『さすらいの女王』

大好きな中村うさぎさんの文春連載シリーズ。「ショッピングの女王」だったのが、今回から「さすらいの女王」にリニューアル。

た、たしかにさすらってる、自意識が。前作までは、「今は買い物依存症！」「今はホスト依存症！」「今は整形依存症！」といったふうに、自意識の矛先が決まってたんだけど、今回はさすらってる！

といってもまず豊胸手術という、なかなかのトピックから始まるんだけど、豊胸含め整形はただの「自己確認」、「『胸の大きいあたし』を『あたし』が楽しむための整形」とサッパリしたもの。ここなんですよね～、他人からはむしろ不自然で気持ち悪く見えても、整形に突っ走る人の心理って。しかしそれだけではないのが依存の問題を複雑にしているところ。

「自己確認」と、もうひとつの要素は、「ナルシシズムの欲求」と中村さんはいう。「他者の視線を満たすことだけを欲求する空っぽの自己」がいると。え、そのふたつの行動が同じ結果になってるうちはいいけど、だんだん乖離してきたら、自己確認はできても他者からの承認は満たされない、かといって自己確認作業をやめても他者からの承認はやっぱり満たされないっていう、どこまでも続く無間地獄のはじまり…。

でも、別のところで中村さんはいうんです。「我々の人生はフロイトのいう『父殺し』でも『母殺し』でもなく、『自分殺し』から始まるのではないか」。ということは、この本で中村さんは、自分殺害予告（自意識の話ですよ）をしているってことでは。ますます目が離せない。

ちなみに今回の本、「今週の浪費をハイテンションに報告」みたいな感じじゃなくて、若干内省的。なぜかというと軽躁期が終わって軽鬱期だったから、らしい。おお、ある意味貴重な時期。

中村さんのエッセイは、全部読んだら、きっと壮大な自意識の荒野を彷徨するような作品群になっているのでしょう。めっちゃ楽しみ！だから全部読んでいくぞー。