどさ、これもまた「あるある~」と思ってしまう。世の中はかくも、おいしい食べ物をおいしくなくさせるしかけにあふれている。

もうひとつのテーマは、強者と弱者、ってことでしょうか。弱者のケアも大事だけど、それをケアしてるほうのケアってスルーされがち…。というのと、私は介護の仕事をしているときに、弱者とされている人が強者にひっくり返ったり、その逆だったりが、いくつかの条件の積み重ねによっていとも簡単に起こる場面を目撃した。人はいつでも、弱者にも強者にもなるのだなあと思った。だからケアしてる人のケアを怠ってると、それがいつか自分に返ってきそうで怖いのですよね。

「わたしたちは助け合う能力をなくしていってると思うんですよね。昔、多分持っていたものを、手放していっている。その方が生きやすいから。成長として。誰かと食べるごはんより、一人で食べるごはんがおいしいのも、そのひとつで。力強く生きていくために、みんなで食べるごはんがおいしいって感じる能力は、必要でない気がして」
ここと、押尾さんの最後の退社のあいさつが、すごくよかった。

ムカつく女のムカつく瞬間をとらえる眼差しの、意地の悪~いところはしかし、小説家に限っては褒め言葉と思うので、高瀬さんにはもっとどんどん、ムカっとさせてくる人間を描いていってほしい。

 

 



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